<新聞意見広告「言論の自由」否定について>(意見) | 日本世論の会 本部

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    平成28312

辯護士 升永 英俊 先生

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 <新聞意見広告「言論の自由」否定について>(意見)

 

 先生の新聞意見広告<改正憲法第212項(自民党案)は、現行憲法の「言論の自由」を否定>を拝見しました。これに関し、愚見を箇条書きで申し述べさせていただきます。

1、憲法規定で言う絶対的価値は、憲法が国民に永久に保障する即ち「尊重」する至高のものと規定した第11条の「基本的人権」と称する主権者たる国民の主権のことです。

「基本的人権」とは国民が歴史的に形成してきた尊い習俗、法律、人間愛を意味します。国民が自由を享受できるように、条件として人為的に創設された第12条の「自由と権利」、或いはその中の一条文である「言論の自由」について、絶対的価値とする認識に絶対的誤りがあります。因みに、国際人権条約(英語の原文)にてご確認ください。

 

2、「言論の自由」は、憲法が国民に「単に保障する」と規定した第12条の「自由と権利」の中に含まれる第13条から40条に至る27条文の中の一条文であって、常に不断の努力で保持する義務を負い、濫用禁止の義務を負い、公共の福祉のために利用する義務を負う国民の義務条文のことです。先生の憲法理解に転倒がみられます。 

3、憲法の「永久に保障する(即ち「尊重する」)と「保障する」との相違は何か。「基本的人権を永久に保障する」とは、憲法が直接の当事者になって奉仕者たる公務員を使って、法的行政的措置を含むあらゆる手段をもって保障義務を果たす意味です。

「自由と権利を保障する」とは、憲法は第三者の立場にあって「国民と国民」「国民と政府機関」との間の「自由と権利」関係が公平となるよう中立公正な裁判所を設置して司法に委ねることで保障義務を果たすことです。「言論の自由」に絶対的価値はありません。

 

4、自民党改憲案第212項「言論の自由」の制限は、欧州諸国の憲法にも同様な制限が設けられています。更に、我が国が遵守を公約している国際人権条約の自由権規約第193項にも制限規定を設けることができる規定があります。従って自民党改憲案に、違憲性は認められません。自由民主主義社会における「言論の自由」の重要性は認めます。

5、我が国の憲法前文1項は、自由民主主義を原理とする政治を国是とし、その原理に反する法律は一切排除すると立憲しています。そして、原理の中核に据えられた概念が、基本的人権の永久の保障即ち尊重です。また「自由と権利」は、常に基本的人権を永久に保障する公共機関の「公共の福祉」のために使用する制限が設けられています。因みに、国際人権条約前文にも、<「自由と権利」は常に「基本的人権」の増進・擁護のために努める責務がある>とあります。これが我が国憲法に規定する「統治の基本秩序」です。この「統治の基本秩序」に違反した者は、刑法第二章で刑罰を科せられます。この刑法条文は、治安維持法11項と同じであり、厳に違反してはなりません。

6
、況してや弁護士法第1条「辯護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを
使命とする」と有るのですだから、先生は弁護士としてその使命を果たすべきです。

  また、弁護士法第2条(弁護士の職責の根本基準)に従い、Up-to-dateの法律体系を反映させることによって、誤った先入観に基づく「意見広告」の修正を切望します。

以上