あなたが、氷の上に乗る瞬間が大好きだ。
その美しい指先が
感じた冷たさまで、伝わってくるようで。
触れたところから、透明度が増していくようで。
そして、気付いた。
氷を愛おしそうに撫でるあなたは、
そこに自分の姿を見ている。
お互いがその指を伸ばし、触れ合っている。
まるで、ナルキッソスのように。
そこに映る己の姿を追い求め、
やがて白い水仙の花に身を変えた
美しい若者。
冷たい雪の中でも気高く咲き、
春が来る希望を与えてくれるこの花は
あなたに似合う。
ならば今、
私たちは黄色い水仙となろう。
神話の結末は、いま、幸福に終わるのだ。