「少年ゾンビ高橋。#4」
冗談だろうと思いながら巡査は消臭剤と防腐剤を手渡した、いつから放置されていたのかさえ分からない、ラベルは色褪せ、埃が白く積もっている。
「体に悪いと思うよ……」
ムダだと思っていながら、一応、注意だけはしておく。
曲がりなりにも彼は警察官なのである。
「そんなの分かってるから」
意に介さぬ様子で高橋くんは喉を鳴らして一気に飲み干した。その姿はまるで部活動のあとの麦茶を飲む少年のようである。
……厄介なのに関わっちゃったなぁ……。
巡査は思う。なぜよりによってゾンビなどがこんな平和な村にいるのか。そもそもそんなものがほんとに存在するのか。
逡巡しても答えはない。あるはずがない。
「で。君はこれからどーするんだい?」
「どーするって言われてもね……」
その表情に困惑はない。諦観も達観もない。特殊な状況を受容するほど大人ではなさそうだが、少なくとも嘆いてはいない。
「まぁ……夢を持って生きてくよってワケにもいかないし。死んでるみたいだしね」
「君、親御さん……とかいないのかい?」
穏便に済ませられる事象なのかどうか分からないが、ともあれ交番に置いてゆくわけにもいかない。
「んー……。居ないんじゃない? そのあたり記憶にないけどね」
「そう……」
参ったなぁ、巡査はそう口にする。
「映画とかなら……うん、研究施設とかに保護してもらうところなんだけど……ググッても出てこないだろうなぁ……」
「おまわりさん、現実を見なよ。そんなのあるわけないじゃん」
「けど、ここにいられても困るんだよ……交番はゾンビ少年の宿泊所じゃないんだから」
高橋くんと巡査は同時に腕を組み、そして溜息をもらす。
「行き先が決まるまでこの町で静かに暮らしてくよ」
高橋くんは身寄りのない孤独な老人のように答えた。
<なんとなく続いてしまうらしい……>
個人的に忙しい状況で更新が変則的になりそうなので、コメント欄を閉じることが増えそうです。ご了承くださいやで。
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⇒少年ゾンビ高橋。
⇒少年ゾンビ高橋。 #2
⇒少年ゾンビ高橋。#3
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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた





