大学が異常になったのは、Y学部長の登場であると述べた。また、大学の決定機関は教授会であることも述べた。つまり、Y学部長が横暴になるには教授会を支配する必要があるのだ。なぜ、教授会を支配することが出来たのか。それを教授の側から見てみよう。

1 教員は総じて学部全体の問題や学内行政に関心がない。

教員の関心はさまざまな対象に向けられているが、多くの教員は、学内行政より研究や教育に関心が向いており、学内行政に関心を抱くのは一部の教員のみである。これは基本的には健全な姿勢だと思う。そこで権力欲や支配欲(表面には出さない)に執着する人間が出れば、あの人は熱心だから、学部の運営はあの人に任せようということになる。

 私自身役職に就く前は、学内行政についてはほとんど関心がなかった。なにか問題が起れば、意見は持つが、あくまでその場限りの意見であって、問題の本質まで考えた熟慮した意見ではなかった。やはり、関心は、教育・研究に向かっていた。教育・研究が大学教員の本質である以上、先生方が、学内行政に関心がないのはむしろ健全だともいえる。


あげく、学内政治や教授会に関心があるのは、二流の研究者と思われてしまう。こうした教授たちの無関心は、教授会を支配するには好都合な土壌といえる。


Y学部長の不可解な行動をいくつか上げてみよう。


大学院の院生募集に新聞の折り込み広告を使った。別に不思議と思わない人が多いと思うが、大学は折込広告は使わない。広範囲に募集するので広告できる地域がせいぜい1市にとどまるような折込広告では意味が無い。予備校とは違うのだ。


大学院の非常勤講師に女将を採用しようとした。女将だから大学の教員になれないなどという偏見は持っていない。だが、大学の教員は学問的な基礎がなければならないのは当然だ。その女将は学問的なキャリヤはなかった。ゲストとしてなら、大歓迎だが、オリンピックのメダリストだからといって、スポーツ以外の学問の教員になれないのと同じだ。


同じ時間に大学院の1年生と2年生を指導しろとも言い出した。大学院は専門の中の専門だから、学年が違えば内容がまったく違う。それが分かっていない。


上の例ではあまりピントこないかもしれないが、大学の本質にかかわる問題なのだ。しかし、これらの問題は問題としては些末である。これから書こうと思うのはもっと大きな問題である。

大学の異常はY学部長が就任した時から始まったと述べた。

大学の意思決定機関は教授会ではないかという人がいると思う。それなのになぜ1学部長が大学を異常にしたと疑問を持つだろう。

一般的にいえば私学の伝統校の場合には、制度的には理事会が教授会の上にある。しかし、事実上は理事会は教授会の決定を追認する形になるから、教授会が大学の最高の意思決定機関ということになる。この教授会を仕切るのが学部長である。

しかし、学部長は独裁者ではないから、学部長の意思が教授会を通らないことなどいくらでもある。ところが、私の学部ではこの当たり前のことができなくなった。一部の教授が学部長の奴隷のようになってしまい、教授会の運営を一方的に支配してしまったからだ。

例えば、学部長がある提案をする。一般の教員はその提案の資料を読むことになるが、それを詠み終わらないうちに、学部長取り巻きの教授が「賛成。賛成」と声をはりあげ、学部長は「ありがとうございました」といって、次の議題に移つてしまう。

質問をさせないのだ。

教育の最高機関でまさかと思うだろうが、事実である。

だから、学部の異常は学部長と一部の教授によって始まったといえる。

だが、まず学部長の異常さからのべよう。

今朝の新聞報道で大学就職内定率73,1%、前年に比べ7,4%ダウン、過去最低という記事が出た。

70%ならそれほど深刻ではないと思う学生や親がいるかも知れない。

しかし、これは楽観的な誤解だ。

全卒業生に対して70%なら、それほど深刻ではないかもしれない。実はそうではないのだ。

就職活動をしている学生の70%が就職できたということだ。就職を諦めた学生は分母に入っていない。就職活動を諦める学生は多いから、全卒業生に対する就職内定率をとると50%切るのではないか。

二人に一人しか就職できないという認識を学生も社会も持つべきだと思う。

大学の異常はY学部長が就任してから始まった。

 大学の教員なら誰でも経験しているように、教授会は議論の場というより居眠りの場といえる。ほとんどが、議論にならない議題だからだ。

例えば、ある日の教授会の議題は、


1 一般入学試験合否判定に関する件

2 退学に関する件

3 新入生歓迎会実施要項に関する件

4 新入生研修合宿実施要項に関する件

5 派遣交換留学生の等の単位認定に関する件

多少議論になるとすれば合否判定くらいで、あとは提案に異議がでるようなものではない。

 ところが、Y

株主総会で社員株主が前の席を占め株主総会を乗り切る姿がすぐに浮かんだ。通常大した議論もなく、発言もほとんどないような教授会に、敵対を前提とした株主総会のやり方が持ち込まれたのである。

教員の席は決まっていないから、いつも前の方に坐っていた教員は席を奪われ右往左往する羽目になった。

これが異常の始まりである。

学部長は、執行部のみならず自分の側近を前に座らせ、いわば自分の席を側近で囲ったのだった。自信のなさがそうさせたのかもしれないが、このやり方は異様だった。