シグナル&ノイズ(ネイト・シルバー著) | 本のブログ

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普通の人は読まないだろうと思う本を記す。
あとは、Linuxと中古PCなどの話題。

本書は2013年日経BP社より刊行された。

 

本著者は有名なデータアナリストであり、データ分析上の様々なことについてコメントされている。

データを分析するには、有効な情報である「シグナル」と、いたずらに予測精度を下げる「ノイズ」がある。

だから、「シグナル」をなるべく抽出することが重要だということなのだが、例えば、本書でも取り扱う株式市場などでは、短期的な利益を目論むトレーダーがわざとノイズを発生させることがあると指摘している。

そう、人間が介在するということに予測を困難にする要因があるという。

また、予測の精度を上げるには、一つの、法則性に固執するのではなく、間違った予測を考慮して、それを、再帰的に反映して行くことが重要だと考えている。

本書の中では、気象予測と、気候予測が例示されているのだが、気象予測(天気予報)は、毎日のように結果が判明するため、その情報をフィードバックして精度を高めることが可能だが、10年、20年、100年と言った長期的な予想である気候予測(地球温暖化)は、予測することがとても難しいとされる。

地球の温暖化は体感的にも正しいと思うのだが、未だに、議論が定まっていないところもあるように思う、それは、政治的な判断が絡むだろうからだ、すなわち、経済活動を制限できれば、温暖化は解消に向かうだろう、しかし、経済活動を停滞、もしくは、衰退させることに、先進国の人々、そして、あなたは、肯んじることができるだろうか(あのコロナのときも日本は騒然としたではないか)?

この様に長期的な問題の対応は難しい、ひとつは、予測の精度を上げることの技術的な難しさ(フィードバックが少ないこと)と、短期的に利益を得ようという(外部的な)バイアスがかかりやすいいうことだ。

しかし、まさにその難しさの故に、そういう長期的な問題、端的には、地球温暖化の問題に対峙していかなければならないことになる。

そして、それには、信頼の置ける専門家を抜擢して、へんなノイズを入れないように粘り強く対応していく必要があるだろう。

ちなみに、気づいた方もいられるだろうが、それは、いわゆるポピュリズムに染まった民主主義では覚束ないのだ。

さて、この先どうなることだろう?

 

最後に、本書は結構なボリュームがあるが、とても面白く、読みやすい本だ、現在のように、AIが跋扈する世間では、(本書とは)また違った見解もあるのかも知れないが、先の、(コロナ)パンデミックにしろ、能登半島地震にしろ、予測精度が極端に上がったという印象は薄いことからも、基礎的な知識の把握として有効な書籍なのではないだろうか?