思い出の花 -50ページ目

火の海


大海原に最後の夕陽が
静かに落ちた
船は闇に閉ざされ
波音しか聞こえぬ日
漂う船で独り想う日
この静かな闇が
本来あるべき姿だ
心は静かに波間を漂う

闇に小さな光が
無数に浮かんだ
船は星に包まれ
光っては消える灯
漂う船へ心伝える火
この光と闇が
本来あるべき姿だ
この世は闇に浮かぶ海蛍

僅かに光っては
闇に紛れ
一瞬だけ輝いては
闇に潜む
繰り返し流れる日
闇の彼方を独り想う日
この先 何処へ
行けばいいのだろう

大海原に最初の朝日が
静かに昇る
新しい日が生まれた
船の進路は開かれ
明日へと旅立つ日
誓いを胸に秘める火
この大きな海が
人生の歩む場所だ
行き先は―――
しばし風の吹くまま
流れてみるか

情熱


時は無情
昔 建てた碑に
しがみつく冷めた心
今更 何かに
燃える事も無く
しがらみの糸と
冷ややかな目で
編んだマフラーを首に巻き
老いた器に
魂を封印している

道筋は造られた
わざわざ藪の中を
歩く事もない
穏やかな景色を
足元だけ見詰めて歩き
双眼鏡は無用の長物

時は冷刻
一度たぎった炎は
いずれ灰となる定め
今更 火に
油を注ぐ事も無く
努力のレンガと
意志の繋ぎで
積み重ねた家に住み
温室に魂を安置する

ただ 情熱の火が
消えた訳では無い
灰の中で燻っているだけ

=補足=
冷刻《造語》:れいこく

親心

君が生まれて
僕の中にも
生まれたものが
あるんだ
それはね
生きる意味
君を育てるために
僕は生きるんだ
人はね
自分のために頑張れない
君のために
早く死んでられない
パパは頑張るからね

君が生まれて
僕の欲しいものが
全部そろった
それはね
一つだけの宝石
君を授かり
他に何も要らないんだ
人はね
全ての望みは叶わない
君が居れば
欲は生まれない
かけがえのない宝物を
貰ったから
君にはパパの人生を
あげるね