後夜祭・2 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















「はい、そこまで」

「はぁっ…ありがとうございましたっ」

「君のカラーがしっかりと伝わってくるパフォーマンスだね」

「ありがとうございますっ」

「でも技のレパートリーが少ない、完成度が低い、安定感が無い、筋肉の質はいいけど全体的に足りてない」

「はいっ」

「気になった点は追々改善していくとして、今日はどうしたの?忘れ物でもした?」

「え?忘れ物…してないと思います」

「しなやかさは君の強みで魅力でもあるんだけど、表情がちょっとね」

「顔の、ですか?」

「すごく大切な物を忘れてきた!どうしよー!って顔に見える、それが気になってパフォーマンス全体を見る気になれない、何か思い当たることない?」

「…あ、あります」

「うん、自覚してるならいいや、来週からレッスンに参加してください」

「はいっ よろしくお願いいたしますっ」





次に逃げたのは家族からだった

気を使って避けていた数多ある恋人達のイベントを当たり前のように家で過ごすうちに、とても純粋に「彼女いないの?」と聞かれた

今かもしれないと思った

そーゆーアレはこの先も消えないのだとしたら、親には言っておかなければならない

震えながら、告げる

最大限の勇気は「なにバカなこと言ってんの」で、無かったことにされた



次第に家族という存在から距離を置いた

だって、置かざるを得ない

うっかりカミングアウトなんかしてみろ、馬鹿なことなんだ、馬鹿な息子なんだ、がっかりどころの話じゃない



卒業と同時に家を出る


ここではないどこかなんてない

逃げた先に桃源郷なんてない

分かっていても、ここには居られなかった





「そこでキープ、キープの意味が分からないのかな?そこで止まらないと駄目だよ」

「うっ…はいっ」

「腕の筋肉の意識、筋肉は一つの塊じゃない、一つずつ意識して、足りない、キープ忘れてる」

「はっ…はいっ」

「そこでしっかり支える、違う、足に無駄な力が入ってる、筋肉の意識、キープ」

「は…うぅっ」

「はい、降りて」

「はぁっ はぁっ」

「どんどん悪くなっていくね」

「…すみません」

「今日は集中力が無い、何か気になることでもあるの?」

「あの…実は、初日に伝えなければならなかったことがあって…」

「なに?」

「…俺、ゲイなんです」

「うん」

「そ、それで、不快な思いをさせてしまったら…」

「私は異性愛者です」

「あ、はい…え?」

「その反応と同じだと思うんだけど、同性愛者であることがパフォーマンスに関係ある?筋力が弱いことの言い訳がしたいの?」

「…いいえ!」

「続ける?」

「はいっ」





人から、場所から、全てから数えきれないくらい逃げるなかで見た景色にステージがあった

多分、イベント会場の設営の日雇いをしていた時

そこで誰かが飛んでいた

どんな感情なのか自分でも分からない

とにかく泣けた

すぐに調べて知る

ポールダンスというジャンル

どうしようもなく惹かれて、夜な夜な公園でチャレンジする



地から離れれば、地に足さえ着いていなければ、いつか、どこかへ、飛べる

そんな夢を描きながら



一度も人前で披露する機会がなかったのに、その日の寝床を探している時に偶然見掛けた求人に飛び込んだ

契約前に、自己流であること、保証人も住所もないことを正直に告げたら「そしたら専属になってここに住めば?」と、仰天の返事を貰った

もちろんそれを断る理由など無い

数え切れないくらい逃げた先が「トーゲンキョー」だなんて、どんな冗談だろうと思った

















つづく