インドネシア向け高速鉄道輸出に関する意見 | 日本世論の会 本部

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    平成27102

財務省 大臣官房政策金融課 御中

 

湯澤 甲雄 横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222

yuzawa.motoo@rainbow.plala.or.jp

 

インドネシア向け高速鉄道輸出に関するインドネシア政権の振舞が率直に言って軽率に感じたことと、IMFの公的外貨準備高の中に人民元等のスワップ契約金額という疑似通貨を算入する国が増える傾向にあること(例えば、対外純資産マイナスであった韓国が、外貨準備資産3千数百億ドルと公表し、人民元等のスワップ契約金額を算入していること)、

人民元とルピアとのスワップ契約による財政負担を軽減する新手の国際金融策によって高速鉄道輸出が成約できなかったのではないか等いろいろな思いがあって、先ずは関係者に意見を述べることにしました。ご参考までに、下記をお送りいたします。以上


平成27101

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿

インドネシア共和国在特命全権大使:ユスロン・イザ・マヘンドラ 閣下(写し)駐日米国大使キャロライン・ブービエ・ケネディ 閣下

 

 

「インドネシア・ジョコ政権運営能力に疑問在り」(意見)

 

 国連憲章の下に大国も小国も対等な国家として多くの新興国が独立しました。

後進国が経済発展を遂げる手段として、先進国と後進国の両国の事業主体が対等な立場に立ち、後進国開発のために長期借款契約を締結し、両者の権利・義務関係の全てを限定し、これを基礎にして行うことが国連憲章の平和目的に沿った最も安全なやり方であり、国際社会の常識でありました。

大型の開発案件であれば、後進国側は政府保証あるいは、先進国一流銀行発行の保障状の差し入れは当然でした。政府保証であれば、政府は先進国側の契約の履行状況を積極的に監視する立場に立つことができます。国内事業体に対しても、関与できる立場に立つことができます。これに対して、先進国事業主体は後進国事業主体に対して、国際的一流銀行のPerformance Bondを差し入れて、開発の完成を約束しました。

こうすることによって、前世紀において西欧諸国が行ってきた開発を通じて獲得した後進国における利権を永久に定着させて植民地化する19世紀的侵略を防ぐことができます。

日本国は戦後数十年一貫してこのような対等な関係に立つやり方で、インドネシアを含む多くの後進国政府と共に多くの人々の生活の向上・発展に寄与してきました。

去る929日インドネシア政府ジョコ政権は、ジャワ島の高速鉄道建設計画について中国案を採用する方針を決めたと新聞報道がありました。それは、政府に財政負担が発生せず、中国側が資金面で要求に応じる方式であることが中国案採用決定の理由として挙げられていました。この他の条件が何も報道されていないので、推測しながらこの方式の問題点を以下に述べます。

1、 従来の中国の後進国への投資は主に資源開発を目的とするものでした。後進国政権に利益を付与し財政負担を発生させない代わりに開発権を得て資源を得る他に、中国人労働者を送り込み、その周辺に中国人商人を配して商圏を広げるものでした。後進国国民にとって利益になるものはほとんどなく、国家資源のみが海外に搬出されるだけでありました。後進国事業体を設けさせず、後進国の産業振興に寄与することも無いので、借款契約を成立させる必要もありません。透明性がありません。

2、 高速鉄道事業は、資源開発よりはるかに複雑な経済関係が生じます。事業主体は、政府に財政負担を発生させない前提ならば、中國国籍企業であるか、又はインドネシア国籍企業であっても全株中国保有会社でなければ、中国側はこの事業に出資や融資を実行しないと思われます。

収用された土地はこの中国系企業の所有物となり、この企業の言いなりにならなければ事業が進行せず、多分にインドネシア政府に対する内政干渉が続出することでしょう。

その内政干渉には、中国軍の出動もありうるもので、仮に現実のものとなった場合に、これを止めることができる国は無く、孤軍戦わなければなりません。

この企業の経営者、管理者は勿論、関連車両修理工場、電気設備、保線工事等重要箇所は、本国から来た中国人が抑えてインドネシア人に移転することはあり得ないでしょう。

返済資源確保のための運賃設定(徴税権に相当する)はこの外国企業の権限の下に定められ、駅ビル、駅前、駅地下街等周辺の莫大な利権もこの企業に帰属することになるでしょう。借款契約に拠らないこの事業体とその所有物件は、インドネシア国民が完済した後、どのような条件が整ったらインドネシア国民の所有物になり、国民の管理下に置かれるのでしょうか?曖昧模糊としています。

 

3、 インドネシア側に財政負担が発生しないで中国側が資金面で要求に応じるやり方は、IMFが公表する外貨準備高に中央銀行間の通貨交換(スワップ)協定額の参入を認めているので、これを利用した新たな金融の仕組みと思われます。IMFが認める外貨準備資産の構成通貨に中国元が間もなく入ることを見越して、中国政府は中国元による国際取引増の実績つくりを狙って、既に、20以上の国と通貨交換協定を締結し、その協定額を韓国、マレーシア、インドネシア、英国等は、外貨準備高の通貨に組み込んでいます。自国の通貨を他国の通貨と交換協定を締結すれば、その数字が外貨準備に組み込まれるとは欺瞞そのものですが、IMFは何故かこれを許容しています。

(日本の財務省はIMF に対し、是の外貨準備への参入を認めるべきでないことを、厳IMF に申し入れるべきです。)

通貨交換協定は、中央銀行間において一時的に発生した短期間の外貨準備不足を補うために予め設けられたものであって、協定期間は一年間であり毎年更新するものです。

この協定を背景に、長期金融を要する高速鉄道を建設するのですから全く無茶苦茶です。

例えば、インドネシア中銀が中国中銀に人民元と交換して渡した巨額のルピアが、中国の在インドネシア中国銀行から中国系企業に貸し出された場合、インドネシア国内の経済は相当な混乱を招きます。あるいは、通貨交換の期限が到来して、返金すべき人民元が国際市場で調達できず、中国からしか調達できないでいるインドネシア中銀が債務履行義務が果たせない事態発生した場合に、独立を揺るがし中国の属国となるような要求が中国側から出されるかも知れず全く予測がつきません。中国はそのくらいのことはやりかねない国家です。しかもインドネシアと中国間で行っていることに客観性が無いので、世界中が傍観者になるだけです。国際司法裁判所も機能しないと思われます。

以上