ウィタカー氏はアシュトン教授の研究結果を引用している。
離脱症状が生じるリスクは、薬の服用期間や強度、減量速度に左右される。服用期間が1,2カ月など比較的短い患者の大半は、さほど苦労せず薬を止められるだろう。だが中には、服用期間がほんの2,3週間でも離脱症状を経験する人もいる。長期的に服用していた患者は、減量に1年以上かかることもある。さらに割合は少ないながら「長期的な離脱症候群」に陥る患者もおり、彼らはベンゾジアゼピンを中断した後、何カ月も不安が高じた状態が続く・・・
長期的ベンゾジアゼピン服用に関して
カナダの研究者は「ベンゾジアゼピン使用が抑うつ症状を4倍増大させることを発見した」
1976年 テネシー大学のデビッド・ノット医師は
「バリウム、リブリウム(クロルジアゼポキシド)およびその他の同クラスの薬剤は、脳にダメージを引き起こすと確信している」
その後25年に渡り、ベンゾジアゼピン長期使用者の認知障害に関する報告が繰り返し学術論文に登場した。
1983年 WHOは
「ベンゾジアゼピン長期使用者における身辺処理と社会的係わりの顕著な悪化」を指摘した。
ミシガン大学の研究者は
「ベンゾジアゼピン服用は生活の質の低下、仕事と私生活における生産性低下、社会的支援の低下、内的統制感の欠如、自覚的な健康低下、高度のストレスを伴う」と断定した。
2004年 オーストラリアの研究グループは
「ベンゾジアゼピン長期使用者は対照群と比べ、認知機能の全領域において一貫して機能低下が大きく、その障害の程度は中度から重度であり、ベンゾジアゼピンの摂取量、用量が多く、試用期間が長いほど、障害のリスクも高まる」と結論を下した。
各国の処方規制ガイドラインを調べてみた・・・
イギリス 医薬品安全性委員会
ベンゾジアゼピンは短期的な救済(2-4週間のみ)に適用される。ベンゾジアゼピンはうつを引き起こしたり、悪化させ、また自殺の危険性を高める。2-4週以上の処方について認可しない。
カナダ 保健省 薬物利用評価助言委員会勧告
ベンゾジアゼピンの長期処方にはリスクが存在する。
不安・不眠について適切な利用及び薬物依存を避けるために、新規処方は注意深く観察すべきであり、処方期間は限られるべきである(不安には1-4週、不眠には14日まで)。
ニュージーランド 保健省
最近では依存性のリスクが知られており4週間を超えた使用は有害である。
デンマーク 国立衛生委員会
ベンゾジアゼピンの処方は、睡眠薬では最大2週間、抗不安薬では最大4週間に制限することを推奨する。
保健省の依存性薬物処方ガイドライン: 全般性不安障害・パニック障害・不安障害の第一選択肢は抗うつ薬である。
依存性があるため、ベンゾジアゼピンの処方は非薬物療法などそれ以外全てで治療できない場合のみに限定されなければならない。
処方期間は4週間を目処にしなければならない。長期間の治療は避けなければならない。
アイルランド ベンゾジアゼピン委員会の報告書
ベンゾジアゼピンの処方は通常1ヶ月を超えるべきではない。
ノルウェー 国立衛生委員会
ベンゾジアゼピンの日常投与は4週間を超えてはならない。
スウェーデン 医薬品エージェンシー
薬物依存を引きこすため、不安の薬物療法にベンゾジアゼピンは避けるべきである。
薬物中毒の可能性があるためベンゾジアゼピンは数週間以上の治療には推奨されない。
日本はベンゾジアゼピン薬剤の「在庫処分」の場所になってしまったのか・・・
Nico
引用 : 「心の病の流行と精神科治療薬の真実」第7章