「ポーラ婦人、それでは__」
「ポーラで結構よ」
カートランドは咳払いを一つして続けた。
「ではポーラ。質問をいくつかさせてもらおう。」
亭主のファイルを開き、丁寧に目を通している。
「ご主人の名は、ロバート・ジェイムズ。年齢37歳。間違いないかね?」
「ええ、書いての通りよ」
「職業は郵便局員だね。」
ポーラは静かにカートランドの持っているファイルを見つめていた。
「浮気と言っていたが、ご主人がなにか怪しい行動でも?たまにだが、奥さんの嫉妬からくる幻想だったりする場合もあるんでね。」
まるで幽霊でも見た相手を落ち着かせているかのようにカートランドは訊ねた。
「電話よ。」
ポーラは淡淡と答えた。
「電話というと?」
「電話が度々あったのよ。私が電話に出ると何も言わずにすぐに切れるの。」
「間違い電話ではなくて?それに無言電話だったら女性かなどわからないのでは?」
「受話器の向こうから女の吐息が聞こえてきたのよ。あれは絶対に女よ。それに、間違い電話なんてそう何回もかかってこなくってよ。」
少しだけ語気を強めたが、それははっきり印象が変わる程のことではなかった。
「調べる必要がありそうだな。」
カートランドはファイルを見ながら思慮にふけった。
「どうせ私が電話に出たのを確認して切っているんだわ。そうに違いない。」
「ご主人にはこの事を?」
「ええ、言ったわ。白々しく、間違い電話だろ、の一本調子だわ。」
語気は相変わらず上がり下がりのない様子だったが、腿の上におかれた手はいつのまにかぐっと握られていた。
「質問はこのくらいでよいでしょう。いつでも連絡がとれるよう電話番号を教えて頂いてよろしいかな?」
街で女性に声をかけるそれとは違って、カートランドは事務的に訊ねた。
「ファイルの最後のページに書いてあるわ」
「ご用意が早くてありがたいですね。」
口を閉じながら口角を上げて微笑むと、一枚の紙を用意した。
「契約書にサインを。必要な事項はこちらをお読みください。」
ポーラは書いてある事項など知ったことかといった具合に契約書にサインした。