名前持たない小さな翼、いつか付くはず、その名を天使は待ってる、神はいつも気まぐれながら使い達の名前を思う、
名前がないとヒトの世界に行ってはならない、それが神の世界のルール、
名前がない幼子たちは天使になる前、その存在はほとんど意味さえ持たないらしい、
正しい名前を持たない見習い達は、それぞれ好きな仮名で呼び合う、
ディタ、肩甲骨が背中の皮膚を突き破って白い羽根が生えはじめた、そのときディタを名乗ることにして、
名前を持つ酒飲みブーザは腹を揺すって誇らしげにヒト世界の話をしてる、赤いワインを樽ごと抱えて酩酊ながら愚かしさを嘲笑う、
“ヒトの生きる下界なんて酷いもんだね”
隅でそれを聞いていた、ディタは柔らか翼を広げ、ヒトの世界に降りていく、“痛みを知る前、僕らだってヒトだった”
暗がりに翻る、純白の翼ゆく、夜の空は黒いと決めたのは誰、ダークブルーをゆらり降りてゆく、
小さな窓、物憂げながら星を見上げる女の子、ディタは思わずその窓に舞い降りる、
“君は天使みたいに見える”
驚くでもなく少女はディタに呟いた、
“いつかきっとね、今はまだ違うけど”
翼に触れるその手があまりに熱くって、ディタは思わず少女の頬に触れてみた、初めて触れるヒトの体温、それはあまりに激しい熱で、禁忌を冒して見習い天使はその華奢な体に宿る痛みを吸い込んでゆく、
“ありがとう、体が君の羽根みたいに軽い”
少女はディタにくちづけた、冷たい肌に優しい熱が伝わって、
見習い天使、目を閉じキスの感触、何度も何度も
思い出す、
羽は1枚黒くなる、名前持たない天使が禁忌を冒した代償で、
見習いディタ、ヒトの“ありがとう”を聞きたくて、その力を行使する、
瞬く間に片翼は黒くなる、
“まだ半分あるから、きっと平気さ”
黒くなった翼は重い、高く飛び上がれない、もう天使にはなれなくて、そして天にも帰れない、
ゆくあて失くしたディタの居場所は教会の屋根、使い古され色褪せた十字にぽつり座って、もうわずかにしか動かない羽根を小さく折り畳む、
鉛を溶かしたような黒い羽、近づくヒトもいないくって、もうこの羽根じゃどこへも飛べない、
仲間の顔も忘れそうな自分が怖くて、
そして思い出す、初めて触れたヒトの温もり、あの少女のくちづけを、
“まだ少しなら飛べるよな”
ディタはひしゃげた翼を広げ、夜に紛れる黒い羽根、痛みながら羽ばたいた。
original text by Neco Chukuma……http://m.ameba.jp/m/blogTop.do?unm=tubuyaki-panda
rewrite by billy
to be next parallel.
thank you.