浅草 台東区のピアノ教室
《高島ピアノ塾》主宰、
バレエピアニスト・歌曲伴奏者の
高島登美枝です。
本日もご来訪ありがとうございます。
今日はハロウィン
昨日の記事にも書きましたように、
元は古代宗教の行事から来た風習、
今は子どもたちと若者の
お楽しみイベントと化しておりますが
私は大学に顔を出しがてら、
藝大の斜め裏にある
国会図書館の分館、
国際子ども図書館で開催中の
「『赤い鳥』創刊百年」の展示会を
研究者としての私の本業は
19世紀バレエ(音楽)ですが、
実はサブの関心事として
日本歌曲と近代詩歌についても
多少研究しております。
日本歌曲を語るうえで
山田耕筰と北原白秋のコンビが
絶対に外せない存在であることは
誰しも異論のないところだと思いますが、
このコンビとの関係で
どうしても避けて通れないのが、
雑誌『赤い鳥』と童謡運動の話です。
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夏目漱石門下の小説家・
鈴木三重吉(1882-1936)は、
外国童話の翻訳をきっかけに、
児童雑誌『赤い鳥』を創刊します。
彼が目指したのは、
流行の子ども雑誌の世俗性や
小学唱歌・教科書に代表される
教訓的な大人目線を排し、
一流の芸術家の手による
真に子どものためになる読み物を
作り出すことでした。
↓拡大してご覧ください
白秋に参画を依頼します。
白秋は童謡創作と、
読者投稿の詩の選者を
担当することになります。
白秋と山田耕筰の出会いの
きっかけを作ったのも三重吉でした。
(…と耕筰が語っている)
ニューヨークから帰国したばかりの耕作は
三重吉から『赤い鳥』のための
作曲家の推挙を依頼され、
弟子の成田為三と近衛秀麿を
推しています。
耕作の帰朝演奏会は
『赤い鳥』創刊1周年の記念演奏会と
兼ねて開催されました。
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今回の展示は、
もちろん書物が中心でしたが、
装丁や挿絵の美しい本が
多数ありました。
大正期の文化の豊かさ、
それが子どもの世界にも及んでいたことを
目の当たりに実感しました。
『赤い鳥』の始まった時期は
大正デモクラシーの只中で、
第一次大戦による好景気も手伝って、
都市には経済的余裕のある中産階級が
形成されつつありました。
子ども時代から
一流の芸術家の作品に触れることで
豊かな感受性をはぐくもうという
『赤い鳥』の精神は
子女の教育に熱心なこの中流層から
大いに歓迎されたそうです。
そういえばちょうど1年前に
館林の群馬県立美術館で観た
鹿島茂先生のコレクション展
『フランス絵本の世界』でも、
19世紀フランスの中流階級の子女教育熱が
絵本や児童文学の発達に
貢献する現象が指摘されていました。
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ひるがえって
現代の子どもの教育を思うとき、
昨今は「子ども向き」という名のもとに
かみ砕かれ過ぎて
栄養価のかけらもなくなったものに
楽しさという人口調味料をまぶしたような
絵本、児童書、コミック、アニメなどが
横行しているように思います。
展示されていた『赤い鳥』やその関連書籍を
仮に現代の子どもに与えたとして、
それを喜んで味わって読める子どもは
いったいどれだけいるのでしょうか
でも、大正時代の子どもと現代の子どもで
本来的な能力や性質には
そう変わりはないはず。
また、作品の価値は
現代でも決して劣化していないはず。
にもかかわらず、
大正時代の子どもが愛読したものを
同じ年代の平成の子どもたちの多くが
つまらないと感じるとしたら…
ちょっと考え込んでしまいますね
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『赤い鳥』から生まれた有名作品には
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』や
白秋・耕筰の《からたちの花》
新美南吉の『ごんぎつね』などがあります。
『ごんぎつね』の筋を思い出すだけで
今も泣けてきちゃう私です。
この展示会、
前期が11/11まで、
後期が11/13~来年1/20までで、
展示品が変わるそうです。
どちらも入場無料という
太っ腹ぶり
とてもよい展示会ですので、
上野公園にお越しの際は
ぜひ子ども図書館まで
足を延ばしてご覧くださいね。
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2018.03.27すみだトリフォニー小ホール
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「AHP花の音楽会」より
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