蚊母鳥園 -4ページ目

亀は意外と情け深い

●ペットショップでミドリ亀をみていたら、一匹ひっくり返っているやつがいた。

面白いのでじっと眺めていた。亀は鼻先を地面に押し当てて、足をばたつかせて必死に起き上がろうとするが、甲羅の重みで起き上がれない。見ているうちに可哀相になったので、店員を呼んで起こしてもらおうとおもった。

ところがそんな時、ひっくり返った他の亀のところへ別の亀がのそのそと歩いてきた。その亀はひっくり返った亀の側に止まった。何をするのだろうかと興味深くみていると、亀は仰向けの亀の顔の辺りに噛み付き、首を引いた。その時丁度、ひっくり返った亀が起き上がろうと首を伸ばしたので、すっと起き上がることが出来た。

亀の亀助けか。あれは何だったのだろう?

不気味な物語

トーマス・オーウェン, 加藤 尚宏
黒い玉

創元社の推理文庫(背表紙灰色)から出た新刊、トーマス・オーウェンという人の「黒い玉」なる作品集を買った。


オーウェンはべルギーの作家で、怪奇小説のほかには探偵小説も書いているらしい。

発売して書店で見かけるまでノーマークだったが、新刊の棚にあったのを見て、その変なタイトルと表紙に、思わずレジへ走ってしまった。


短い作品ばかりが収められている。まだあまり読んでいないが、気になっていた表題作の「黒い玉」と、「旅の男」という短篇を読んだ。以下感想へ移る。


●「黒い玉」

マックロクロスケのような、毛玉の不思議な生物に関する奇妙な話。おそらく表紙の絵は、これを描いたものだとおもう。

こういうわけの分からない怪物の話は好きである。黒い怪物は二層構造であり、中には人の顔をした白いものが入っていて、何故か黄楊の香りがする。人が来るとそそくさと逃げたりして愛らしい妖怪ではあるが、ラストは後味が悪い。怪物の存在よりも恐ろしいものが、何かは言えないがこの作品にはある。

最初人間の視点で本作を読んできた人は、今度は怪物の立場になって再読せざるを得なくなる。数回繰り返して読まれるべき作品である。


●「旅の男」

不可解。一応幽霊譚なのだろうか。

この作品では、幽霊が成長しているところが面白い。子供の時に死んだ少年が大人となって現れ、自分を殺した相手を殺害するという話である。

絵本百物語

●「絵本百物語」が届いた。

竹原 春泉
桃山人夜話―絵本百物語

画の解説の翻刻だけではなく、全文の活字書き下しがついていて良い。画と解説が別々にされているので、参照しにくいという欠点はあるが、シンプルで見やすいのは石燕の時と変わらない。ここまで来たら、次は何が文庫化されるのか楽しみである。

妖怪本

●妖怪の本を独断と偏見でまとめてみた。


鳥山 石燕
鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集

現在の漫画やアニメに登場する妖怪は、元を正せば鳥山石燕から影響を受けたものである。


竹原 春泉
桃山人夜話―絵本百物語

妖怪画と物語がセットになった江戸の百物語本。明日届くのが楽しみ。

杉本 好伸
稲生物怪録絵巻集成

「草迷宮」に登場する秋谷屋敷のモデルとなった話。

約一ヶ月に渡り、化け物から嫌がらせを受けた平太郎少年の、化物遭遇事件を絵巻にしたものが何本も伝わっているが、それを集成したのが本書である。

柴田 宵曲
妖異博物館
柴田 宵曲
続 妖異博物館

怪談をパターン別に分類し、それぞれに解説を施した本。上下巻に分かれている。

膨大な文献を漁った、著者ならではの作品となっている。内容の充実した類稀なる良書である。

上田 秋成, 高田 衛, 稲田 篤信
雨月物語

日本における怪異小説のはじまりのような本。

魔王となって天下を混乱させようという崇徳院の視点から平家の興亡史(平家物語の語る世界)を見た「白峰」、嫁を裏切った男を見舞う恐ろしい出来事を描いた「吉備津の釜」、寂れた寺に住む人食い鬼の話である「青頭巾」など、怖い話から不思議な話まで、全九篇が収録されている。どれも素晴らしすぎて好きなもの一つなど選べないが、強いてお薦めの一篇と言われれば「青頭巾」だろうか。拙訳もよろしく。


藤田 和日郎
うしおととら (1)

「稲生物怪録」の昔みたく、少年と妖怪は実に相性が良いということをあらわす作品。とにかく沢山の妖怪が登場する。

サトリの化け物が出る話が良い。ふとしたきっかけで、人間の子供の親代わりになったサトリの妖怪が、子供の眼を治すために人間の眼球を集める話。子供思いのサトリに同情しつつも、人間に対して脅威となる化け物を倒さねばならないという潮の葛藤を描いた、本作屈指の名エピソードである。潮の初めてついた嘘とは、何だったのだろうか。

地獄少女

●アニメの「地獄少女」がけっこう面白い。

アニプレックス
地獄少女 2

ほぼ毎日、夜中にアニマックスで放送されているが、ここ数日は毎日見ている。

多くが一話完結で、その内容は地獄少女こと閻魔あいが、依頼主の願いに応じて、特定の人物を地獄に送るというもの。少しデスノートっぽい。どっちが先なのかは知らない。

依頼の仕方がまた面白く、依頼主は深夜0時に「地獄通信」なるサイトへアクセスし、名前を送信する。閻魔あい他、古風で非現代的な登場人物に反して、ネット通信を使用しているのが不思議である。そして名前を送信すると閻魔あいが現れるが、この時赤い紐を結んだ藁人形が渡される。この時点ではまだ仮契約で、紐を解くことで、初めて契約が成立し、地獄へ行ってもらいたい相手を地獄送りにしてもらえる。ただし、相手を地獄に送れば依頼主も死後地獄へ行くことになるというリスクが課せられている。

個人的なツボは、閻魔あいとともに相手を地獄送りにする使い魔の存在。特徴や名前が、古典的な妖怪から取られている。例えば「輪入道」。普段は老人の姿だが、時折石燕デザインの車輪に顔がついた姿になって、乗り物の役割をする。或いは「骨女」「一目連」。一目連は、鳥山石燕の画にある「目目連」(障子に目がついている奴)とは異なる妖怪で、本来は風の神であるが、「地獄少女」の中では若い男の姿で描かれており、後頭部にでかい目玉を有する。この四人(?)が、必殺仕事人のように地獄送りの相手のところへ赴き、様々なシチュエーション(大抵は内容に即したもの)で相手を地獄送りにする。


今回はあることがきっかけでキチガイババアに犬二匹を犬質(?)に取られ、こき使われている少女の話だった。犬は二匹ともババアに殺されてしまうが、殺された犬種がコーギーでうちの犬と同じだっただけに、結構感情移入しながら見ていた。少女がもたもたしているので少しイライラしたし、犬が死ぬという結果が登場人物の言動や態度から明らかだったが、ラストではいつも通りの地獄流しが見られた。

今回はいつものように法で裁けない相手というわけではなく、最後ババアは自分の子供を殺した罪で警察に捕まる。それで少女は藁人形を使うことなく、地獄に落ちることもなく目出度し目出度しと思いきや、最後はどんでん返しが用意されている。結局、藁人形の赤い糸は解かれるのである。

まあ少女が地獄少女に依頼したのは、ババアが自分の子供を殺したことではなく、飼い犬を殺されたことに対してだから当然かも知れない(犬が殺されたって、現行の法律じゃ「殺したこと」ではなく、「壊したこと」でしか罪を課すことが出来ない。動物愛護法なんてものもあるにはあるが)。ラスト、使い魔の化けている警察官の顔がコーギー犬になっているのは笑えたが、内容自体はいつもながら、綺麗事の通じないシリアスな話であった。

ラストでは、すっかり気を違えて金の亡者と貸したババアの顔が、畜生のようになっていた。アニメでは、地獄に流された人のその後や、依頼主が地獄に落ちる場面は描かれないので、自分でさまざまに想像してみるのもまた楽しい。

イールのヴィーナス

●昨日紹介した「メリメ怪奇小説選」の中の一篇、「ヴィーナスの殺人」を読んだ。


内容は女神の銅像が人を殺すというもの。タイトルそのままである。

ヴィーナス像の指に結婚指輪をはめてしまったばかりに花婿がヴィーナスに魅入られてしまい、最後はその腕で絞め殺される。

怪奇小説だと思って読んでいたら、実はこれ、サスペンスにもなりうるのではないかと思った。物語のあとで金田一かホームズでも登場させれば、犯人などを推理してくれるのではないか。

話の語り手は作中の「私」であり、この人がイールの町で見てきたことが、そのまま作品として語られる。ところが、実は「私」自身は一回も怪奇現象を目撃していない。怪奇現象を語るのは、殺された花婿と、花婿がヴィーナスに殺害されるのを見ていた花嫁だけであり、「私」自身はヴィーナスの指輪をはめた手が握りこぶしを作ったところも、無機質なヴィーナス像が歩いているところも見ていない。怪奇を目撃した一方は死に、もう一方は気違い扱いされて信じてもらえない。

実は一度だけ怪異を体験する機会があったのだが、「私」自身がそれをふいにした。花婿が「私」に、指輪をはめた手を握ったヴィーナス像を見てきてくれと頼む場面である。「私」は信じようとはせず、結局像を確かめには行かなかった。ここでもし、メリメが語り手に怪奇を目撃させていたら、この話はそれほど面白くならなかったと思う。

つまり、この作品は、怪奇小説としても読めるし、犯人の分からないサスペンスとしても読むことが出来るのである。「最高の超自然に最高の真実らしさを与えることに成功した」(ヴァレリ・ラルボー)とは巧いことを云ったものである。


今まで物質に過ぎなかった像が、急に生物のように歩き回ったり、人間を絞め殺したりするという部分が怖いけれど何処か滑稽である。

復刊ラッシュ

●岩波から、「メリメ怪奇小説選」が復刊された。

メリメ, 杉 捷夫
メリメ怪奇小説選

本書はずーっと前、岩波へ「耳嚢」とともに復刊リクエストしたことがあるが、その願いが届いたのだろうか。或いはそろそろ復刊時だろうと岩波書店の人が判断したのだろうか。いずれにしても名著復刊となったのは嬉しい。

メリメは、鏡花や芥川が好きだったということを聞いて、読んでみたかった作家の一人だが、手に入る作品は「カルメン」くらいしかなかった。澁澤龍彦がしきりに褒めていた「イールのヴィーナス」という作品は、とりわけ読んでみたかったものの一つだが、今回復刊されたテキストにちゃんと入っている。ただし題名は「ビーナスの殺人」、となっている。じっくり読んでいきたい。



あと、角川文庫で桃山人の『絵本百物語』が出た。アメーバブログに移る前の去年の今頃、『画図百鬼夜行』が出たときに、私は「次は桃山人を出してもらいたい」というようなことをブログに書いたが、メリメ集同様またしても願いが叶った!

前回の『画図百鬼夜行』は、画と崩し字の書き下しのみが載っている非常にシンプルな本だった。しかし、大きな国書版と違ってすぐに取り出して参照することが出来るので、とても便利で読みやすい(画に付された変な枠が違和感大だったが・・・)。解説がないので、妖怪の特徴を理解するには他の文献に当たらねばならないが、暇なときに画を眺めるにはとても都合の良い一冊である。


さてこの本、『画図百鬼夜行』が妖怪画と簡単な解説だけにとどまっているのに対して、物語も付されているのが特徴である。しかも画もカラーなので、妖怪達の特徴がよりはっきりとしている。角川のサイトを見ると、妖怪画、翻刻、現代語訳がついているという。

京極夏彦の「巷説百物語」シリーズのファンならば分かると思うが、このシリーズで各話のモチーフにされているのが、何を隠そうこの「絵本百物語」の妖怪達である。

京極 夏彦
巷説百物語

また、水木しげるもこの本から多くの妖怪を「ゲゲゲの鬼太郎」に出演させているので、意外にそのデザインは広く知られていることだろうと思う。たとえば「小豆洗い、お歯黒べったり」という妖怪名を出して、あなたがその姿かたちを思い浮かべることが出来るのであれば、それと殆ど同じ画が本書に載っているはずだから確認してみると良い。



今日広告が出ていたのでもう発売かと思って本屋へいったら、まだなかった。まあ気長に待つとするか。

竹原 春泉
桃山人夜話―絵本百物語

著作権?

●今日の新聞のトップにでかでかと、著作権保護期間延長の記事が出ていた。

我が国では、普通著作権保護期間は50年なのだが、これを米国流に70年に延ばすという動きがあるとのこと。映画のみならず、小説や音楽などにも適用されるとのこと。関係14団体の意見が一致したとのこと・・・


或る作品を作り、商業でも非商業でも一般に公開している者にとって、著作権の問題は避けて通れないことである。

何人も、自分の作ったものに対しては著作権があるし、他人の著作権を侵害してはならない。最近和田・模写・画伯の盗作問題があったが、著作権に対する認識の甘い人が第一線で活躍しているのは問題だろう(もっとも、あの事件は和田さんの絵を藝術選奨文部科学大臣賞なんかに選んでしまった方もどうかしていると思う)。おそらく、著作権なんか無視されたっていいんだ!という人は今の時代いないと思う。


さて、今回の著作権期間延長論も良いことじゃないか、と新聞の見出しを見ただけならば思うが、そんなに伸ばす必要が果たしてあるのか?という疑問はある。

新聞では、「欧米が70年なんだからうちも70年にしないと問題」とか、「欧米の作品が、保護期間50年のうちの国では無断で翻訳されてしまうおそれがある」などをその理由として挙げているが、どれも20年延長を急がねばならないという理由としては、聊か弱い気がする。

何より、著作権を持つ当事者とは別のところで、この議論が進んでいるような気がしてならない。著作権保護は大切だが、だからといって著作権保護のためなら何でも許されるということではない。


日本文化の発展を考えたとき、果たしてこの20年延長はそれに貢献し得るのか、よくよく考えてから決めていただきたいものである。

綺堂片手に夏の宵

●岡本綺堂「鷲」を読む。

岡本 綺堂
鷲 新装版

綺堂の「半七捕物帖」を出している光文社から、文庫で三冊の綺堂怪談集が出ている(中国怪奇小説集を含めば四冊か)。それが近頃装いを新たにして再刊された。


この「鷲」という作品集は、長らく入手困難だっただけに、今回の刊行は嬉しい。読んだものも数多いが、本書には未読の表題作や、あの「くろん坊」が収録されているので、これは買いである。

古い怪談話から題材を得ているのに、綺堂の怪談というのは古臭さを全く感じない。出来れば綺堂作品は旧仮名で読みたいものだが、新仮名でも殆ど違和感が感じられないのは、私が新仮名に慣れている以外には、綺堂作品の時間に対する普遍性があるからであろう。


■収録作品



鰻に呪われた男

怪獣

深見夫人の死

雪女

マレー俳優の死

麻畑の一夜

経帷子の秘密

くろん坊



●「鷲」

鉄砲打ちの話。昔は江戸でも鷲のような鳥が見られたらしいが、この鷲を撃とうとした鉄砲方が、恐ろしい目に遭う。

他の作品ほど面白いわけではないが、夜空を舞う鷲というのは、考えてみれば非現実的であり、少し不気味である。


●「兜」

被ると何者かに斬り付けられてしまう兜の話。舞台が江戸から、震災後の東京にまで及ぶ壮大な怪談ばなし。

何故兜を身につけると襲われるのか、兜の影に付き纏う眼の下に痣のある女は何者なのか、読むに連れて疑問は湧くが、実際にそれが読者に語られることはない。

過去の事実という形で断片を見せられ、真実を想像する以外にないのである。語り手の怪談とは無関係そうな語りぶりが、却って何か隠していそうで怖い。


●「鰻に呪われた男」

巻末の解説を読んでしったが、綺堂は鰻が大好物だったらしい。「魚妖」とか本作とかで散々恐怖を煽っておきながら、反面そ知らぬ顔で鰻をぱく付く綺堂の方がよっぽど怖い。

本作を読み終えたのはこれで三度目だが、よく分からないはなしである。語り手の推理したように、ここで起こったことは全て現実的に解釈できるのかも知れないが・・・


●「くろん坊」

山人「くろん坊」にまつわる怪談。妖怪と人間はかつて、かくも密接な関係にあったのかと思わせる。

冒頭のおどろおどろしい雰囲気を抜けると、「となりのトトロ」のようにほのぼのとした、人間とくろん坊の関係が描かれる。人間はくろん坊に餌をやるし、くろん坊は人間の仕事を手伝う。くろん坊は妖怪というよりは、オラン・ペンデクやヒバゴンのような未知の類人猿らしく描かれており、その証拠に物理的攻撃を加えられれば死ぬし、死ななければ人間に祟ることさえ出来ない。

されど流石は綺堂、歯車を少しずつずらしていって、怪奇な物語にしてゆく。男の口にした冗談が引き金となり、くろん坊と男の一家の運命が狂ってゆく。

崖の樹に引っかかったくろん坊のしゃれこうべが夜な夜なカタカタと笑う場面は勿論怖い。さりながらこの怪談の本当の恐ろしさとは、話の通じない相手がすぐ隣に居ることだと思う。


岡本 綺堂
白髪鬼 新装版

綺堂怪談の怖さは、怪異の本体が何であるのか分からないところにある。


●収録作

こま犬

水鬼

停車場の少女

木曽の旅人

西瓜

鴛鴦鏡

鐘ヶ淵

指輪一つ

白髪鬼

離魂病

海亀

百物語

妖婆



http://ameblo.jp/night-falls/entry-10010752199.html


岡本 綺堂
影を踏まれた女 新装版 怪談コレクション

読んだことのある作品が大半なので、この本は持っていない。


●収録作

青蛙神

利根の渡

兄妹の魂

猿の眼

蛇精

清水の井

窯変

一本足の女

黄いろい紙

笛塚

龍馬の池

異妖編

月の夜がたり

影を踏まれた女

岡本 綺堂, 日下 三蔵
怪奇探偵小説傑作選〈1〉岡本綺堂集―青蛙堂鬼談

●収録作

青蛙神

利根の渡

兄妹の魂

猿の眼

蛇精

清水の井

窯変

一本足の女

黄いろい紙

笛塚

竜馬の池


木曽の旅人

水鬼

鰻に呪われた男

蛔虫

河鹿

麻畑の一夜

経帷子の秘密

慈悲心鳥

鴛鴦鏡

月の夜がたり

西瓜

影を踏まれた女

白髪鬼


綺堂怪談の面白さを知ることが出来たのはこの本のおかげである。

「青蛙堂鬼談」を完全収録、ほかに沢山の話を読むことが出来るので、初めての向きには一番お薦め。



岡本 綺堂
世界怪談名作集〈上〉
岡本 綺堂
世界怪談名作集〈下〉

これは翻訳。


●収録作

貸家(リットン)

スペードの女王(プーシキン)

妖物(ビアス)

クラリモンド(ゴーチェ)

信号手(ディケンズ)

ヴィール夫人の亡霊(デフォー)

ラッパチーニの娘(ホーソーン)


北極星号の船長(ドイル)

廃宅(ホフマン)

聖餐祭(フランス)

幻の人力車(キプリング)

上床(クラウフォード)

ラザルス(アンドレーフ)

幽霊(モーパッサン)

鏡中の美女(マクドナルド)

幽霊の移転(ストックトン)

牡丹燈記(瞿宗吉)

泉鏡花

●先日、金沢市の鏡花記念館へいってきた。

http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/bunho/ikkinen/




兼六園、金沢城を中央に据える金沢市は、古い町並みもところどころに見え、美しい。浅野川、犀川といった二本の川が通っており、そこには犀星、秋声、鏡花といった、文豪の記念館も並ぶ。三人ともこの金沢から出た文人であり、今回はその中でも一番好きな、泉鏡花の記念館へ行った。
外はあいにくの雨で、とても観光という状況ではないが、浅野側を渡り、狭い小路を一寸進んだところに泉鏡花記念館の、古風な門は顔を覗かせていた(場所が分かりづらかった)。この場所に記念館があるのは偶々ではなく、ここは鏡花生家の跡地なのであった。
白昏い午前の背景の下、雨音に閉ざされた建物の門は、「お化け好き」泉鏡花の記念館らしく、たいそうな風情があった。

出迎えの鏡花父子像の前を通り過ぎ、展示物をみて出てきた。硯友社時代の尾崎紅葉との縁の品や、草迷宮、高野聖などの解説、それから鏡花の本を美しく彩った、鏑木清方の挿絵など、鏡花の作品を少しでも読んだことのある人には興味深いものばかりだった。意外にもこじんまりした内部だったが、みるものはそれなりにあった。映像作品やお芝居についての展示物がもっとあれば良かった、とは後で思ったことである。
鏡花は母親を早くに亡くした所為か、その作品には、常に鏡花の母の姿が投影されている。手毬歌の菖蒲も、山中の美しい魔女も、鎮守の森の女神も、鏡花の母の別の姿なのだろうか。

近くには「義血侠血」のヒロイン、滝の白糸こと水島友嬢の碑も建っている。こちらもちょっとだけみた。館内には鏡花ゆかりの土地のマップ(金沢市内)もあり、この滝の白糸を始めとして、様々な作品の舞台となった場所が紹介されている。あの不可解な「化鳥」もそういえば金沢が舞台だったのか、と思い、行ってみたかったが、この雨だから諦めざるを得なかった。

帰ってから「陽炎座」を読んだ。
死んだ女性を子ども芝居によってこの世へ呼ぶという幻想怪奇的な内容で、「ツィゴイネルワイゼン」の鈴木清順も映画化している作品である。あの映画の中で、夜叉が池は確か金沢市にあったと記憶するが、本当だろうか?福井の夜叉が池しか知らないが・・・。先日紹介した「ジャパン・アヴァンギャルド」の中で、唐十郎が金沢市内で夜叉ヶ池を探したが、結局見つからなかったというようなことを書いていたので、少し気になったのである。

泉 鏡花, 種村 季弘
泉鏡花集成〈6〉
陽炎座」を収録しているものでは、最も手に入りやすいテキスト。
幽霊ものの傑作「眉かくしの霊」も入っている。金沢でこの集成の3巻を買おうと思ったら、もう絶版だった。

泉 鏡花
草迷宮

これは本当に傑作。「草迷宮」というタイトルからして素晴らしい。

言葉遣いから作品世界、ラストの異形の存在に対する菖蒲の美しさ、秋谷悪左衛門のかっこよさ、全部好みである。



泉 鏡花
高野聖;眉かくしの霊

「高野聖」の方が「草迷宮」よりは有名かなあ。男達を動物に変えてしまう魔女の話。

お化け物ものだからといって毛嫌いするのは勿体無い。これぞ日本文学の頂点。


泉 鏡花, 種村 季弘
泉鏡花集成〈1〉

泉鏡花がお化け話ばかり書いていると知って、高校の時に始めて読んだ鏡花書。

結果は、怪奇な話がちっとも収録されていない上に、鏡花特有の古文っぽい文体に悪戦苦闘させられた、が、それでも何とか読了した。後の読書の為の良い経験となった。

義血侠血」を読むなら本書かな。これまた好きな「黒猫」という作品も収録されている。


泉 鏡花
夜叉ヶ池・天守物語

夜叉が池」はそれほどでもないが、「天守物語」は面白い。江戸の奇談随筆「茶話」に載っている会津の化け物(朱の盤、舌長姥など)が総登場するが、原作と違ってコミカルに描かれている。