「公務員が国民の奉仕者から内閣総理大臣の従属者に変わる国家公務員法改正」 | 日本世論の会 本部

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平成23年3月29日

最高裁判所長官        竹崎 博允 殿

衆議院議長          横路 孝弘 殿

参議院議長          西岡 武夫 殿

総務大臣           片山 善博 殿        

写」文科省初等中等教育局長  山中 伸一 殿

写」外務省総合政策局長   鶴岡 公二 殿

写」東京都教育委員会委員長  木村 孟  殿

写」神奈川県教育委員会委員長 平出 彦仁 殿

写」横浜市教育委員会委員長  今田 忠彦 殿



横浜の教育を考える会 代表 湯澤甲雄

横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222



「公務員が国民の奉仕者から内閣総理大臣の従属者に変わる国家公務員法改正」

について(意見)  



(まえがき)

 現在衆議院に「国家公務員法等の一部を改正する法律案」「幹部国家公務員法案」という、従来の国家公務員法を大改革する法案が上程されています。簡単に要約すると、憲法第1条(天皇の象徴的地位、国民主権)に対する奉仕者である内閣総理大臣以下の公務員を、統治者と自認し政治主導を唱える内閣総理大臣に対する奉仕者と定め従わせて、総理大臣が主観的に判断した国民のための政治を行う政治体制に改めるものであります。即ち、現行憲法が普遍の原理とした自由民主主義の国家を、国会の特別決議を経ることなく、国家公務員法の手直しのみで現行憲法の換骨奪胎をはかり、中国やシンガポールのような官僚国家への革命を意図したものであると判断します。

 連合国軍政当局者とわが国政府当局者の両マルキストが、軍政下のどさくさに紛れて巧みに仕掛けた罠を振り返りつつ、今回の革命行動を失敗に導き、自由民主主義政治体制復活の道筋をつけるべく、ここに敢えて以下の私見を述べさせていただきます。

1、最高裁判所による憲法違反の判決

 公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、教育公務員特例法第18条に 

 次の規定があります。

 「1、公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、地方公務員

    法第36条 の規定にかかわらず、国家公務員の例による。

  2、前項の規定は、政治的行為の制限に違反した者の処罰につき国家公務員法(昭

    和22年法律第120号)第110条第1項 の例による趣旨を含むものと解しては

    ならない。」

 国家公務員と公立学校の教育公務員とは、同じ犯罪にもかかわらず憲法第14条(法

 の下の平等)が適用されず、後者に対してだけは、刑事罰が免れるとした最高裁判所

 が示した判決理由は、「両者の径庭の差」という意味不明、問答無用の言葉だけであ

 りました。

 政治的行為の制限の中には、「公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持

 し又はこれに反対すること」(注1)、「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策

 を主張し又はこれに反対すること」(注2)、「国の機関又は公の機関において決定し

 た政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む)の実施を妨害すること」(注

 3)等の諸権利が含まれます。これら国政の根幹を乱す行為は、重罪なるゆえに重い

刑事罰が科されているのですから、刑事罰適用なしとする判決は常識的にありえない

 のであります。要するに、最高裁判所の判決は、国家公務員と教育公務員の間に、二

 重基準を当てはめる憲法違反でありました。昭和21年成立したわが国の自由民主主

 義政治体制は、これを嚆矢として昭和22年からから崩れていくのであります。

2,人事院による憲法違反の行政措置

 最高裁判決によって刑事罰対象の政治的行為が刑事罰を免れることになったことに

 伴い、行政罰の対象からも免れるために、政治的行為の制限を科した法律即、人事院

 規則14-7の形骸化が昭和24年10月21日人事院事務総長通知文部事務次官宛によっ

 て行われたのであります。教育公務員の政治的行為の制限違反は、制限違反に該当し

 ないという二重基準の通知が人事院によって仕掛けられたのであります。

 人事院の行為は、国会審議先行・民主主義政治制度の法治主義を無視して、国会審議

 を経ずして正に行政先行のファシズム政治の口火が点いたのであります。

 平成16年3月5日、この人事院事務総長通知は国会審議を経ずに(根拠法規無)通

 達に切り替えられ法的強制力を帯びた形に改められて、しかも全事務次官宛発送され

 たことにより、国家公務員全体の政治的行為の制限が無くなり、おのずから刑事罰適

 用不能となり、民主主義政治から官主主義政治・ファシズム政治が一気に狼煙の如く

 広がる礎がつくられました。この間公安当局の機能無力化は、巧妙且執拗に続けられ

 ました。人事院規則14-7、4号において、政治的行為の制限は職員が勤務時間外に

 おいて行う場合においても、適用されるとされています。しかしながら、人事院事務

 総長通達により国家公務員が認められた政治的権利に次のようなものでありました。

 上記(注記)に沿って述べます。

 (注1)「候補者」とは、法令の規定に基づく正式の立候補届出又は推薦届出により、 

     候補者としての地位を有するに至った者をいう。候補者としての地位を有す

     るに至らない者を支持し又はこれに反対することは含まれないと規定して

     います。国家公務員にも公選の事前運動をする権利を認めたのであります。

 (注2)日本国憲法に定められた民主主義政治の根本原則を変更しようとするもので

     無い限り、本制限に該当しないとして、政治的行為を認めたのであります。

 (注3)「実施を妨害する」とは、その方法を問わず有形無形の威力をもって組織的

     計画的又は継続的にその政策の目的の達成を妨げることをいうとして、行政

     (警察)当局の制限発動を難しくする立場に追い込んだのであります。

  人事院事務総長通達は、憲法が認めるところでない公務員の権利を認めるという憲

  法15条の規定の形骸化を狙った極めて悪質な越権行為であり、憲法98条によりそ

  の効力を有しないとする閣議決定乃至は国会議決があってしかるべきであります。

  今回の国家公務員法改正案が国会を通過した暁は、政権政党を支持するためにあか

  らさまに国家予算をつぎ込んで公務員が行う政治活動は合法となります。逆に、こ

  の活動に反対することは非合法となります。

3、国家公務員法第1条3項、何人の政治的行為扇動行為禁止規定の形骸化

  国家公務員並びに教育公務員の政治的行為の制限規定が形骸化されたことにより、

  平成16年3月以前は教職員団体の、それ以降は全ての職員団体、同和団体、中国

  人団体、韓国居留民団、NPO法人等を含む何人による、職員に対する政治的行為の

  扇動を禁じた国家公務員法第1条3項の規定も形骸化されて、逆に政治的行為に対

  する権利が生じて、保護される立場になりました。職員に対する政治的行為の扇動

 に反対する団体の行動が、警察当局によって抑制されることに逆転したのでありま

  す。又、何人も、主たる事業目的が公益認定をうければ、課税上の優遇を受けなが

  ら政治的行為が行っていられることになりつつあります。

  職員団体の本部役員(その大部分の者は、定年に至るまで公給をもらっている)は

巨大な職員組合組織の頂点にたって、憲法規定の施行を妨げる政治的行為を指揮・

  指令する事実上憲法の効力の外にある政治機関となって、日本国、日本国民の上に

君臨する存在となっています。近時、行政府の政治主導の掛け声と共に、司法府、

  立法府の地位の低下が目立ち、国民、司法府、立法府、地方自治等は萎縮して、何

  人と一体化した行政府の勢いに支配されつつあります。

  憲法第1条(天皇の象徴的地位、国民主権)を礎におき、憲法が普遍の原理とする

  自由民主主義政治の復活を願う憂国の人士は、初心にかえって憲法と国際人権条約

  の真意を帯して、国家公務員法の原文を深化させた行政を復活させるところからは

  じめるべきであると思料します。

4、総務省による国家公務員法合憲化のための改正措置

  国家公務員法改正案は、国会特別決議を経るべき法案であり、普通決議によって国

  会を通過させることはできない法案であると理解します。(第1点)

  自由民主主義憲法に則した国家公務員法の施行に責任を有する総務省は、最高裁と

  人事院による憲法規定を形骸化させた判決あるいは通達によって変形させられた国

  家公務員法の条規を、正常に戻す職務責任を憲法と国民に対して負っています。

  そのために総務省は国会の護憲勢力と連携して、二つの国会決議を求めるべきであ

  ります。

  第1の国会決議、教育公務員特例法の一部を改正する法律案、(第2点)
          第18条第1項中「当分の間」を削り、同条第2項を次のように改

                  める。

              2項、前項の規定によりその例によることとされる国

                 家公務員法第102条第1項に規定する政治的行

                  為の制限に違反した者は3年以下の懲役又は百

                  万円以下の罰金に処する。

  第2の国会決議、国家公務員法の一部を改正する法律案、(第3点)

          第111条中「第18号及び第20号」を削り、「第18号から第20

                号まで」に改める。

このような国会決議を求める以前に総務省は、昭和26年5月15日地自公発第210

号公務員課長回答福岡県総務部長宛「地方公務員法に対する疑義について」の取消

し通達を発する必要があります。即ち学校教職員組合規約の目的に「教育行政及び

学校の民主化に関すること」「教育内容の民主化に関すること」とあり、何れも地

公法第52条にいう職員団体の組織の趣旨に違反するものと解され、職員団体とし

て登録しがたいと解されるが如何、という問い合わせに対し出された回答の取り消

しです。

   <回答>「職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する」が有り

        さえすれば、職員団体足り得るために十分なのであって、交渉目的以

        外に如何なる目的をどの程度に当該団体が有するかは、同法の関知す

        るところでない。

教職員団体の政治的行為を事業目的とする問い合わせであるから、この回答は、教

職員に対する政治的行為の扇動問題として、国家公務員法第1条3項を根拠とすべ

  きであって、回答の法律適用に明らかに誤りがあり訂正を要します。(第4点)

  この回答を根拠にして、教職員団体による教職員に対する憲法違反の政治的扇動行

  為が、全国的に華々しく行われているのであります。教職員が国民の奉仕者(教師)

  の立場を忘却して、政治的権利を有する労働者として振舞う拠所となっています。

総務省は、全公務員の憲法尊重擁護義務を全うするために、国家公務員法の運用を

合憲化する措置として述べた上記4点に、先ず粛々と取組むべきであります。以上