※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
「智くん!急いで!」
「ん?」
「タクシー停めてあるから!早く!」
「あ~、はいはいっ」
そうだった、お得意様への挨拶回りの途中だった
「いきなり店に飛び込んだと思ったらなにのんびり指輪なんか選んでんですか!時間ギリなのに!」
「んふふっ いい買い物しちゃったぁ~」
「…はぁ…そうですか、よかったですね」
「うんっ」
欲しい物は無いっていつも言われちゃうけど、これは喜んでくれる気がする!
「しかし部長ともなるとさすがの太っ腹ですねぇ
あれを即決で買うなんてなかなか出来ないですよ」
「そういえば、いくらだったんだろ?」
「はぁ?!怖っ!マジ怖っ!」
「だってこういうのって気持ちでしょ?
これだー!っていうのがあったら買いたくなるでしょ?
翔くんだって彼女さんが喜んでくれたら値段関係なく嬉しいでしょ?」
「…それはそうですけど、値段くらいは確認しますよ」
「そうなの?」
「一応聞きますけど、カズですか?」
「そう!餞別にブーメラン貰ったから!」
「……はい?」
ぽっかーんとする翔くんと一緒に、最後の挨拶回りを無事に終えた
お店から連絡が来たのは、向こうへ行く二日前
「言ってもいいのかなぁ…」
これしかない!と思って買ったけど
リングともなると一般的には特別な意味を持つ場合が多い
さらにこの我が儘を言おうものならニノは…
決心が揺らいでいた
「失礼します、準備出来ました?
皆、集まってますよ」
「…うん、すぐ行く」
「ちょっと待て!まさかそれ…まだ渡してないんですか?」
部長室まで呼びに来てくれた翔くんがびっくりした顔してる
「なんかね、ほんとにいいのかなぁって思っちゃって」
「…ふ~ん」
「ごめんね、すぐ行くから」
紺色の小さなケースを内ポケットに仕舞った
皆へ挨拶をして会社を出る
ここで色んな事があった
ニノと出会って、ニノを好きになって、ニノが好きになってくれて
楽しい時間と、幸せな思い出がたくさんある場所
「行ってきます」
ビルへ一礼して、流れるタクシーに手を挙げた
「大野さんっ!」
皆も忙しいから見送りはいらないって伝えてあったのに、ニノが来てくれた
翔くんからと言って渡された封筒
中には特に急ぎではない、手渡しの必要もない資料が入ってた
不思議に思って目を通してると
最後の一枚に太いマジックで
-俺からの餞別!-
と書かれていた
俺は、恵まれてる
ここで働けてよかった
手続きを済ませて、スカイデッキのベンチに並んで座る
見上げた空はとても清んでいて
隣に居てくれるニノは優しくて可愛くて…
あの屋上を、思い出すなぁ
一目惚れをして、すぐに大好きになって
恋してるなんて思う間もなく
愛おしくて愛おしくて仕方なくて
何よりも大切で、かけがえの無い存在になって…
今、君に伝えたい
「少しの間、ニノを一人にさせるけど、俺を待ってて欲しい
必ず、ニノの所に帰ってくる
これは、約束」
ちゅ…
薬指に通したシルバーのリングへ口付けする
「ニノ、愛してる」
誰が認めるとか認めないとか関係ない
俺が、このリングに誓う
私は、あなたを愛します…永遠に
終わり
最後までお付き合いくださいました皆様、ありがとうございましたm(_ _)m