平成28年4月13日
関西大学文学部教授 赤尾勝己 殿
(写し・内閣総理大臣 安倍晋三 殿
(写し・文部科学大臣 馳 浩 殿)
湯澤甲雄 横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222
<自由民主主義の原理に基づく教育行政の推進>
<副題・バドミントン桃田選手の悲劇の深層>
拝啓 陽春の候 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
早速ながら、貴殿は茨田北中学寺井校長の件に関し下記の話を公表されていたとのこと
最近知りました。一般国民の目線で見た場合、失礼ながら大変に違和感を感じましたので、
不躾ながらここに愚見を箇条書きにて申し述べ且つ公表させていただくことに致しました。
記
<赤尾教授「茨田北中学寺井校長は公人として配慮を欠いた発言」と論評>同教授談「人生
をどう生きるかは個人個人で考えることで、他人が指図すべきことではない。社会には結婚
したくてもできない人もいるし、夫婦になっても子供を産まないという選択肢もある。今回
の発言は、多様な生き方を否定するような発言だ。特に公人であり、生徒と向き合う校長が
このような画一的・硬直的発言をしたことは、配慮を欠いた発言と言わざるを得ない。」>
(愚見)
1、校長は公人であり、憲法、教育基本法、教育基本法の下につくられた教育行政諸法に従
い且つ、政治的行為は国家公務員法、それ以外の行為は地方公務員法に従う義務があり
ます。法律の体系は、上位法、上位条文に反する下位法、下位条文は無効ですから、上
記貴殿のお話を上位法(憲法と教育基本法)上位条文(憲法前文1項と教育基本法第1
条)に照らすと、お話しを許容する法文はどこにも見当たらず、むしろ違法に該当しま
す。従って貴殿のお話は「教育学者として配慮を欠いた発言」と言えると思います。
以下「校長」あるいは「教育学者」が従うべき法体系を述べさせていただきます。
2、憲法は日本国民が日本という国土において社会を形成して生きていくための約束事とし
て定められた政治理念です。その憲法前文1項は、「自由民主主義を普遍の原理とする政
治を国是とし、それに反する法律は一切排除する」と規定しています。また憲法第26条
には「教育は法の定めるところにより行われる」規定があり、教育は自由民主主義を原
理とする法律に従うものとされています。それに反する法律の適用は一切許されません。
3、憲法の精神に則り制定された教育基本法第1条(教育の目的)は、「教育は、人格の完成
を目指し、平和で民主的な(自由民主主義を原理とする政治を行う)国家及び社会の形
成者として必要な資質を備えた心身共に健康な国民の育成を期して行われなければな
らない」とあります。即ち教育基本法は、教育の目的を自由民主主義の原理に則して行
うものとしています。教育基本法第1条(教育の目的)に則らない教育行政法や教育行
政は、例え閣議決定されたものであっても無効であることは論を待ちません。
4、昭和54年に締結し、履行を国際公約し、既に憲法第98条2項の最高法規となっている
国際人権条約(社会権規約、自由権規約)は、自由民主主義の原理を国際法化したもの
です。その前文末尾に「国民一人一人(Individual)は基本的人権を形成してきた家族や
共同体の人々(Individuals)のために尽くすことを本分(Duty)とし、常に国が認めた
国民の基本的人権の増進、擁護に努める責任(Responsibility)を負う」としています。
(原文)「Realizing that the individual, having duties to other individuals and
to the community to which he belongs, is under a responsibility to strive for
the promotion and observance of the rights recognized in the present Covenant」
これが自由民主主義の原理の中に定められた国際的規範であり、我が国憲法の軌範です
から、教育基本法第1条の教育目的には、これらの軌範が昭和54年来織り込まれてい
ます。即ち、個人は個人の本分(人が本来尽くすべきつとめ)と責任を果たすことが義
務付けられています。
5、教育基本法前文にある「個人の尊厳を重んじ」とは、その字句に冠せられた「我々日本
国民の理想の実現のため」とあり、その理想は「憲法前文1項にある自由民主主義を原
理とする政治体制の完成」のために個人(Individual)が本分や責任を献身的に尽くすこ
とを尊いとした言葉です。因みにこれに格別の功労のあった個人には、天皇陛下から栄
典を賜る制度が設けられています。また、憲法第12条においても、個人の自由と権利は
常に公共の福祉、利益のために使用しなければならない規範が明示されています。従っ
て、校長や教育者は生徒個人個人の生き様について、彼らの本分や責任を示し教育する
ことによって奉仕する立場にあります。これは教育関係者の「誇」です。
貴殿の「人生をどう生きるかは個人個人で考えることで、他人が指図すべきことではな
い」のお話は、公人や教育者が不作為で居ることを認め、個人にちゃらんぽらんな多様
な生き方を認めるものでありますので、改正刑法草案第12条(不作為による作為犯)に
該当する恐れがあります。また、近時教育界にいじめ・自殺者・休職者・休学者が多い
のも、職務に対する不作為者、無責任者が職場を支配し殺伐とした環境が出現している
ことに原因があると思われます。個人の生きる道標である本分や責任を示さない教育行
政体制は国際規範や憲法違反であることを知るべきです。
6、自由民主主義の原理の中核に第11条の「基本的人権尊重」の概念が据えられ、永久に保
障される即ち尊重される国民の権利として定められています。国際人権条約は「基本的
人権」について、「家族や共同体を構成する全ての人々(Individuals)が歴史的に形成
してきた尊い習俗(習俗宗教、道徳、伝統文化、法律等)並びに同胞愛であって、国が
これを認めたものを、世界の自由、正義、平和の基本とする」と定義しています。
一方、憲法第12条から40条に至る個人が自由を享受する条件として国が創設した「個
人(Individual)の自由と権利」は、個人が不断の努力で保持することを憲法が保障する
国民の義務と定めています。国民の権利である「国民の基本的人権」の対極にあります。
公人や教育者はこれら国民がこれらの権利や義務を享受するための国民全体の奉仕者で
す。公民教科書等に記載されている個人の自由を認めない「個人の権利尊重」という概
念は、憲法や国際人権条約には規定されていません。自由民主主義の基本概念を破壊し、
自由の無い全体主義社会への革命を誘うための道具として捏造された虚の概念です。
7、自由民主主義の原理に則って国政を運用している安倍総理大臣は、去る1月22日施政
方針演説で国策として「1億総活躍の最も根源的な課題」について、国民一人一人の本
分や責任に関し国家のリーダーとして明示しました。寺井校長は校長の職務として総
理の演説を受けて個人の本分や責任について生徒に発言しています。この校長の発言に
対し貴殿が「公人として配慮に欠けた発言」と指摘する貴殿の方に何かの先入観に侵さ
れた誤りが認められます。
バトミントンの桃田選手の悲劇は、自由民主主義国家・社会の形成者となるための国
民の本分や責任に関する教育を永年無視し誤った文部科学省の教育政策により、多くの
不作為、無責任な公人や教育者等に囲まれ育成された個人が被害者になった事件です。
これは憲法の定める統治の基本秩序の壊乱が惹起した国家公安問題であると思います。
初めての御仁に長文を差し上げる失礼をお許し願います。物事が根本から捻じれている
思いが致しますのでこのようなことになりました。
先生の益々のご活躍をお祈り申し上げます。 敬具