本書は河出書房新社2017年初版のもの、現在は、河出文庫版もある。
この著者はNHK(Eテレ)を見て知った、著者は1954生まれ、私よりも7歳年上になる。
いわゆる、高齢者の老いを主題にした小説だ。
本書の主人公は75歳で、団塊の世代を想定しているのだろう、戦前、戦後の生まれではないことは本書中に記されている。
私からすると、微妙な年齢だ、私が、介護している母親は今年94歳で、昭和ヒト桁世代、私は、1961年で、いちおう高齢者のカテゴリーからは外れているものの老境に差し掛かりつつある。
「老い」は、誰しも早世しない限りは直面することだ、本書を読んでもわかるが、その老い方は、それぞれ個々、老いることになる。
本書のカバーに有名人を含めた評が出ているが、見事にバラバラであり、自分の気持ちを本書に投影している様が見て取れる。
自分の母親の姿を想定しながら、本書を読んだ。
老いは今までできたことが出来なくなる過程だ、人により、急激だったり、緩やかだったりする。
そして、それまで順調に生活できていたものが、たとえば、一度転んだおかげで、様変わりしてしまう、そんな薄氷を踏むようなところもある。
そんな、母親を見ていると、生きることが、とても感動的なことに思えてくる。
私ならば、苦もなくできるトイレも、彼女には介助しながらのひと仕事だ。
それでも、ひとつひとつ(今のことを)こなして生活を築いていくことで、明日につながる。
本書の主人公である桃子さんは、母親よりもずっとしっかりしている、多少心もとないが、自立して生活できている。
それでも、孤独が忍び込んでくるし、思わず、奇矯な行動をしてしまうこともある。
生きるだけで精一杯だろうけれども、逆に、その姿は、とても好ましい。
本来、人間はたったそれだけで良いのでは無いかと私は思うのだ。