オルタナより

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200108-00010000-alterna-soci&p=1

 

 

 

1/8(水) 7:05配信

 

 

 

米国の食糧・農業研究財団(FFAR)によると、殺処分される雄ヒヨコの数は世界全体で毎年約60億羽にも上る。採卵用の鶏の雄は、卵を産まず、食用にも適さないことから、性別鑑定直後にグラインダー(破砕機)などで処分される。動物を人道的に扱う「アニマルウェルフェア(動物福祉)」が広まるなかで、こうした処分方法を批判する声が高まっている。(オルタナ編集部=吉田広子、多田野豪)

アニマルウェルフェアは、一般的に「動物福祉」と訳され、「人が動物を利用する上で、動物の幸せ・人道的扱いを『科学的』に実現するもので、動物本来の生態・欲求・行動を尊重する」という考え方だ。

1965年に英国で提唱された「5つの自由」は世界で採用されている。

◆ 動物の適正な扱いの基本原則「5つの自由」
1.飢餓と渇きからの自由
2.苦痛、傷害又は疾病からの自由
3.恐怖及び苦悩からの自由
4.不快さからの自由
5.正常な行動ができる自由

 

 

世界で年60億羽の雄ヒヨコ処分、生きたまま粉砕も

バタリーケージで飼育されている採卵鶏。羽を広げることもできない

 

■世界で禁止される「ケージ」飼い


アニマルウェルフェアは、化粧品などの動物実験、ウールのミュールシングなど動物に関係する産業すべてにかかわる。なかでも、世界の家畜数(牛、豚、鶏)は764億頭にも上り(国連食糧農業機関、2017年)、畜産業、食品メーカー、小売りなどが果たすべき責任は大きい。もちろんそれを支える消費者の意識も重要だ。

 

例えば、卵に関して、日本人は1人あたり年間約330個を消費している。日本では約1.3億羽の採卵鶏が飼養されているが、そのうち9割が「バタリーケージ」で飼育されているという。

 

世界で年60億羽の雄ヒヨコ処分、生きたまま粉砕も

放し飼いされている採卵鶏。羽や皮膚についた汚れや寄生虫を落とすために砂浴びする

 

バタリーケージとは、養鶏場の飼養システムの一つで、ワイヤーでできた金網に鶏を複数羽入れ、それを段状に重ねたり、身動きの取れない狭いケージに1羽ずつ入れたりする。ケージに入れられた鶏は羽を伸ばそうとして骨折したり、伸びた爪が金網に引っかかって足を骨折したりするなど、外傷が多い。

鶏は隠れて卵を産む習性があるため、隠れ場所のないバタリーケージでの産卵は強いストレスにもなる。

 

アニマルウェルフェアの観点からEUやスイス、米国の6州、インドなどはすでにバタリーケージを禁止。世界ではネスレスタバなど1700社以上が「平飼い」「放し飼い」といったより良い飼育環境で育った卵を調達しようと、「ケージフリー」を宣言した。

 

 

世界で年60億羽の雄ヒヨコ処分、生きたまま粉砕も

ベルトコンベアーに載せられグラインダーで処分される雄ヒヨコ(Animal equalityの動画から)

 

 

■スイス政府、生きたままの裁断を禁止
採卵養鶏業のさらに手前の段階として、雄ヒヨコの処分方法が問題視されている。卵を産まない雄ヒヨコは性別鑑定後、そのまま殺処分される。採卵用の鶏(採卵鶏)と、肉用に飼育される鶏(肉用鶏)は品種が異なり、雄ヒヨコを育てても食用には適さないからだ。

 

動物保護団体Animals now(イスラエル)、L214 (フランス)、Animal equality(本部・米カリフォルニア州)は、雄ヒヨコ処分の実態を告発する動画をそれぞれユーチューブで公開。生まれたばかりの雄ヒヨコがベルトコンベアーに載せられ、生きたままグラインダーにかけられたり、袋に詰め込まれて窒息死したりする様子が記録されている。処分後はほかの動物の飼料などになる。
 

 

そうしたなかで、アニマルウェルフェア先進国であるスイスは「雄ヒヨコを生きたまま(シュレッダーなどで)裁断して殺処分すること」を禁じ、二酸化炭素ガスを使用した殺処分を義務付けた。動物保護に関する改正法が2020年1月に施行されている。

ドイツの科学者などは孵化する前の卵の状態で性別鑑定する方法を開発。殺処分を防ぐ方法として期待が高まっているが、実際の運用はまだごく一部に限られている。

日本でも、年間約1億羽の採卵鶏の雌が出荷されており、同じ確率で生まれてくるとすると、雄のヒヨコは年間約1億羽生まれ、処分されていることになる。

認定NPO法人アニマルライツセンター(東京・渋谷)によると、日本でも雄ヒヨコが生きたままゴミ箱に入れられて窒息死したり、外に放置され暑さや寒さで死んだり、コンテナで圧死したりしているという。

 

 

同団体は「海外では雄ヒヨコの殺処分という行為を廃止しようとする動きが顕著だが、日本ではこの問題について、議論さえ始まっていない」と指摘する。

欧州をはじめ、世界ではアニマルウェルフェアに関する法制化が進み、代替手段も確立されてきた。EUでは卵一つひとつに、生産地や生産方法などを印字し、消費者はアニマルウェルフェアに配慮された卵かどうかを確認して購入することができる。

この流れはいずれ日本にもやってくる。まずは実態を知り、アニマルウェルフェアに関するポリシーを持ち、公表していくことが企業には求められる。同時に消費者も企業努力を支持する、あるいは支持しないといった明確な意志の表明が必要だ。


◆参考動画
・Animals now(イスラエル)
https://www.youtube.com/watch?v=SIfNhf2TWFA

・L214 (フランス)
https://www.l214.com/enquetes/broyage-poussins/

・Animal equality(本部・米カリフォルニア州)
https://www.youtube.com/watch?v=x2y3vLwrF6s

※本稿は、オルタナ59号(12月17日発売)の特集「アニマルウェルフェア(動物福祉)のリスクと機会」から一部抜粋し、再編集したものです。詳細は本誌をご覧ください

 

 

転載以上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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