平成29年8月24日
内閣総理 大臣 安倍 晋三 殿
文部科学 大臣 林 芳正 殿
日本世論の会神奈川支部 監事 湯澤 甲雄
横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222
元銀行員 86歳
憲法と国会を軽視した文科省教育行政(意見)
1 「全体主義と自由民主主義」「個人の権利と国民の基本的人権」について
全体主義とは、「個人の利益よりも全体の利益が優先し,全体に尽すことによってのみ個人の利益が増進するという前提に基づいた政治体制で,一つのグループが絶対的な政治権力を全体,あるいは人民の名において独占するもの
をいう」(ブリタニカ国際大百科事典より)とされており、共産主義、社会主義、リベラル等がこれに含まれると一般に理解されています。
これに対し我が国の憲法は、前文1項において「自由民主主義の原理を国是とし、その原理に反する法律を一切排除する」と立憲、全体主義の排除を規定しています。その自由民主主義の原理は、昭和54年に締結された国際人権条約(社会権規約、自由権規約)において法的構造が詳述されています。
我が国の憲法は、占領軍政中に制定されたために独立国としての法的要件が完全に備わっておらず、このために当面は国会批准済みのこの国際人権条約(Covenant)を憲法第98条2項の条約として 憲法の効力を補完させ、他の連合国の憲法と協調させているはずです。
同条約は、自由民主主義の法的構造を次のように規定しています。
第1に、家族や共同体を構成する全ての人々が歴史的に築いた固有の尊厳(慣習、習俗=Customを含む)と慈しみの心を国民の基本的人権として国が認定し永久に尊重するとし、これを核心的概念にしています。
第2に、国民個人は常にこの基本的人権を増進、擁護する責任を負う。
第3に、生まれながらに自由な人々の自由即ち「基本的自由」を国民に保 障するために、国が一定の条件として32の「個人の自由と権利」条文
を創設するとともに、中立公正な裁判所を作ることによってこれを保障するとしています。但し「個人の自由と権利」については、個人は常に公共団体が基本的人権を保障する公共の福祉のために利用する責任を負うものとされ、「基本的人権」に劣後するとされています。
2 「個人の権利尊重」をもって「基本的人権」を抹殺した文科省の罪。
自由民主主義を原理とする政治の普及を心良しとしない、全体主義を原理とする政治を信奉する学者や政治家が、上記法的構造を眺めてこれを普及させないための「核弾頭」として捏造したものが「個人の権利尊重」という虚偽にしてポピュリズムの概念です。上記した如く全体主義にも自由民主主義にも「個人の権利尊重」という概念は無いので、全体主義者が日本の自由民主主義を破壊するために独自に開発した概念と見られます。
この虚偽にしてポピュリズムの概念を教育行政に導入する行政権行使に当り、文科省は憲法第66条(国会との連帯責任)を無視して、法律に拠ることなく、検定済み中学校公民教科書に直接記載させました。「個人の権利の尊重」と「基本的人権の尊重」と同等のものとして換骨奪胎し、基本的人権の具体的内容に関する教育を全く行わないことにしてあります。
基本的人権を教育行政から抹殺したことは、刑法第77条(内乱)或いは
第193条(公務員職権濫用)の罪に該当すると思料します。
3 教基法第1条(教育目的)「国民の育成」を放棄した「教育振興基本計画」
日本国憲法の精神に則り制定された教育基本法第1条(教育の目的)は、「自由民主主義国家の国民の育成」にありました。
平成25年6月14日閣議決定された教育振興基本計画については、これに先立つ第169回国会平成20年5月30日「教育基本法第17条に国会報告が義務つけられている教育振興基本計画の県」として、衆議院文部科学委員会において塩谷立委員外2名提出の自民党、民主党・無所属クラブ及び公明党三派共同提案され、賛成多数の決議が行われています。ところが文科省はこの
委員会決議を無視して行政を執行しています。
第1に、委員会決議1項「国民の育成を期した教育基本法第1条(教育目的)」が完全に無視されて、同法第3条の一人一人の生涯学習にすりかえられていること。
第2に、教育基本法第17条に定められた報告を含む委員会決議4項の「国会への報告」が、衆議院当局側には報告を受けた記録が全くないこと。 「国会報告」を怠ったのです。
文科省は、国家が担うべき教育行政責任を地教行法改正により地方自治体の知事や教育長に転嫁して、憲法第26条、第66条に違反する刑法責任から免れようとしています。政府は、断固として文科省の外科手術に着手すべきです。
以上