平成29年8月19日
内閣総理 大臣 安倍 晋三 殿
衆議院 議長 大島 理森 殿
参議院 議長 伊達 忠一 殿
最高裁判所長官 寺田 逸郎 殿
日本世論の会神奈川支部 監事 湯澤 甲雄
横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222
安倍自民党総裁の憲法改正提案について(意見)
近時、自民党安倍総裁より、<憲法を改正して9条に自衛権を明記する>ご提案がありました。<自衛隊は合憲の存在でありますので、自衛隊法の中に必要な憲法条文を明記して、9条2項を削除する憲法改正を行う等>以下の愚見を開
陳させていただきます。
1、 自衛隊の存在の合憲性と憲法学界違憲論の違憲について
我が国の憲法学者の63%は自衛隊を違憲の存在と考えている(平成27年調査)とのことです。しかし、それは誤りにして合憲であることをここに明らかにいたします。
憲法と国民との間を規律している憲法は、第11条において至高の概念とする国民の基本的人権に対して、永久に保障するとして憲法の義務・国民の権利を定めています。仮に、これが単に保障する憲法であるならば、憲法が根底から憲法でなくなります。
憲法は国民に対し永久の保障義務を負っているのですから、例えば核兵器を持たなければ永久の義務が果たせないのであるならば、核兵器の保有も憲法は制限していません。核兵器の保有を制限する条文はありません。
国民は国民の基本的人権を永久に享受するために、憲法第15条の定めに基づいて国民固有の権利を行使して、奉仕者たる自衛隊員を含む公務員を選定しています。従って、自衛隊の存在はまぎれもなく合憲です。なお、基本的人権の定義とその具体的中身については、既報愚見をご参照願います。
2、 自衛隊を憲法上明文化することについて
合憲である自衛隊法第3条をつぎの如く変更して、自衛隊の任務を明記すべきと思います。これにより、自衛隊に圧し掛かる積年の憲法学界の違憲論の通説の重荷が一掃されると思います。
<自衛隊法第3条(自衛隊の任務) 自衛隊は、憲法第11条の規定の下に、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保ち、もって国民の基本的人権を内外に向って永久に保障することを主たる任務とし、必要に応じ憲法第13条の規定の下に、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を守り、公共の秩序の維持にあたるものとする。>任務の明文化により、自衛隊に対する「学界の通説」が解消いたします。内閣は憲法第5章(内閣)の規定に従って自衛隊法を誠実に執行すべきことは申すまでもありません。
3、 憲法第9条の条文の性質と9条2項削除について
憲法第11条(基本的人権の享有)の至高の条文に対し、憲法103全条文の内憲法第9条を除く102条文は、夫々が有機的関係を持って支えています。
102条文はいずれも憲法の国民に対する保障文であり、102条文の下に国民に選任された公務員は国民に奉仕義務を負うと同時に、憲法第99条(憲法尊重擁護義務)を負い且、憲法第96条(憲法改正の手続)の義務を国民と共に負います。一方憲法第9条は憲法の保障文ではなく国民の宣言文ですから、第9条の下に選任された公務員は存在せず、102条の下に選任された公務員には、第9条尊重擁護義務も9条改正の手続の義務も発生していません。憲法第9条はあくまでも国民の宣言文であるので、国際情勢の変化に対応して、憲法第11条国民の基本的人権を永久に守るべく自衛隊の編成、戦力の保持が行われ、国民固有の自衛権の保有を認めた国際連合憲章への加盟、日米同盟等が締結され、憲法第9条2項の変更が国会の一般決議で行われてきている現実があります。従って、現下の国際情勢に照らし、国民が第9条2項の削除が必要とのことであるならば、国会の一般決議によりこれを削除することは合憲であると判断いたします。
4、 所謂「平和憲法」について
憲法学界の所謂「平和憲法」通説は、現行憲法に「第9条戦争放棄規定」があるからこれを所謂「平和憲法」と称して護憲し、「戦争放棄規定の廃止」は、即「平和の破壊」「戦争への途」として憲法改正反対を唱導しています。
戦争をしないで植民地とされたアラブ人、黒人、アジア人等の社会の人々は、アイデンティティを破壊され、難民或いは従属国の民と化して、民族として半永久的に立ち上がることができなくなっている現実が多くあります。一方、我が国のように300万英霊がアジア民族の独立、日本民族のアイデンティティ或いは家族を守るべく戦いに戦い抜き、戦争に敗れたとはいえ守り抜いて、戦勝欧米諸国に比肩する国家を築き上げ、世界のどの国からも平和な国として羨望の眼で見られている現実があります。そして戦後世界中に多くの独立国を出現させました。この二つの現実を見るとき憲法学界の通説は、偏向に満ちた、単純で無責任極まりない放言でしかありません。
国際条約では、自由民主主義政治体制とその核心的概念である家族や共同体の人々が形成した固有の尊厳を尊重することが、世界の自由、正義、平和の基本と定めています。平和の学説は、これを根拠に説くべきです。
以上