※ＢＬ妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
「…用はない、下がれ」
「嫌です」
こちらを向いてくれない
「下がれ！」
直接受け取る声は
さっきよりも、ずっと冷たく感じた
だけど、俺はここから離れたくない…
ピリピリと肌を刺すような空気の中、旦那様の前まで進んだ
腕は固く組まれて、目は伏せられている
なにも聞かない、見たくもないという無言の意志
俺が悪いんだ、俺が駄目な奴だから誤解が生まれたんだ
だから、下がるな
震える心と身体に、言い聞かせる
「旦那様…」
正座をして、こちらを見ようともしないお顔に手を伸ばすと
パンッと音がして、払い除けられた
「あ…」
俺に、泣く資格はない
ぐっと息を飲み込んだ
…下がらない、絶対に
「契りを結ぶまでに…口付け…慣れます
今…その習いを…」
張り飛ばされるのを覚悟して、唇を合わせた
ちゅ
旦那様しか居ないんです
ちゅ…
俺にはあなたしか居ないんです
応えてもらえない口付けは、寂しくて、悲しかった
下手糞だから、導いてもらわないと深く交わせない
だけど、気持ちだけ…この気持ちだけはどうしても伝えたくて
旦那様にしてもらっていたことを
冷たい唇に
必死に繰り返した
「和也」
頭に回された手に髪を掴まれて、唇を離される
「…あ」
「習いは、当主としろ」
見たこともない光りを宿した目に、睨まれた
「…嫌…です」
やっと目が合ったのに、声が震えてしまう
苦しい、寂しい、寒い…
だけど、諦めない
まだ届いてないなら
信じてもらえてないなら
何度でも、分かってもらえるまでやる
下がるわけにはいかないんだ
「旦那様っ」
首に手を回して、強引に唇を合わせようとした
もう少しで届く…そう思った時
背中の衣を掴まれて、床に倒された
つづく