R. シュトラウスの歌曲〈万霊節〉 | 台東区入谷・浅草・三ノ輪のピアノ教室《高島ピアノ塾》とバレエピアニスト高島登美枝のブログ

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歴史と文化の地・台東区(浅草 入谷 上野)の《高島ピアノ塾》。
主宰者は早稲田大学出身の異色のピアニスト。
伴奏業の傍ら、東京藝大大学院で博士学位を取得。
20代から「音楽による経済的自立と社会貢献」を実践し
逆境から夢を叶えた音楽起業家人生のストーリー。

浅草 台東区のピアノ教室

《高島ピアノ塾》主宰、
バレエピアニスト・歌曲伴奏者の

高島登美枝です。
本日もご来訪ありがとうございます。

 

ハロウィンから一夜明けクロウビー5

今日は古代ケルト人の新年。

 

古代ケルトでは

大晦日であるハロウィンから

新年である11月の最初の数日は、

死者が家族の元へ

帰ってくる日だったそうです。

 

この習俗をキリスト教が取り入れて、

今日は全ての聖人の日「万聖節」

明日は死者のために祈る日「万霊節」

…となったとか。

 

死者が家族の元へ帰ってくる日と言えば、

日本ではお盆ですが、

西洋では今頃なんですね目

夏と秋の違いこそあれ、
どちらも季節の終わりの予感が

漂い始める時期なのは

興味深いことです。

 

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リヒャルト・シュトラウスが

ヘルマン・フォン・ギルムの詩に

付曲した歌曲集

《最後の葉》(Letzte Blätter)の中に、

〈万霊節〉Allerseelen 

と題された曲があります。

 

 

このYoutubeの伴奏を弾いている

アーウィン・ゲージは

我が師匠の師匠です。
(つまり私は不肖の孫弟子というわけあせる

伴奏の表情がとてもデリケート。
 

たぶんジェラルド・ムーアの伴奏の方が

お手本にするにはよいのでしょうけれど、

私はゲージの伴奏のほうが好きなので、

リンクを張るのはこの演奏にしました。


以下、歌詞をざっくり訳してみますが、

ほんと、訳しているだけで泣けてきます泣き1


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テーブルの上に香り高い木犀を置いて

名残の赤いアスターをこちらへ

そしてまた愛について語り合おう

かつてのあの五月のように

 

手を伸べておくれ 僕はひそやかに握ろう

もし人に見られても気にしない

甘いまなざしをひとめ僕に

かつてのあの五月のように

 

今日はどのお墓も花と香りに満ちて

1年に1度だけ死者が自由になる日

僕の胸においで もう一度君を抱きしめよう

かつてのあの五月のように


かつてのあの五月のように

 

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詩の第1節・第2節では、

目の前の恋人に語っている形ですが、

第3節まで読むとそれが

亡き人への語りかけであるとわかる

構成になっています。

 

しかし、文章はずっと

1人称(Ich )と2人称(Du )での

対話になっていて、

目の前にいる相手と

正対しているかのような

表現が採用されています。

「僕」には「君」が見えているのですね。

 

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全体は3節から成っていますが、

3節それぞれ別のメロディです。

 

Tranquillo(静かに)

という指示のある4/4拍子、

たっぷりと抒情的な

ピアノの前奏(長調)で始まりますが、

歌の歌いだしは

突然短調になります(紫の部分)。

 

その後長調になります(黒字の部分)が、

続く部分は音量をppに絞ったうえに、

遠隔調の借用和音が

登場します(青字の部分)。

 

そして半音階的な複雑な和声を通って、

歌詞の中で繰り返される言葉

「Wie einst im Mai」

(かつてのあの五月のように)が

高い音域で、音量も出して歌われます。

(赤字の部分)

 

第2節も短調で始まったものが長調に戻り、

ppで複雑な借用和音を通るのは同じですが、

「Wie einst in Mai」の盛り上げは

音量・音域共に1番ほどではありません。

なので、薄い赤字にしてみました。

 

そして第3節。
con espressione (表情豊かに)

との指示があります。
 

ここでやっと、

前奏で使われたメロディが登場。

 

逆に言うと、

前奏は第3節の1行目の内容の先取り。

花々で飾られた墓地の風景なんですね。

ピアニストはそのつもりで

前奏を弾き始めなきゃならないわけです

 

そしてクレッシェンドして、

「komm an mein Herz」

(僕の胸においで)と

「Wie einst im Mai」と歌われますが、 

ここはmolto espress.(最高に表情豊かに)

と指示されています。


…指示なんかなくても、

ここで表情豊かにならない歌手なんて

いるんでしょうかね

 

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この3度目の「Wie einst im Mai」の部分は

その前に思い切り盛り上げておいた挙句、

歌ピアノも1拍の休符が入り、

その後で半終止のカデンツにのせて

歌われます。

 

半終止ということは

まだ言い残しがあるんですよね。

それが4度目の「Wie einst in Mai」。

 

言い残しているけど、

すぐには言えず言いあぐねているのが

ピアノの間奏部分。

 

間奏は、前の半終止から減七経由で

もう一度カデンツを奏でます。

ここは

トニカ(安定感ある和声)に収まるけど、

バスは第5音、つまり第2転回形なので、

まだ本当に言いたいことを言い終えていない。

 

そして、4度目の「Wie einst im Mai」。

半音階的に経過する和声の伴奏に乗せて

「Wie einst」

(かつて/~ように、の部分)を

伸ばしながら歌い、

最後の「im Mai」(五月に)で

Ⅴ→Ⅰ の終止形で緊張が解決します。

 

ここの歌い方をどうするかが、

歌手の個性の出る部分。
 

心の中の永遠の五月を

あの世での再会の希望として描くか、

二度と戻らぬ失われた幸福として描くか。

どちらもありだと思います。

 

伴奏者としてはその都度、

歌手の解釈に合わせて、

この部分と後奏の処理を

考えなければなりませんが…。

 

後奏は、間奏部分を拡大したような

音型と和声になっています。

 

つまり、あちこち複雑に転調して、

調性が定まらず、

万華鏡のような表情のこの曲ですが、

最後の部分でダメ押しのように、

4回カデンツを繰り返して

収まるところに収まるわけです。
 

この4回のカデンツは

和声によって表情が変わっていくように

書かれていますから、

それぞれの色合いをどう処理するかは

伴奏者の仕事のしどころ。

 

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一方、歌手の聴かせどころは、

曲中で4回繰り返される

「Wie einst im Mai」の歌い分けでしょうね。

 

メロディや和声の違いを

どう出すかはもちろん、

いわゆる「言葉さばき」によっても

色々な表情を歌い分けられます。

 

たとえば「Wie」の「W」(=ヴ)発音や

「im Mai」の「M」の発音に

どれだけ時間をかけて溜めるか、とか。

 

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結局、ピアノがどう頑張っても

言葉をしゃべることはできません。

一方、歌はどう頑張っても

ひとりでは和声を出せません。

 

私が声楽伴奏にこだわる理由は

この辺りにあるのだと思います。

 

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さて、この曲が作曲されたのが1885年。

その11年後、1896年に

ドイツの画家フランツ・スカルビナが描いた

《万霊節》と題する絵画がこちら↓



歌曲と違って夫の墓参りの未亡人の絵ですが、
作曲と同年代に描かれた

同じくドイツ圏の画家の作品ですから
季節感や墓地の雰囲気が伝わるかと思います。

喪服での墓参、
花を飾るだけでなく、

蝋燭も灯していることがわかります。

 

前奏のお墓の情景は、

まさにこの絵の感じでしょうか。

 

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そういえば、歌詞の中に

名残のアスターが登場しますね。
キク科の花は

日本や中国ではめでたい花ですが、

ヨーロッパではお葬式の花です。

 

日本ではこの時期、

菊の品評会や展示会が盛んだったりしますし、

そもそも日本人にとって

秋は収穫を祝う時期なので、

あんまり暗いイメージじゃないんですよね。

 

だから、この曲を演奏するときは、

音を出す前にまず

ヨーロッパの秋を頑張って想像しないと。

 

内容はもちろんですが、

全体的な印象から、

ひんやりとした空気感や季節を惜しむ感じも

伝えられたらいいな、と思っております。

 

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