荒野に隻眼
羊たちを連れて、嵐が肌を削り取ってしまった大地を歩く。空をあおいで、陽の光に目を細めた。
そう、まだ続く。だからこそ歩き続ける。意味は問わない、問いたところで誰も答えなど持たない。やがては終わる、だが、いまは終われないし、それは見えない。
天空の雲は太陽を囲み、ランプシェードのように形を変え、カーテンのようになびく。草木すらない不毛地帯だ、過去に歩かれた痕跡さえ見当たらない。
片眼を殺された、その視界に広がるのは終末さえ過ぎた世界、踏み込むたびに沈む土は黒く、腐食は脚を握りこもうとしがみつく。
一歩たりとも休む間はない、方向すら意味をなさなくなった最期は聞き覚えのある海を探しにゆくだけのためなのか。
もしかすれば根源ともいう水の在りかへ自らを還元するためなのか。
「君は何処へでも行ける」
そのさきになにを望むか、僕は僕にそれを問う。意味などいらない、終着点にて拡がる風景、それを見てみたいと思う。
「神に殺された片目を取り返し、飼い慣らされた羊であった自分に再び巡り合う、それから……羊におやすみを言おう」
風がまたも僕のかぶる外套をあおる、睨む先の視界を塞ぐ。
荒野の向こうに何がある?
熱さえ感じなくなった、閉じた片目が脈を打つ。
さぁ、神を飼い慣らしにゆこう。