君の手を・34 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想日記です


苦手な方はお気をつけください。





















「これで…ほんとに一人だな…」



大野さんの背中が見えなくなるまで

車の中から見送って

一人、目を閉じた




正確とか常識とか、俺にはよくわからないけど

これでよかったんだよね…?



もう人を選びたくない

人に選ばれたくもない…



この車を発進させることで

俺は前に進もう




…そう思ってるのに



なんで涙が出ちゃうんだろう

なんでこんなにも寂しいんだろう





酷いこと言われても、手荒に扱われても


どんな大野さんでもよかったんだ



身体だけの関係だってよかった

ただ気まぐれに遊ばれてるだけだとしても…




…違う



逃げるな




俺は…怖いんだ



身体だけならいい

でも大野さんが本当に俺に気持ちを向けてくれたら…

そうなったら俺は、大野さんを際限なく好きになってしまって


自分が抑えられなくなることが分かるから



一度振られた時だって


寂しくて死にそうだった



その好きな人と居ることが

どうしようもなく好きな人が、俺を求めてくれることが



怖い…




大野さんが最後に呟いた「やっとニノと…」


この続きを聞く勇気がないくせに


なのに今、こんなにも会いたくて

大野さんが触れていた手が、身体が、熱い



「大野さん…戻ってきてよ…」




…俺はおかしいね



一人で居るのがお似合いだよ






駐車場から車が少なくなって

朝が近付いてくる匂いがする



帰らないと…

前に進まないと…



そう思うのに、膝を抱えたまま、いつまでも動けなかった

















コン


コン



小さな音が聞こえた



目を開けて顔を外に向けると

運転席の真横に人が見えた



…誰?



ロックを解除すると、ドアが静かに開かれて

身体を屈めて運転席を覗き込んで来たのは



…大野さんだった




「…ど……したの?」



大野さんを見送ってから長い時間が経ってるのに…

なんでここにいるの…?



「あ…、車に…忘れものでもした?」



突然現れた大野さんに動揺を隠せずに


目を逸らして、助手席に大野さんの物が落ちてないか探していると


「ニノ、降りて」

優しい声で言われた



「…なんで?」

思わず大野さんの顔を見ると

…なんでだろう

数時間前まで一緒に居たのに


まるで別人を見ているような気持ちになる…


いや…でも、そんなことより…なんでここに居るの?



「いいから、車から降りて」

もう一度言われて、状況が理解出来ないまま車を降りた




「…降りたよ、何?」


「ニノが前に進めないなら

俺が手を引くから、…行こう」



大野さんはそう言うと、俺の手を取って歩き出した



「待って!違うよっ…俺は一人でっ…」

「騒ぐと見付かる」

「ちょっと!大野さんっ」

俺の手を引いたまま駐車場の外に出ると

大野さんはタクシーを捕まえて、俺を押し込んだ




「大野さんっ 離して…ダメだよ」


タクシーが走り出して

運転手さんに聞こえない声で何度言っても

大野さんは前を見据えたまま俺の手をぎゅっと握って


決して離そうとしなかった






タクシーから降ろされると

大野さんの住むマンションが視界に入った



「ダメだってば…やめようよ

ね?大野さん聞いて、お願いだから」



エントランスでもエレベーターの中でも

俺が何度言っても耳を貸さず

背中を押されて、部屋に入ってしまった





戻ってきてくれた嬉しさと


ここから逃げ出したい衝動と


握られていた手が熱いことがぐちゃぐちゃになって


もうどうしたらいいのか…わからない



後ろからゆっくりと部屋に入ってきた大野さんから


「二度と離さないから…」


俺に手が差し出される



「…ダメだよ、俺はおかしくなってるし!

大野さんも…よくわかんなくなっちゃってるでしょ

ここでやめよう?ね?お願いっ 大野さん!」



手を後ろで組んで必死に言った


だけど、大野さんはゆっくりと近づいてくる



…あの時と同じ、俺の言葉はいつも大野さんには届かない




「…ダメだよ、やめようよ……ゎっ!……いってぇ」



後退りしようとした足がもつれて、床に尻餅をついた



その痛みに気を取られて


大野さんから目を逸らしたことに気付いてハッと顔を上げると

身体の間近まで伸びてくる手が見えた




「…やめっ……」



反射的に身体を縮めた、次の瞬間



……なに?!



予想していたような手荒さとは全く別の感覚が俺を包んで

ふわりと身体が浮き上がった



「…え?なに?…やだよ、どこ…行くの?」



戸惑う俺を、壊れ物を扱うように大切に運んで


寝室のドアを足で開けると


ベッドの上にそっと降ろされた





「ニノ…」



大野さんは床に膝をついて、俯いたまま俺を呼んだ



「……どうしたの?」


なんでそんなに辛そうなの…?



「…付き合おうって言ってくれたのに

傷付けてごめんなさい

この前も…酷い抱き方してごめん…

もう二度と離さないから…二度とニノを傷付けないから

…俺の側に


……居てほしい

ニノを失うなんて堪えられないよ…

好きなんだ


…自分でもどうしたらいいかわからないくらい

ニノが好きなんだ…」



肩を震わせながら懸命に話す大野さんからの告白




なんで…

なんで俺を好きだなんて言うの…?




大野さんへの気持ちが、溢れてしまう




やめて…聞きたくないよ


















つづく