【ソウル大貫智子】
1日の日中韓首脳会談を議長国として取り仕切った韓国政府は、歴史問題や南シナ海情勢など敏感な問題を避け、3カ国の関係改善に注力した。北東アジア地域の緊張緩和に主導的な役割を果たし、韓国の最重要課題である北朝鮮問題で日中両国の協力を引き出すのが狙いとみられる。
1日、青瓦台(大統領府)で行われた3首脳による共同記者会見で、朴槿恵(パク・クネ)大統領は、安倍晋三首相が冒頭、韓国語で「アンニョンハシムニカ(こんにちは)」とあいさつすると笑顔を見せた。2014年3月にオランダ・ハーグで行われた日米韓首脳会談で、安倍首相が韓国語であいさつした際、朴大統領が応じず韓国内でも評価されなかった経緯があり、今回は和やかなムードを演出した。
韓国政府は、日中韓首脳会談が長く中断したのは、尖閣諸島問題による日中関係悪化と説明するが、実際には日韓関係の悪化も大きく影響した。日本側には、中韓両国が歴史問題で共闘しているとの警戒感もあった。
しかし、1日の首脳会談後の共同宣言で、歴史問題への言及は「歴史を直視」との1カ所にとどまり、経済や環境、国民交流促進など3カ国協力強化を前面に押し出した。10月31日の中韓首脳会談後、青瓦台関係者が行った
韓国記者団への説明でも、外交案件については簡単な質疑に応じただけで、経済協力についての説明に大半の時間を割いた。歴史問題や南シナ海情勢など、敏感な課題に焦点があたるのを避けたかったとみられる。
また、安倍首相が1日昼、宿泊先のソウル市内のホテルに到着した際には、デモ隊の姿はなく、在韓日本大使館前の
首相訪韓反対デモの参加者はわずか7人にとどまった。ホテル前では、ホテル側が事前にデモ隊を入れさせないようにしていたとの情報もあり、官民一体となって今回の会談の成功に神経を使った様子がうかがえる。
Yahoo!ニュース 毎日新聞 11月1日(日)21時41分配信