※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
ここには太陽らしきものと、月らしきものがあって
それが空を交互に通過するから、昼と夜は一応ある
「風も、ある」
黄金色の草は時折ふわりと揺れている
けど、この形態ってゆーか、魂的な?この状態では、お腹は空かないし、眠くもならない
だから、ただひたすらに
暇だ
昼と夜を数えて、一年を過ぎる頃になると
それを把握することに意味が無い気がして止めた
ここにも果てがあるのかと思って、歩き続けたこともあったけど
黄金色の草原はどこまでも続いている
穏やかで静かな場所
ある時、ここを人が通過したことがあった
「こんにちは~」
暇を持て余していたから、なにか面白いことになるかと思って声を掛ける
「なんでここへ来たんですか?
これからどこへ行くんですか?
ねぇねぇ、ねぇってば!」
だけど、見えないのか、聞こえないのか
俺の前を素通りして、草原の先へ消えていった
ポツンと一人
昼と夜を交互に過ごす
「…ひ…ぃ……
…ま…ぁ……
…だ…ぁ……」
それから十数年が過ぎたと思われる頃
「秀一!」
この草原に来てから、初めて人の声を聞いた
「お前もここに居たのかぁ!」
なぜかは分からないけど、その声は懐かしい気がした
どこかで会ったことがあるのかな?
「元気だったかぁ~」
「わっわっ」
唐突に近付いてきたと思ったら、頭をくしゃくしゃっと撫でられた
ここに来たばかりだったら払い除けていたと思う
だけどもうずっと一人だったから、優しい手の温もりが心地良くて
くしゃくしゃになる髪を放置した
「…あのさ、あんた誰?
会ったことある?俺のこと知ってるの?」
「知ってるもなにも…あいつらが身を削ってこれでもかって魂込めるからさ
思わずこっちに来ちゃうんだよな
ごめんなぁ」
「あいつら…?」
怖そうなおじさんなのに、全然怖くない
「秀一は、これからどうすんだ?」
「知らない」
「そうか」
「おじさんはどこへ行くの?」
「この先のどこかだろうけど、その前にここで学びたいことがある
ここは興味深い場所だよ
吸収出来るものは吸収しないと勿体無いだろう?」
なぜかワクワクしてる怖そうだけど優しいおじさん
「俺も一緒に言っていい?」
「それは俺が決めることじゃない」
「いつまでここに居なきゃいけないの?」
「さぁ、それも俺には分からないけど…本人が来たら一緒に行けるかもしれないな」
「…本人?」
「会えばすぐ分かるさ
すっごくいい奴だぞ!お前らはいい友達になれるよ」
また頭をくしゃくしゃっと撫でられた
「秀一」
「なに?」
「ありがとう」
「なんであんたにそんなこと…」
「あいつに会ったら、また一緒に仕事しようなって、伝えてくれ」
誰かへの伝言を残して、おじさんは草原の先へ消えていった
つづく