男子フィギュアワンツーフィニッシュ
…ということで、
狂喜乱舞の不肖・高島、
記念に宇野選手の「トゥーランドット」を
耳コピーしてピアノで弾いて、
動画作成しちゃいました。
(すぐ舞い上がる大阪人)
動画はこの記事末尾に貼り付けますが、
この編曲作成のプロセス、
対象がスケートだというだけで、
バレエ伴奏の楽譜起こし作業と
実は全く同じなんですね。
そこで、
バレエピアニストの仕事について
ご紹介する一環として、
今日は、この編曲の出来上がるまでについて
記事にしてみることにします。
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これまでのバレエ伴奏の記事は、
クラスの伴奏についての内容が
多かったと思います。
バレエ作品のリハーサルを
生ピアノで実施しているバレエ団(バレエ学校)は、
日本では、まだそう多くありません。
ですから、ほとんどのバレエピアニストにとって、
作品の伴奏を弾くチャンスは
あまりめぐってこないと思います。
リハーサル伴奏のやり方については
また記事をあらためて書く予定ですが、
リハーサルを弾く場合は、
まず楽譜を「調達」することから始まります。
今日はその話になります。
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バレエ作品の楽譜は、
そもそも出版されていなかったり、
絶版になっていることがほとんどで、
入手が困難です。
最近はIMSLPのおかげで、
世界中の図書館に眠っている
貴重なバレエ楽譜を
ダウンロードできるようになり、
本当に助かっていますが、
それでもまだ、
ピアノ編曲譜がないバレエ曲は
数多くあります。
そのため、
バレエピアニストの業務には、
オケ譜を元にピアノ編曲をしたり、
動画から耳コピーをするということが
頻繁に生じます。
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今回の素材である宇野昌磨君の「トゥーランドット」。
あれが仮にバレエ作品だとすると、
たとえば、バレエの先生から
ある日LINEで
「急で申し訳ないですが、
明日、『トゥーランドット』を振付けます。
これ(動画URL)でやりますので、
よろしくお願いします」
…とかなんとか連絡が入るわけですよ。
え、明日…(ふざけんるな)
と思った方、
あなたはこの業界をよくご存じないのですね。
前日に予告してくださる先生は、
とても親切です。
当日その場で、
「すいませ~ん
今日、これやりたいんですけど…」
と言われることはごく普通です。
そういう時は、とびきりのスマイルで
「あ~急な話なので、
ざっくりでいいですか、ざっくりで…」
と答えましょう。
実際、「ざっくり」でです。
オーケストレーションの複雑な作品でも、
全部の音を弾く必要はなく、
ダンサーが一番聞きやすい旋律を
拾い出してあげるほうが喜ばれます。
せいぜい合いの手を
ところどころ入れれば十分です。
(いろいろな楽器のあるオケと違って、
ピアノはピアノの音しか出ませんから、
いくら多彩なタッチを駆使しても、
忙しく身体を動かしているダンサーには、
ピアノの音にしか聞こえません。
だから、あれもこれも音を拾うと、
かえって音を取りにくくしてしまいます)
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…というわけで、
明日までに、
「トゥーランドット」を
弾けるようにしなければならないとしたら、
どのように作業をするか。
まず、指定された動画をチェックします。
(あたりまえか…)
同時に、曲の元ネタについてググります。
というのは、バレエ作品には、
使用曲がオリジナルのものと、
既存の曲からの転用の場合があるからです。
転用曲なら、完全に耳コピーする必要はなく、
楽譜が部分的にせよ、存在可能性があるわけです。
この場合は、
ジャコモ・プッチーニのオペラ《トゥーランドット》が
元ネタだとわかっていますから、
IMSLPに行って、スコアをダウンロードしましょう。
(うちにはリコルディのスコア↓があるので、
今回はそれを使いました)
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動画を見ながらチェックすることは、
曲の構成ですね。
先日の記事にも書きましたが、
物語とスケート:「トゥーランドット」考
https://ameblo.jp/nikiyabayaderka/entry-12352461468.html
フィギュアの「トゥーランドット」は、
・全曲の冒頭(イントロ)
・カラフがティムール&リューと再会する場面
・カラフのアリア「誰も寝てはならぬ」
…の3部分から出来ています。
で、ここでは
既に答えを書いてしまっていますが、
もしこのオペラの音楽について知らないなら、
3つの部分の曲が
あの分厚いスコアのどこから取られているかを
突き止める必要があるわけです。
この探索作業は、
日頃の知識の蓄積がものを言うので、
バレエピアニスト志望のみなさんは、
ピアノ曲とバレエ曲ばかり聞かず、
オペラやオペレッタ、交響曲や室内楽にも
広く関心を持ってくださいね。
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私は幸いにして、
今鳴った音をピアノで弾けと言われれば
すぐに再現できるのですが、
バレエピアニスとの仕事の
面倒くさいところは、
ただ耳コピーすればいいというものではなく、
いつでも、どこからでも弾けるように、
楽譜化しておく必要がある点。
バレエのリハーサルは、
同じ個所を何度もやり直します。
現場では、
「●●から返します」
「○○のところからもう一度」
などと指示されますから、
即座に音が出せるように、
楽譜化しておく必要があるわけです。
既存の楽譜を転用できれば
話は簡単ですが、
曲の尺(長さ)が違っていたり、
原曲にはないカットやリピートがあることも
バレエでは珍しくないので、
そういうときは、
楽譜(コピー)の切り張りをするか、
自分で楽譜を書く必要があります。
「トゥーランドット」の場合、
イントロ~前半は、
スコアのとおりではなかったので、
手書きしました。
後半はわりと楽譜どおりなので、
楽譜を利用しました
参考までに…
私が作った殴り書きの楽譜。
イントロ~前半部分↓
ももの尻尾入り
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私の場合、
この楽譜づくりの作業をしながら、
動画を参考に、
ポイントとなる振付を
譜面に書き込んでしまいます。
今回は、
実際に伴奏で使うわけではないので
この作業は割愛。
(宇野選手の伴奏を実際に弾けたら
超・超・超・嬉しいですが…)
あと、余裕があればですが、
同タイトルの他の動画も
チェックしておきます。
今回は、宇野選手の
今シーズンの初戦である
2017年9月のロンバルディア杯の
動画もチェックしてみて…
なんと、
曲の長さ(と振り)が違っていることを
発見しちゃいました。
シーズンに入ってからも、
少しいじったりするんですね
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以上の作業、
トータルで1時間弱です。
それでは、
不肖・高島による
宇野昌磨選手「トゥーランドット」
平昌オリンピックヴァージョンで
お聞きください