※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
「いい映画だったなぁ」
心地好い余韻に浸ってエンドロールを眺めていると、それは唐突に流れてきた
-汚れからの挑戦状-
「…はぁ?!」
-マトリョーシカ風実験で心の汚れをどこまで落とせるか?-
「マトリョーシカ風実験で…ふう?!」
驚きを隠せなくて、静かな映画館で思わず声が出てしまったけど
これを貰ってしまっては仕方がない
ニノが、内緒で受けて立つ!
「これかぁ」
実験室に届いていたのは、背丈ほどのものから手乗りサイズまでの6体で構成されるマトリョーシカ
「汚れを…つけて…よいしょっ」
マトリョーシカと一緒に送られてきた液体を、それぞれの個体につけていく
ボトルに入ったオレンジ色に光るこれは、通称『ケガレ』
心の汚れを具現化させたもの
どこかの山奥で秘密利に研究が重ねられているらしく、こうして手元に届く度にその純度が増しているようだった
「あ~あ、お前たちも随分と汚れちまったなぁ」
衣服の汚れと共に、心まで穢れてしまった6体のマトリョーシカ
人形と言えども、これだけ汚されてしまっては表情も雲ってみえる
「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ、オオノ君
私に任せなさい♪」
オオノ君とは、もちろんマトリョーシカのことだ
意図ある挑戦状との戦いは単純に面白いけど、愛着っていうのかな
物といえども大切に扱いたいから、毎回こうして名前を付けることにしている
今回は「オオノ君」と命名
好きな人の名前をこんな所で使うのは我ながらどうかと思うけど、今回は一人で行う内緒の実験だし
一緒に頑張ろうね
オオノ君♡
手乗りオオノ君から順に隣のオオノ君の中へ入れて
最後に背丈ほどあるオオノ君の上下を合体させて準備オッケー
「さてと~」
実験室の中央に置かれた巨大洗濯機
そこへ、ここで開発した洗浄剤を入れる
青く光るこの液体は、心の汚れを落とす効果がある
もちろん通常の汚れもナノレベルから落としますよ~
ウィーン
天井に設置してあるクレーンを操作して、オオノ君を吊り上げた
慎重に位置確認をしながら移動して、静かに降ろしていくと
空気がぶくぶくと音をさせて、大量に水面へ浮かんでくる
肩まで沈めたところで「スイッチオン♪」
透明な巨大洗濯機の中で、汚れてしまったオオノ君が回りだした
「なんちゅう絵面だよこれ…」
くるくる回るオオノ君
水流が変わると、今度は反対方向へくるくるくるくる
すすぎは一回
時短・節水は基本中の基本ですからね
ピーピーピー
洗濯終了の合図
ウィーン
クレーンを操作して吊り上げると、ジャージャーと大量の水が滴り落ちた
足先から吹き出るその様はまるで
「ロケットみたいになってるよ?なんか」
しっかり汚れが落ちて心が軽くなっているとしたら、このまま自由に空へ飛ばしてやりたいね
ここからは真剣勝負
果たして『ケガレ』に打ち勝つことが出来たのか
1体目のオオノ君は、見てすぐ分かる
汚れは完璧に落ちている
「上がってきたよ~」
腰の上から分解された上体を吊ると、中に居る一回り小さいオオノ君が見えた
「あっ」
よし、この子にも汚れ無し
「あ!」
「おぉ!」
「はぁっ!」
「落ちてる…!」
6体のオオノ君は、汚れも穢れも落とされて、見事に真っ白になっていた
繊維の一本一本から徹底クレンジングすると共に
神経一本一本から徹底クレンジング
ふっふっふっ
今回も俺の勝ちのようだなっ
同じような挑戦状を受け取るのはこれで何回目だろうか
この世から心の汚れが無くなることを怖れてる輩から、時も場も選ばずに送られてくる
俺は俺で、日々研究を重ねて、新たな洗浄剤を作り出す
汚れること自体が悪いことだとは思わない
時にはそうなったっていい
だからこそバランスを保つために、ゼロに戻すきっかけを提供し続けたい
さて、次はどんな挑戦状が来るのかな?
どんな挑戦状にも負けないけどねっ
でもその前に…
「大野さんに会いに行こっ♡」
終わり
お粗末様でしたm(_ _)m