社会的共通資本(宇沢弘文著) | 本のブログ

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普通の人は読まないだろうと思う本を記す。
あとは、Linuxと中古PCなどの話題。

本書は岩波新書2000年刊行のもの、奥付けを見ると2019年(第25刷)とあり根強く読まれている本だということがわかる。

 

結論から先に言うと、社会的共通資本を蔑ろにするような、経済・政策をとると、長期的・未来的にその大きな反動を、将来の世代が(無理やり)引き受けることになる、というもの。

 

読んでいて、「あぁ、しまった、もう遅いかも知れない」と思ったのは、第2章「農業と農村」の指摘で、他のブログにも書いたが、昨今、クマ出没の話題が多いが、これは、あからさまに、日本の農業や林業が衰退したことの証拠なのかもしれない、そして、昨今、豪雨や台風による土砂災害が目につくようになったことも、森林の整備が出来ないことによる必然的な災害だという考え方もありえる。

 

一応、この国は将来に亘って、今も、経済的な発展を目論んでいるようだが、それは、さらにこの国のバランスを崩すことになるかも知れない。

新自由主義、儲け主義は、本来必要な様々なサービスを、金銭的に見合わないものとして切り捨てていく傾向にある。

先の、農業や林業は経済的には見合わないところも多いだろうが、人が実際に住む環境を整えるという面で見れば、補助をしてでも維持しないといけない部分でもある。

それが、つき詰まって露見したのが、最近、エッセンシャルワーカーの不足によるインフラ維持が不可能になるという予測だ。

こういう、ものは、即時的に効果が現れるわけではない。

その弊害が、あちこちで露見した際には、かなり、重い症状を患っている可能性がある。

 

理屈を通そうとする時に、数値化は大変便利な指標だが、そこに、長期的・そして、質的な要素が必須の問題が絡んだ時に、弱みを露呈するのだ。

世の中はあまりにも複雑だということから、あまりにも、単純明快な理論、短期の効率化だけを提唱する理論は、一時留保して、様子を見るのが良いのかも知れないね。