【家族消滅】かつての若者が未婚のまま老いていき、家族を持った者も老いては独居暮らしとなる | 本のブログ

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あとは、Linuxと中古PCなどの話題。

 

 

これは、現在の若者だけでなく、私にも当てはまる。

私の家族は、現在介護している母親だけで、母が亡くなれば、独居となる。

だから、現在の若者は、一方で高齢者の無法を非難しつつも、その生態についてよく研究しておこう、明日は我が身だ。

そして、多少なりとも軋轢がありながらも、家族(親族)介護などというイベントが発生するのも、いわゆる団塊の世代までではないだろうか?

 

【家族消滅】かつての若者が未婚のまま老いていき、家族を持った者も老いては独居暮らしとなる
荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター 5/8(水) 9:05

世界が少子化推進していた時代
かつて「夫婦と子ども二人」という家族が標準世帯と呼ばれる時代があった。
第二次ベビーブーム期の婚姻数と出生数の増加に加え、核家族化が進んだ1970-1980年代までの話である。実際、世帯類型別の世帯数ではこの「夫婦と子」世帯がダントツに多く、世帯の中の4割以上を占めていた。
今では信じられないことだが、あまりにも子どもの数が多く、1974年には「子どもは二人まで」という出生を抑制する政府のキャンペーンも展開されていた。いわば「二人っ子政策」である。
「明るい家族計画」などとしてコンドームの自販機が展開されたのもこの頃である。

この出生抑制・人口抑制政策は日本に限らず全世界で展開され、世界人口会議なども実施されていた。テーマは「いかに人口増加を食い止めるか」であり、当時は爆発的な人口増加が地球の危機であると言われていたのだ。中国で「一人っ子政策」が開始されたのも1979年である。
皮肉にも、それから50年以上が経ち、先進諸国においては人口増加は抑制され、出生率は軒並み2.0を切るという成果をあげている。

日本の世帯類型推移
一方、その頃の日本では、一人暮らしの単身世帯は学生などを主とするマイノリティであり、三世代家族などのその他世帯よりもその数は少なかった。
ところが、1980年代をピークとして「夫婦と子」世帯は減少していく。入れ替わるように、単身世帯が激増していった。
皆婚時代が終焉し、婚姻数の減少とリンクして出生数も激減し始めた。折しもバブル経済の崩壊やその後に続く就職氷河期が本来その頃来るはずだった第三次ベビーブーム期とぶつかり、特に若者を中心として「結婚どころではない」時代に突入する。いわゆる「失われた30年」のはじまりである。
その間、単身世帯だけは右肩上がりに上昇し、ついに2010年には世帯類型別で単身世帯がトップになった。

家族は2割を切る?
世帯比率の推移で見るとよりわかりやすいが、「夫婦と子」世帯と単身世帯とが、まるで鏡のような対称性になっていることがわかる。
社人研の最新の2024年将来推計によれば、2050年には単身世帯は44%になり、「夫婦と子」世帯は2割程度にまで落ち込む。
ちなみに、この社人研の推計は、ベースが中位推計となっているので、実際はもっと「夫婦と子」世帯は減るだろうと思われる。
今までの社人研の推計でも中位推計はまったく当たらず、これをもって「人口推計なんてあてにならない」という者がたまにいたりするが、中位推計は多分に政治的な思惑によって計算されているものであり、決して官僚の能力が低いわけではない。
社人研の本気の推計はむしろ低位推計にあり、事実1997年に低位推計で出した出生数予測は、コロナの影響のあった2020年以降は別にすれば、2019年まではほぼ誤差なく的中しているのである。

単身世帯=若者ではない
さて、単身世帯が激増しているのは事実だが、これをもって「若い独身が増えているのだな」と考えてしまうのは早計である。確かに、今までは単身世帯といえば、若い未婚の独身男女が多かった、しかし、もうすでにその年齢構造が変化している。
生涯未婚率がずっと増えているように、もはや未婚人口は若者から中年へとスライドしている。もっとも人口ボリュームの多い(出生の多かった)1970年代生まれが今や50代にならんとしているからだ。そして、それはすなわち20年後には高齢未婚人口の増加という形で顕在化する。
2020年と2050年推計とで、世帯類型別の年齢別世帯数を比較しよう。
2020年では、単身世帯は20代がもっとも多くなっているが、2050年になると70歳以上が最多となる。これは未婚人口の高齢化とは別に、かつて既婚者であった夫婦が配偶者と死別して一人暮らしになる数が増えるからである。

2020年の「夫婦のみ」世帯をみればそれは容易に想像できる。
「夫婦のみ」世帯というのも決しては新婚夫婦が多いのではなく、子が独立して高齢夫婦だけになった世帯が多くを占める。この高齢夫婦のみ世帯は、やがて死別による単身世帯へと変化する。
高齢単身世帯が増えるのは当然なのである。
全体の高齢化とともに、既婚者であっても高齢になった時に独居を和議なくされるのは誰にも「必ずやってくる未来」である。地方の消滅都市が話題になっているが、町が消滅する前にこの「家族が消滅」フェーズがやってくる。
「結婚したいけどできない」という不本意未婚が4割もいる中で、不本意のまま老いていく未婚者たちと結婚し家族を持ったものの晩年は独居生活に戻る元既婚者たち。途中の道は違えど、行きつく先は同じなのである。

30年後を決めるのは今なのだが…
繰り返すが、これは中位推計ベースなので、実際はこれより30-40代の「夫婦と子」世帯と「夫婦のみ」世帯は減ると思われる。今0-19歳の子どもたちの婚姻や出生が増えるという見込みは今のところ見当たらない。
逆に、「結婚や出産が贅沢な消費」と化している現代において、一部な裕福な層だけが結婚・出産をして、中間層以下が未婚のままという状況がもっと増長されるかもしれない。政府やこども家庭庁のいう少子化対策はそれを促進するようなものばかりだからだ。中間層の婚姻が増えなければ少子化は解決されない。
30年後の未来を決定づけるのはまさに今なのであるが…政治家が真剣に考えているのは2-3年後の自身の選挙のことばかりなのだろう。
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荒川和久
独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。