平成29年7月11日
自由民主党総裁 安倍 晋三 殿
憲法改正推進本部長 保岡 興治 殿
横浜の教育を考える会 代表 湯澤 甲雄
横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222
自民党憲法推進本部に属する皆様にお願い(提言)
1、はじめに
東京都議会選挙の自民党惨敗と北朝鮮のICBM発射成功の二大ニュースが流れる最中の7月5日、自民党憲法改正推進本部の全体会合が開かれました。今回は「緊急事態条項」をテーマにした会合であったにも拘わらず、参加者は400
人以上いる党所属議員の2割未満の75人にとどまったと報道されています。
出席しなかった議員の心情を察するに、政治に対する自らの無責任・不感症に頓着せず、マスコミの「安倍一強内閣の横暴な政治」という宣伝に右往左往して、早くも船から逃げ出した鼠のように見えます。欠席議員の多くは、「憲法・教育
は票にならない、経済は金にも票にもなる」と考え、政治を原理から勉強しようとしない不勉強な所謂「岩盤議員」であるに相違ありません。
今回都民は国政・地方を問わず、政治に責任を負わない「岩盤議員」が多い自民党政治に嫌気がさしていたところ、2016年度における都議会自民党議員提案がわずかに1件という現実を知り、自民党を惨敗させました。5日の自民党憲法改正の会合出席者が極端に少ない現実は、次の国政の選挙においても本当に自民党惨敗が予見される状況にあり、自壊の前兆と見られることを憂えます。
2、都民ファースト大勝利の背景
都民ファーストが何故大勝利を収めたのか、複数ある中で最も特徴的なことは、小池百合子氏の下に参集した政治家には、安倍首相並の改憲推進論者が多いことです。我が国がどうしたら良い国になるかについて、常日頃原理にたって真
剣に具体策を考え勉強している人が多いのです。都議会選挙だから、憲法や国政の話を候補者はしていませんが、掲げられた政策から政治に対する素養の深さや、にじみ出る熱意と改革を推進する姿勢や策を持って将来展望を開く人々に違いないと都民が感じたのです。「憲法・教育が票になる」ことを彼らは、立派に示したのです。そして不勉強な「岩盤議員」を入れ替えたのです。
3、党勢活性化のための果敢な取り組み
都民ファーストの会は、都議選で勝利した後、先ず東京都の発展や当面の問題に対処するために必要な情報や政策が党内から止めどもなく湧出する党内組織をつくり、議員提案が続々と出される体制を整備すると称しています。実際にで
きるかどうかわかりませんが、素晴らしい感覚です。このような組織は自民党には既に総務会や憲法改正推進本部があり、秋の臨時国会までに余裕があるので、「丁寧な議論」を行って党総裁方針通り「自衛隊を明記する改憲法案」を通過
させる覚悟を国民にハッキリ示すべきでした。これの審議を通じて自民党が活性化すれば、国民の信頼が増します。
4、「自由民主主義を原理とする憲法の確立」
<自民党は結党以来、「憲法の自主的改正を「党の使命」として掲げてきました。憲法改正に向けて全力で取り組んでまいります>と、自民党憲法改正推進本部のホームページにあります。これに関し、以下愚見を述べます。
憲法は前文1項に「自由民主主義を原理とする政治を国是とし、この原理に反する法律は一切排除する」と立憲しており、これが中立公正な政治です。この立憲の精神を尊重して憲法改正を為すことが、当然自民党の「党の使命」です。
また、自由民主主義を原理とする政治に関する法的枠組みは、昭和54年締結した国連憲章に次いで高位の国際人権条約(社会権規約、自由権規約)のみに定められています。我が国はこの条約を憲法第98条により誠実に遵守する義務が
ありますので、自民党の「憲法の自主的改正」はこの条約の遵守であることについて、自民党は機関決定し内外に決意を表明すべきです。
5、自民党の先輩議員の苦労を知り改正に励むこと
改正の対象になっている憲法は、どのような憲法であるか、今の自民党「岩盤議員」は全く認識が不足しています。<現行憲法は、連合国軍が作成した日本国の無条件降伏証書であり、連合国軍の軍政規則書です。だから、国民の主権も義務も領土も規定した条文の無い属国憲法である>と認識すべきです。そしてサンフランシスコ平和条約締結後、先輩議員である大臣等が自由民主主義の独立国として振舞う都度、右翼・軍国主義の復活とした中傷がなされて、失脚させら
れてきた憂き目が何度も繰り返されてきた悔しい歴史があります。後輩議員は先輩議員の苦難な歴史を偲び、その払拭に思いを致すべきです。
昨年主敵同志であった日本国と米国との間で、積年の和解が成立したことにより国連憲章第107条(敵国条項)の鎖が緩み、漸く独立国としての憲法制定が行なえる我が国の環境が整いました。そこで国際人権条約と属国憲法を対比し
てみると主に次のような相違があり、改正すべき点が浮き彫りにされます。
A 属国憲法で空白であった国民の主権に相当する条文は、憲法第11条の「国が永久に保障する国民の基本的人権(家族や共同体の人々=Individualsが歴史的に創った尊い習俗や慈しみの心)」になりました。国はこの自由民主主義の原理の中核に据えられた国民の基本的人権を尊重し確保することを保障することにより「主権の存する国民」が確定し、これが憲法103条文の至高の条文となりました。
国際連合憲章とは、国民の基本的人権を尊重するナショナリズム国家群が存在し、それが連合する組織のことであり、同条約第5条により他国の基本的人権を侵さないことにより国際平和が保たれる仕組みとしています。
また憲法第1条は、制定当時は居ない筈の「主権の存する国民」が居るとして虚偽をでっち上げて、我が国の君民一帯(Unity)の伝統的習俗(即ち国民の基本的人権)を日本国民自身が破壊したことにした上で天皇を主権者の地位から外したことにしています。この憲法第1条はマッカーサー司令部と日本側憲法起草委員の容共勢力が結託して、マッカーサー元帥三原則を改竄挿入したのであります。(マッカーサー憲法草案原本行方不明です。)
B 個人(Individual)の義務条文<全ての個人は、家族・共同体・国の人々に尽くす責務(Duty)と共に国民の基本的人権の増進擁護に努める責任(Responsibility)が常にある(国防義務を含む)>とあるべきものが、属国憲法は完全に欠落しています。因みに、憲法第99条の憲法尊重擁護義務者の中に国民が無いのは、この属国憲法には国民が存在しないからです。属国憲法は「連合国占領地の島にいる人」に対する連合軍政規則書なのです。
C 自由民主主義の基本的自由を国民個人が享受するために、国が国民個人に条件として創設したものが憲法第12条、14条から40条に至る「自由と権利」です。このために国は中立公正な司法制度を創ることによって自由を保障するとしています。「自由と権利」は国民個人が不断の努力で保持し、濫用を慎み、公共団体が憲法11条と13条後段を保障する福祉に常に使用する義務を負う義務条文です。連合軍は属国憲法規定において「個人の自由と権利」のみは、100%日本人に認めたのです。
6、全体主義憲法解釈との戦い
ところが、左翼勢力は日本側とマッカーサー司令部とが結託して、捏造した「個人の権利尊重」というポピュリズムの虚偽の概念の中に上記C「自由と権利」条文を容れて、これを属国憲法の基本的人権であるとする虚偽の憲法解釈をで
っち上げて、自由民主主義憲法と立憲されている属国憲法を、全体主義(共産主義)憲法に換骨奪胎させました。因みに、大辞泉(小学館)で「基本的人権」を見ると、国際人権条約の規定と180度反する内容が書かれています。<人間が人間として持っている当然の権利。近代初頭では、国家権力によっても制限され得ない思想・信教の自由などの自由権を意味したが、20世紀になって、自由権を現実に保障するための参政権を、更に国民がその生活を保障される生存権などの社会権を含めていう場合が多い。日本国憲法は、侵すことのできない永久の権利としてこれを保障している。>このような「個人の権利を尊重する」嘘でた
らめが大辞書に書かれていることは国辱にして、根幹のところで国政を混乱させる装置が仕掛けられていることを確かと認識し憲法改正に取り組むべきです。
文部科学省は、教育基本法第1条の「国民の基本的人権を尊重する自由民主主義国家の国民の育成」する教育目的を勝手に無視して、「個人の権利を尊重する全体主義国家の国民の育成」を導入し、全国の生徒に革命教育を実践するよう
になりました。これにより、前者と後者との間で深刻な対立・相克が生じました。
即ち、前者は自由民主主義を原理とする憲法理解に立脚し、家族、共同体、国家の国民を守り基本的人権を守るために立法、行政措置を進めます。後者は全体主義を原理とする憲法理解に立脚し、個人(「国民」と唱えている)を守り「個人
の権利」「人権」を守るために立法、行政措置が行われるべしと主張するだけでなく、大衆動員をかけて憲法を守れと政府の違憲行為を撤回させるべく左傾化したメディアを巻き込んで憲法から抹消しようとしています。
<「権利」とは、力づくで支配領域をひろめ、そこから利益を得ること>であり、この「個人の権利を国が尊重することを至高のものとする」人間社会と矛盾する原理に立脚するのが、自由の無い全体主義であり共産主義です。二つの憲法
理解に全く接点がなく、「喰うか喰われるか」だけです。「和を以て貴しとなす」でアプローチしたら喰われてしまうのです。
国際人権条約を反映させた憲法を制定している先進諸国は、共産主義を排除してきているために、フランスの10名を除き共産党議員が一人もいないが、日本には衆参両院で35名もおり、文科省の教育行政により増加の傾向を示してい
ます。自民党憲法推進本部に所属する議員は、勇んで立憲の精神立って戦いに挑むべきです。
7、結びー自由民主主義を原理とした憲法の確立
今我が国には、属国憲法前文1項に立憲された自由民主主義の原理に則した行政を心掛ける、自由民主党の政権運営があります。しかし、そこには自由民主主義の原理について定めた法律がありません。国際条約しかありません。自民党
政権は国家の羅針盤が見えない状態で、航行を続けています。「日本国民は背骨の無い軟体動物だ」と評した外国人がいます。一方において、属国憲法の上に、左翼勢力が「個人の権利尊重」という虚偽の概念を捏造し、それを文部科学省が公教育(教科書)における憲法解釈に導入した(憲法第11条並びに国際人権条約規定に抵触するため、憲法改正手続きを要するが行っていない)ために、全体主義に換骨奪胎された憲法解釈が公のものとして横行しています。今我が国は、永久に相容れない二つの原理に基づく憲法解釈をめぐって、政争を繰り返しています。それは、自由民主主義の原理に基づく憲法条文にキチンと改正しない限り、自民党の政権運営は憲法違反であるとする大合唱に発展する危険を抱えています。これに負けたら自民党の存在がなくなります。政権交代ではありません。
自民党憲法推進本部に属する400人の所属議員の皆様には、今後は挙って会議に出席し憲法に起因して混迷を極める我が国の政治全体を、秋の臨時国会までに自由民主主義を原理とする憲法改革の方向性を見出して導いていただきたく、一層のご努力をお願い申し上げる次第です。
以上