カラスの白い羽根
雪が降ってきたのかと思った、だけそれはひとひらだけだった。煤だらけの空を舞ったそれは渡りガラスの羽根だった。
「もとは白い羽根だったんだ、いまや見る影もないだろうけどさ」
羽根は僕に語りかける。喉が渇き、ひび割れたような声だった。
「知ってるか、空を見てきたイキモノはオマエらニンゲンなんて虫みたいに思ってるぜ?」
そうか、そうかもしれない。だけど、どう見ようともカンケイないさ、僕はそう答える。
「なかなか物分かりがいい、あんたはニンゲンになる前はイヌかネコか、そのあたりだったろう。どちらにしても地を這い回ってただけだ」
ミジメなもんだ、改めてそう思う。
「次はせめてサカナにでもなるがいいさ、青のなかを飛べるには飛べるからさ」
羽根は嘲笑する、僕だけではなく、地を生きるすべてをあざける。
「次はどこへゆく?」
僕は羽根に尋ねた、手を離すとすぐにでも飛び立ちそうだった、羽根は鳥の一部としてでなく、単独のイキモノとして存在する。
どこにも行きやしないよ、此処に居続けられないだけさ、羽根は震えながら答えた。
「それはそれで慌ただしく思えるな……。次はヒトにでもなるか?」
転生なんて都合の良いものはありゃしねぇけど。でも、ニンゲンだけはゴメンだな。
「なぜそう思う?」
言い訳と負け惜しみばかり考えてなきゃならないだろう?
このままずっと好きなように飛び回ってるのが性に合うんだ、カラスの意思に従わなくて済むしね。
「そうか、じゃあまたな」
また、なんてないよ。じゃあな、だけだ。それだけ告げて羽根は飛び去った。
あとには何も残らず、空は灰色がかって見えた。明日には雪になる、それを避けるように南へ飛んでゆく群れが鳥だった。
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⇒“light”
⇒ロミオの心臓
⇒“boys life”
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