気が狂いそうでまだ狂えないみたい、いっそ気が狂ってしまえば楽だって分かってるのに、何もかも失くした孤立の地平で千切れた雲を睨んでる。
伸びた影には傷痕、流れた血が続いてる。
あの娘の血だ、僕の血もある、他は誰だ。
茨の道か、いや、道ですらなかった地平の果てに踏み込んで意味もなく流して流させた血だ、先は断崖で終わりが爪先にかかってる。
運命に抗いきれなかった弱虫が泣いてるだけか。
ベルベット燕尾服着た死神が引き攣らせた笑顔を浮かべてる。
差し出すものは何もないから、好きなだけ持って行けばいい。できれば正気と理性を持ってってくれないか。
気が狂いそうなんだ。無力なんだ、小さいんだ、なあ、お前には何もないって教えてよ。汚れた血だ、洗いざらい吐き出させてよ。
あの娘に血を流させた。
あの娘に血を流させた。
歩いてきた跡に吹く風は錆びた鉄の臭い、悪魔になれば良かったのに、なれないのが僕だった。
孤立して、
孤独がそばにいて、
孤高を気取る虚栄心も失った、ただのゼロだ。
いっそこのまま気が狂ってしまえばいいのに、いまだ正気を保っているのは悪になれた証だろう。
お前の言葉なんて誰にも届かない、お前の言葉なんか誰も耳を貸さない、お前の紡ぐ詩なんて無意味で無価値で何一つ変える力がない。
想いで変えられぬ現実が、今、ここ、お前がいる場所だ。
死神が笑ってベルベット揺れた。
喪失の果て、泣くだけの愚者がいる。