2000年ごろ、アトピー性皮膚炎の痒み抑制肌着を和歌山の業者と共同で開発したことがあります。製品は立派でしたが、産官学の体制が整っていなかったので、最終段階で失敗しました。いい経験になりました。
アトピー性皮膚炎患者にγ-リノレン酸の有用性が数多く報告されていました。γ-リノレン酸は月見草油、ボラージ油、大麻油、ブラックカラント油などに多く含まれていいます。英国等ではγ-リノレン酸を含有する植物油である月見草油が“Epogam”の商標でアトピー性皮膚炎適用の医薬品として認可されているそうでした。で、γ-リノレン酸含有外用剤もアトピー性皮膚炎の症状を緩和することが報告されていました。そこで、γ-リノレン酸を加工した肌着を作製し、小児アトピー性皮膚炎患者に着用してもらい、その有効性を調べたのです。
特殊な加工を施して、洗濯にも耐えるように設計していただいたのです。
臨床治験は良い結果で、業界誌に紹介されたりして、
パッケージもできました。でも、値段がお手頃でなかったため、うやむやになりました。当時としては企画製品化発売と時代に先行しすぎていたため、産官学における知財の扱いについても大学と業者でゴタゴタしました。いささか、残念な思い出です。
金原彰子、古川福実:皮膚科における衣料 肌着への対応、MB Derm 74:46-49、2003
古川福実:アトピー性皮膚炎の痒みに対する肌着の役割、日本衣服学会誌、46:4-6、2003
Shoko Kanehara, Toshio Ohtani, Koji Uede, Fukumi Furukawa:Clinical effects of undershirts coated with borage oil on children with atopic dermatitis: A double‐blind, placebo‐controlled clinical trial、The Journal of Dermatology 34:811-815,2007