※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
冷たい北風が吹く季節
葉と種を落とした木々は、越冬の準備を終えてその身を閉じた
小さな生き物達も身を小さくして、寒さを耐え凌ぐ
しかし人間は、固く閉じるだけでは…
「……ふ~ん」
「…翔ちゃん?どうしたの?」
「ごめん、ちょっと休憩」
「えっ?!なんで??もしかして…今日の俺、あんまり良くない?」
「違う、雅はいつでも最高に良いよ」
「翔ちゃんもいつも最高だよっ
…て、あれ?じゃあなんで休憩?」
「和が来る」
「へ?」
コンコン
見計らったようにノックされたドア
『…翔ちゃん、起きてる?』
響きを抑えた声
「起きてるよ、ちょっと待って
雅、服着て」
「う、うんっ」
ベッドの下に落ちてる服を拾って素早く身に付けた
雅と過ごしていた夜更けに隣の部屋のドアが開く音がした
寝酒か、トイレか?と思ったら
部屋から出てきた足音は階下へ降りることなくウロウロし始める
歩幅の狭さと音の軽さ、そして刻むリズムからしてそれは和のもので
自室に帰らず深呼吸してる気配があったから、ここに来るかもと思って愛を伝える行為を中断したら、見事正解
俺ってすごくね?
「服着ましたっ」
「オーケー」
「和、お待たせ」
ドアを開けたらサイズの合わないパーカーを着た素足の和が立っていた
「こんな時間にごめ……
ほんとにごめん、また今度にする、おやすみっ」
服はちゃんと着てたけど、不自然に乱れたベッとドに少しだけ甘いオーラを放っていた雅を見て一瞬で察したらしい
見てないよって顔で帰ろうとした
「いいから、さっさと入れ」
「でもっ…わぁっ」
寒い廊下に立ってられると見てるだけでこっちも寒い
もじもじしてる和の後ろ襟を掴んで、部屋の中へ引っ張った
「え~?智兄ちゃんまた泣いちゃったの?」
ベッドの真ん中に座らせた素足の和に毛布を巻いて、雅と俺で挟む
「わざわざお伺いしたんだっけ?」
「ベッドに入る前にちゃんと一緒に寝ようって言った、無視されたけど」
「それは無視じゃなくて固まっちゃったんじゃない?智兄ちゃん繊細だから」
「どーせ俺は繊細さの欠片もねーよ」
良く言えば繊細、悪く言えば不器用
繊細同士も不器用同士も相性悪そうだな…
「で?和はどうしたの?」
「嫌だって言われなかったから隣に並んで寝た」
「よかったじゃん、問題無いじゃん?」
「5分も経たないうちに智兄が隣でシクシク泣きだしたのに本当に問題無いと思う?!」
「あらら、それは問題だ」
「だから最初からそう言ってんだろ!」
「ごめ~んっ」
今夜ここに雅が居てくれてよかった
和とは親友のように仲がいいから、思ったままのことを言葉に出して言い合える
暗くなりすぎずに済むから助かるよ
「理由は聞いた?」
「それは…聞いてない」
「なぜ?」
「…怖かったから」
「なにが」
「智兄がまた…出ていくとか言い出すかもって…そうなったら嫌だから」
その不安や怖さは俺にも理解出来る
弟の雅に想いを伝える時、人生で一番怖かったからね
つづく