横浜の教育を考える会 代表 湯澤 甲雄
小林 正 先生の9月12日やまと新聞への寄稿「改めて『教育の政治的中
立性』を問う」(末尾参照)をインターネットで拝読させていただきました。
これに関し、下記愚見を述べさせていただきます。
記
1、国会の決議を経て遵守を国際公約している国際人権条約の中に、憲法前文
1項に掲げる自由民主主義の原理の一つである個人の責務・と義務の軌範
があります。
それは、家族、共同体、国家の人々(=国民)に尽くす個人の責務並び
に、国が認めた国民が歴史的に形成してきた尊い習俗、法律や愛の心(=
国民の基本的人権・国民の主権・国家)に対し常に増進・擁護に努める個
人の義務があるという二つの規範です。
これらの規範は、憲法を改正して憲法規定とされなければなりませんが、
その場合、「基本法制の整備、法秩序」を任務とし、法律の専門集団であ
る法務省にその任に当たらせたうえで、内閣法制局が内閣の事務局として
チエックし、内閣として憲法改正案を国会に提示すべきと思います。
この憲法改正案は、条約が国会で先議済みであるので憲法審議会に諮る必
要はないと理解します。
2、一般的に憲法改正に関する国会への提案権のルートは、内閣と憲法審査会
の二つのルートが最低あるべきと思います。憲法改正を憲法審査会任せに
にしてはなりません。
3、国民投票制については、ご指摘の通り、間接民主制に抵触します。憲法前
文に「そもそも国政は国民の厳粛な信託によるもの」と有り、これと矛盾
するので、国民投票制は廃止すべく憲法第96条1項を改正すべきです。
4、教育の政治の中立性とは、憲法前文1項に定める「自由民主主義を原理と
する政治を国是とし、その原理に反する法律は一切排除する」教育を行う
ことです。護憲を貫くことです。これ以外の政治の中立性はあり得ません。
従って、教育基本法第14条(政治教育)2項は、「法律に定める学校は、
自由民主主義を原理とする政党を支持し、この原理に反する政治教育その
他政治活動をしてはならない」と、憲法前文規定と整合させた条文に改
め、政治的中立性の堅守を定め、国際法にも則した政治教育を促進すべき
です。以上
「教育の窓」, 寄稿
【教育の窓】 「改めて『教育の政治的中立性』を問う」
元参議院議員/教育評論家 小林 正
2016年9月12日
1,第24回参議院選挙では選挙権年齢が18歳に引き下げられ、新有権者240万人(有権者全体の2%)の投票行動が注目された。既に明らかにされているように、20歳未満の投票率は、18歳では51%(男49%,女53%)、19歳では39%(男37%,女47%)、新有権者の投票率は45% (男43%,女47%)で、全体の投票率54%を下回った。因みに共同通信の出口調査によれば、自民党に投票した人は10代で40%、20代で43,2%、30代で40,9%などとなっている。
2,選挙権年齢の18歳への引き下げは、国会における憲法調査会が役割を終え、憲法改正への具体的な審議を行う場として憲法審査会が両院に設置される経過において、各党間で三つの宿題として確認された一項目として取り上げられ、今回実施されたものである。この間の論議において、先進諸国の選挙権年齢が18歳であることが挙げられていた。
各国では、18歳年齢に対して、徴兵制など国に対する義務が先行しており、それに付随する権利として参政権を付与することとした経緯がある。我が国においては、民法、少年法等においては未成年として、権利行使の主体というよりは保護の対象であった。これらの未整理の課題を残したまま、参政権付与のみが先行した。
残された宿題の二つ目は公務員が憲法改正の国民投票において賛否の何れかの立場から、身分の制約なく活動することが認められるか否かという問題である。三つめは国民投票は憲法改正に限ってのものか、その他の国政上の重要課題に拡大すべきか。この二つの宿題については手が付けられていない。
思うに、三つの宿題を吟味してみれば、憲法審査会への移行を急いだ自民党の野党(民主党)への大幅な妥協、それも悔いを残すものだったと思う。国民投票の拡大は間接民主制の原則と相容れないし、公務員の政治活動に道を開くものとなるなど、「宿題」には野党側の罠が透けて見える。 以上