自己愛性パーソナリティ障害 | 始まりはアドラー心理学

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より、楽しい日々を送るために、
より、ハッピーな人生を過ごすためには、
どうすればいいのでしょうか?
そのための方法論や実践論を考えています。
ちょっと難しい内容かも知れませんが、
みなさんのお役に立てるような情報を伝えていきたいと思います。

今回は、比較的よく見られる
『自己愛性パーソナリティ障害』について説明します。

以前、アドラー心理学カテゴリーで『劣等コンプレックス』、
『優越コンプレックス』について説明した事がありました。
これと、自己愛性パーソナリティ障害はとても良く似ています。
いや、似ているというよりは、
全く同じものを指しているといっていいでしょう。

これは、誰にでもいえる事ですが、
何かしらの劣等感によって、自己の価値を見出だせなくなると、
生きる意欲を失い、
何事からも逃げる癖が付いてしまいがちです。
また、酷い場合は、他者を攻撃するようになり、
周囲との対人関係を壊してしまう可能性も有り得ます。

自信と意欲をなくして、自らの課題から逃げる状態を
臨床心理学では『回避性パーソナリティ障害』といいます。
つまり、劣等感コンプレックスと同じですね。

これとは別に、
劣等感を隠すために他人を利用して、優越感を求める状態を、
優越コンプレックスといいます。
これこそが、今回のテーマ『自己愛性パーソナリティ障害』です。
その兆候について、以下に挙げてみましょう。

・自分が特別な存在だと思い込もうとする
・負けず嫌い
・一番にならないと気が済まない
・しばしば、他人の意見を否定し、批判する
・否定されると激しく落ち込む(もしくは抵抗する)
・自分の話ばかりする
・自己主張が強く、しばしば虚勢を張る
・常に他人が思い通りになる事を期待している
・何事も思い通りにならないと怒る
・頼まれていないのに余計な世話をしたり、物品を差し出す
・他人が世話や物品を拒否したり、感謝しなかったりすると怒る


以上、皆さんも心当たりはありませんか?

自己愛性パーソナリティ障害は、
前回の『境界性パーソナリティ障害』と似た部分があります。
いずれも、幼少時に親から充分な愛情を受けられなかった事により
発症するケースが多いようです(愛着障害)。
現に、両方を兼ねた人格を持つ人も多く、
その対処法や改善策にも共通点があります。

前回にも述べましたが、
子供は、見捨てられたら、一人では生きていけません。
だから、親や周囲に自分の価値を認められる必要があります。
その『認められる』という証こそが、大人たちからの『愛』です。
つまり、周囲からの『注目』、『承認』、『賛辞』などで、
自分の居場所を確認している訳ですね。

子供にとって、周囲からの承認は、
精神的に強い快楽となり、また生きるためのエネルギーとなります。
そのため、自分の価値をアピールするため、
何かと周囲の気を引こうとします。

子供にとって、兄弟は、親の愛情を奪い合うライバル同士となります。
兄や姉は、しばしば親の世話を受ける下の子に嫉妬し、
弟や妹は、自分よりも知恵や力のある上の子と自分を比べ、
劣等感に苦しみます。
このように、他人を競争相手や敵だと認知する心理傾向は、
大人になってもなかなか消えません。
この認知傾向が
自己愛性パーソナリティ障害を発症する一端になっているのは
間違いないと思います。

学校に通うようになると、さらに過酷な競争が彼らに襲い掛かります。
周囲から注目され、認められるには、
何かしら優れた部分がなければなりません。
成績が良い子、運動が得意な子、周囲の言い付けを守る子、
ユーモアセンスのある子、その他何かしら特技のある子は、
教師や級友たちの注目を受けますよね。
そこで、子供たちは懸命に努力しますが、
当然、誰もが上手くいく訳ではありません。

中には、承認を受けられない事で、
大きな欲求不満状態に陥る子もいます。
すると、逆に問題行動を起こしたり、教師や親に逆らったりして、
手っ取り早く周囲からの注目を得ようとします。
つまり、愛に飢えた子供ほど、
問題児や不良学生になる可能性が高い訳です。

そもそも、人間は、誰もが精神に『自己愛性』を抱えています。
それが、最も強まるのが思春期(反抗期)の頃です。
この時期は、多くの子供に
『自己愛性パーソナリティ障害』兆候が見られます。
この頃、イジメが活発化するのも、そのためです。

思春期を境に、極端な自己愛性は、次第に沈静化へと向かいます。
周囲からの承認を強く求めなくなり、
逆に他人を承認するようになっていきます。
これは、アドラー心理学的にいえば、
共同体感覚への目覚めに当たります。
つまり、自分にしか関心がない状態から、
他人の役に立とうとする段階への進化です。
しかし、中には、
社会人になっても思春期レベルから抜け出せない人もいます。
これこそが、まさに自己愛性パーソナリティ障害です。

彼らは、社会に出ても、子供の頃と変わらず、
周囲の承認を激しく求めます。
常に、周囲と自分を比べ、
競争と勝負の世界で、見えない敵と戦い続けるのですあせる

企業では、仕事の出来る人、
より多く業績を上げる人が周囲から承認されます。
さらに昇進して組織の上に立てば、
部下を動かす権力と高い収入が得られ、
より強い優越感を得る事が出来ます。

成果と業績があれば、組織の上役になれるのは当然で、
それ自体に問題がある訳ではありません。
問題なのは、権力の悪用です。

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、
自分よりも下の立場にある他人、
また能力や業績に劣る他人に対して、攻撃的になる傾向があります。

皆さんの周りにも、いませんかはてなマーク
部下をいたぶるパワハラ上司やお局様OL、嫁いびりの小姑、
店にイチャモンを付けるだけのクレーマーなど…汗
彼らは、他人のミスや至らない部分を細かく探し出し、
執拗に攻め立てます左差し
目的は、教育や指導ではありません。
ただ、他人を攻撃する事で優越感に浸りたいだけです。
しかも、この優越感に浸る快楽に依存しているので、
絶えず他者を観察し、攻撃ネタを探そうとします。
彼らの攻撃が、重箱の隅を突くように細かいのはそのためです。
中には、在らぬ疑いを掛けたり、
罪を捏造してまで他人を責める者さえいます。
このような人物が家族や職場にいたら、どうですか?
まさに日々が地獄と化すでしょう(僕がそうでしたショック)。

もし、以上のような人物が身近にいたら、
選ぶ道は以下の3つです。

・関わらない
・上手く付き合う
・周囲と協力して改善を促す
・周囲と結託して追放する


やはり、関わらないのが一番ですが、
家族や同じ職場にいる場合は、そう簡単にはいきませんね。

個人同士ならば、上手く付き合う事も可能です。
彼らは、基本的に愛を欲しているので、
褒められたり、評価されると喜びます爆  笑
そのような欲求を充たしてくれる人に敵意は抱かないので、
攻撃の標的にされる事はないはずです。
また、自分より上だと認める人には逆に友好的なので、
このような対人関係を作れれば、何ら問題ないでしょう。

『周囲と協力して改善を促す』という選択は、
諸刃の刃的な手段となります。
これで改善され、丸く収まる事もありますが、
多くの場合、元の木阿弥に戻ってしまいます。
周囲が、いくら上手に諭しても、本人に変える気がなければ、
やはり解決にはならないのです。

『追放』という選択は、最も確実に被害から逃れる手段となります。
あまりに悲しい選択ではありますが、
会社組織ならば、決行せねばならない場合もあります。
重度の自己愛性パーソナリティ障害は、
組織の対人関係に深刻なダメージを与えるからです。
標的となって執拗に攻撃された人は、
自ら退職して逃れるか、

または心身を病んでリタイアする羽目になりますガーン
実際、そのような人を僕は知っています。
そして、僕自身も、大きな被害を受けた事があるのです。

パーソナリティ障害によって、
他人に深刻な精神的ダメージを加える者の中には、
さらに危険な要素を隠し持ってる可能性があります。
これは、反社会的パーソナリティ障害と呼ばれるタイプに当たり、
下手をすると心身をボロボロにされてしまうので、
気を付けねばなりませんあせる

これについては、他のテーマで詳しく説明したいと思いますバイバイ