ねえ、君に欲しいものは何かって聞いたことがあるだろう?
なんて言ったんだっけ。
一晩だけ叶う魔法だったっけ、枯れないままの向日葵だっけ、それとも、メイプルシロップたっぷりの香ばしいトーストだったっけ。
きっと、どれも違うんだろうな。
君が口にしたのはもっとずっと大切な、冗談じゃ話せないよな言葉だったんだ、忘れてたようなふりをしてたんだ。
大切なことって、いつだって覚悟が必要で、弱虫が住む僕には返事ができなくて、君を黙らせてしまうばかり。
ねえ、僕らが生きるリアルの向こうに寒さに怯える人がいるって実感できるかい?
ねえ、僕らは何気なさを装って愚痴ったりするけれど、いま、この瞬間にも死んでしまう人っているんだよな。
だけど、生まれる命、咲き誇る花もある。
時々、がらにもなく想ったりするよ、生まれた意味だとか生きる理由だとかさ、答えのないことばかりをね。
分からないよ、僕が考えること、僕が導けることなんてたかがしれてる。
意味なんてないことばかりで笑ってる君が好きだって、いつも想うんだけれどね。
確かなものが欲しいって君は言って、応えられない僕は酷く惨めで、空っぽなんだって。
確かなものが欲しいって君に言われて、何が確かなのかさえ分からない邪気のなさで涙を流させたりしたんだよな。
愛って確かなものなのかなぁ、ルールって確かなものなのかなぁ、命って確かなものなのかなぁ。
きっと、確かなものは僕や君の胸のなかにそれぞれあって、抱き合って肌を合わせるときに一瞬だけ感じる言葉にならないものかもって、そんな言い方じゃ言い訳に聞こえるだろうけど、でも、たぶん、そうなんだよ。
何ひとつ約束を果たされないリアルを生きていて、いつも傷にまみれて血を滲ませているけれど、その傷と空気が触れる痺れは確かなものだよ。
僕と君、君と僕、僕らと僕ら以外の全部、分け隔てるのが確かなものかもってさぁ……。
だからそんな不確かな命を持つから、いつだって不安で確かなものが欲しいんだろう?
用意したいって、いつだって想ってるんだ、不完全だからこそ確かなものが一つくらいないと生きてるって感じられないから。
夏に萌え立つ緑があって、冬に色づく花があって、なんだか、それぞれ生きてるって想うよな。
ねえ、ありったけを言葉にして伝えるから、笑顔で聞いていてくれたら嬉しいな。
希望に満ちた世界が君とともにありますようにって、この先、たかがしれてる僕の命を使って、君に紡ぎ続けていたいって、朝昼夜、前後左右、ずっと願うから。
全てを使って、君が欲しがる言葉を用意するって誓うから。