バレエピアニストというお仕事9:宇野昌磨選手の「トゥーランドット」を耳コピーしてみた件 | 台東区入谷・浅草のピアノ教室《高島ピアノ塾》とピアニスト高島登美枝のブログ

台東区入谷・浅草のピアノ教室《高島ピアノ塾》とピアニスト高島登美枝のブログ

歴史と文化の地・台東区(浅草 入谷 上野)の《高島ピアノ塾》。
主宰者は早稲田大学出身の異色のピアニスト。
伴奏業の傍ら、東京藝大大学院で博士学位を取得。
20代から「音楽による経済的自立と社会貢献」を実践し
逆境から夢を叶えた音楽起業家人生のストーリー。

浅草 入谷 台東区のピアノ教室

《高島ピアノ塾》主宰、

バレエピアニスト・バレエ音楽研究者、

コレペティトゥア兼歌曲伴奏者の

高島登美枝です。 

本日もご来訪ありがとうございます。

 

祝男子フィギュアワンツーフィニッシュ扇子

…ということで、

狂喜乱舞ヤッホーの不肖・高島、

記念に宇野選手の「トゥーランドット」を

耳コピーしてピアノで弾いて、

動画作成しちゃいました。

(すぐ舞い上がる大阪人アホ汗

 

動画はこの記事末尾に貼り付けますが、

この編曲作成のプロセス、

対象がスケートだというだけで、

バレエ伴奏の楽譜起こし作業と

実は全く同じなんですね。

 

そこで、

バレエピアニストの仕事について

ご紹介する一環として、

今日は、この編曲の出来上がるまでについて

記事にしてみることにします。

 ゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

これまでのバレエ伴奏の記事は、

クラスの伴奏についての内容が

多かったと思います。

 

バレエ作品のリハーサルを

生ピアノで実施しているバレエ団(バレエ学校)は、

日本では、まだそう多くありません。

ですから、ほとんどのバレエピアニストにとって、

作品の伴奏を弾くチャンスは

あまりめぐってこないと思います。

リハーサル伴奏のやり方については

また記事をあらためて書く予定ですが、

リハーサルを弾く場合は、

まず楽譜を「調達」することから始まります。

今日はその話になります。

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

バレエ作品の楽譜は、

そもそも出版されていなかったり、

絶版になっていることがほとんどで、

入手が困難です。

 

最近はIMSLPのおかげで、

世界中の図書館に眠っている

貴重なバレエ楽譜を

ダウンロードできるようになり、

本当に助かっていますが、

それでもまだ、

ピアノ編曲譜がないバレエ曲は

数多くあります。

 

そのため、

バレエピアニストの業務には、

オケ譜を元にピアノ編曲をしたり、

動画から耳コピーをするということが

頻繁に生じます。

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

 

今回の素材である宇野昌磨君の「トゥーランドット」。

あれが仮にバレエ作品だとすると、

たとえば、バレエの先生から

ある日LINEline

「急で申し訳ないですが、

明日、『トゥーランドット』を振付けます。

これ(動画URL)でやりますので、

よろしくお願いします」

…とかなんとか連絡が入るわけですよ。

 

え、明日…は?(ふざけんるな怒

と思った方、

あなたはこの業界をよくご存じないのですね。

前日に予告してくださる先生は、

とても親切です。

 

当日その場で、

「すいませ~ん汗

今日、これやりたいんですけど…」

と言われることはごく普通です。

そういう時は、とびきりのスマイルで笑顔

「あ~急な話なので、

ざっくりでいいですか、ざっくりで…ピース

と答えましょう。

 

実際、「ざっくり」でOKです。

オーケストレーションの複雑な作品でも、

全部の音を弾く必要はなく、

ダンサーが一番聞きやすい旋律を

拾い出してあげるほうが喜ばれます。

せいぜい合いの手を

ところどころ入れれば十分です。

 

(いろいろな楽器のあるオケと違って、

ピアノはピアノの音しか出ませんから、

いくら多彩なタッチを駆使しても、

忙しく身体を動かしているダンサーには、

ピアノの音にしか聞こえません。

だから、あれもこれも音を拾うと、

かえって音を取りにくくしてしまいます)

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

 

…というわけで、

明日までに、

「トゥーランドット」を

弾けるようにしなければならないとしたら、

どのように作業をするか。

 

まず、指定された動画をチェックします。

(あたりまえか…)

同時に、曲の元ネタについてググります。

というのは、バレエ作品には、

使用曲がオリジナルのものと、

既存の曲からの転用の場合があるからです。

転用曲なら、完全に耳コピーする必要はなく、

楽譜が部分的にせよ、存在可能性があるわけです。

この場合は、

ジャコモ・プッチーニのオペラ《トゥーランドット》が

元ネタだとわかっていますから、

IMSLPに行って、スコアをダウンロードしましょう。

(うちにはリコルディのスコア↓があるので、

今回はそれを使いました)

 

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

 

動画を見ながらチェックすることは、

曲の構成ですね。

 

先日の記事にも書きましたが、

クリック物語とスケート:「トゥーランドット」考

https://ameblo.jp/nikiyabayaderka/entry-12352461468.html

フィギュアの「トゥーランドット」は、

・全曲の冒頭(イントロ)

・カラフがティムール&リューと再会する場面

・カラフのアリア「誰も寝てはならぬ」

…の3部分から出来ています。

 

で、ここでは

既に答えを書いてしまっていますが、

もしこのオペラの音楽について知らないなら、

3つの部分の曲が

あの分厚いスコアのどこから取られているかを

突き止める必要があるわけです。

 

この探索作業は、

日頃の知識の蓄積がものを言うので、

バレエピアニスト志望のみなさんは、

ピアノ曲とバレエ曲ばかり聞かず、

オペラやオペレッタ、交響曲や室内楽にも

広く関心を持ってくださいね。

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

 

私は幸いにして、
今鳴った音をピアノで弾けと言われれば
すぐに再現できるのですが、

バレエピアニスとの仕事の

面倒くさいところは、

ただ耳コピーすればいいというものではなく、

いつでも、どこからでも弾けるように、

楽譜化しておく必要がある点。

 

バレエのリハーサルは、

同じ個所を何度もやり直します。

現場では、

「●●から返します」

「○○のところからもう一度」

などと指示されますから、

即座に音が出せるように、

楽譜化しておく必要があるわけです。

 

既存の楽譜を転用できれば

話は簡単ですが、

曲の尺(長さ)が違っていたり、

原曲にはないカットやリピートがあることも

バレエでは珍しくないので、

そういうときは、

楽譜(コピー)の切り張りをするか、

自分で楽譜を書く必要があります。

 

「トゥーランドット」の場合、

イントロ~前半は、
スコアのとおりではなかったので、
手書きしました。
後半はわりと楽譜どおりなので、
楽譜を利用しました

 

参考までに…

私が作った殴り書きの楽譜。

イントロ~前半部分↓

 

ももの尻尾入り猫


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

 

私の場合、

この楽譜づくりの作業をしながら、

動画を参考に、

ポイントとなる振付を

譜面に書き込んでしまいます。

 

今回は、

実際に伴奏で使うわけではないので

この作業は割愛。

(宇野選手の伴奏を実際に弾けたら

超・超・超・嬉しいですが…)

 

あと、余裕があればですが、

同タイトルの他の動画も

チェックしておきます。

 

今回は、宇野選手の

今シーズンの初戦である

2017年9月のロンバルディア杯の

動画もチェックしてみて…

なんと、

曲の長さ(と振り)が違っていることを

発見ルーペしちゃいました。

 

シーズンに入ってからも、

少しいじったりするんですねおどろき!

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

 

以上の作業、

トータルで1時間弱です。

 

それでは、

不肖・高島による

宇野昌磨選手「トゥーランドット」

平昌オリンピックヴァージョンで

お聞きくださいWハート

 

 

 

《高島ピアノ塾》
高島登美枝

東京メトロ日比谷線 入谷駅 徒歩4分

レッスンのお問合せ
伴奏・講演・原稿のご依頼は

ラブレター pianoasakusa@gmail.com 
までお気軽にどうぞ