古本ですが・・・良い入門ムック『図説ブッダの道』
前に仏教月刊誌『大法輪』のおススメ仏教書特集で取り上げられていた
ムック『図説ブッダの道』(学研マーケティング、08年)を読みました。
2年前の本なので、今さらですが・・・
もうアマゾンでも古本しか売ってませんが・・・
この手のムックはいい加減なのも多いなか、
この『図説ブッダの道』は、とても完成度が高かったです。
ちゃんと初期仏教に詳しい人たちが書いているようで、入門書としても親切。
図説ブッダの道―偉大なる覚者の足跡とインド仏教の原風景 (NEW SIGHT MOOK Books Esoterica エソテリ)
たとえば
・ブッダゆかりの土地のカラーグラビア
(ルンビニからヴァーラーナシー、サールナート、ラージャグリハ、
ヴァイシャーリまで、仏典によく出てくる場所の写真で、
ブッダの足跡を追う。私はこれが見たくて買いました)
・原始仏教の修行法
(戒律や、生活様式、タイムスケジュール、瞑想の実践法など)
・ブッダ8つの謎
(仏教メソポタミア起源説とか、ブッダ=老子説など、
えーっ!というような謎を解説。すごく面白かった)
・ジャータカダイジェスト
(ブッダの前世物語をダイジェスト版で。
中村元訳だと10冊もあって読む気が失せるジャータカの
概要を知るのに便利)
・インド仏教聖地辞典
などなど、かゆいところに手の届く内容です。
修行法の項を読んで、そろそろ瞑想でも始めるかなあ、と思いました。
一般に、仏教書を読んでいると、知識が教義ばかりに偏りがちですが、
やっぱり仏教は戒や瞑想あっての実践宗教。
頭でっかちになってはいかんな。
お釈迦さま、開き直る(阿含経典その14)「多くの娘」
いや、お釈迦さまが開き直ったかどうかわかりませんけども、
私がそう感じて微笑しただけなのですが・・・。
それは『阿含経典』増谷訳・第4巻、
「多くの娘」(相応部7、10「婆富提低」/雑阿含44,21「失牛」)というお経です。
パーラドヴァージャ姓のバラモンがいまして、
飼っていた牛が14頭も行方不明になって困っていました。
バラモンなのに、生活苦と世俗の苦労にまみれているんです。
で、お釈迦さまが安らかに瞑想しているのを見て、
「あんたは苦労知らずでいいよね」とばかりに、
詩歌で延々とグチをこぼすのです。
(増谷先生も「微苦笑を催す」というぐらいに。
四姓の一番上なのに、貧乏バラモンなんですね~)
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「この沙門には、14頭の牛を見失い、
今日まで6日のあいだ探しても
見つからぬようなことはないのだろう
だからこそ、この沙門は安楽なのだ」
「この沙門には、米倉が空っぽになって、
ねずみがしきりとその中で
跳ね回るなどということもないだろう
だからこそ、この沙門は安楽なのだ」
さらに、
娘が7人もいてみんな子供を抱えてるのに寡婦だ、とか
寝ているとシミだらけのババァがやってきて足で蹴飛ばす、とか
朝から借金取りが来て返せ返せと責め立てる、とか並べて、
「そういうことがないから、あんたは安楽なんだ」と
お釈迦さまに当てこすりを言うわけです。
それに対して、お釈迦さまがどう反論するか?
どんな巧みな比喩を使うのか?
ところが、お釈迦さまが使った手法は反論ではなくて
「完全なオウム返し」なのです。
「バラモンよ、私には、14頭の牛を見失い、
今日まで6日のあいだ探しても
見つからぬようなことはないのだ
だからバラモンよ、私は安楽なのだ」
というふうに、
すべてのグチをオウム返しにして、
「はい、私にはそういう苦労はないですよ。それが何か?」と。
現実でも似た場面はありえます。例えば、会社が潰れそうだとする。
それに対して「やるだけやって潰れたらしょうがないじゃん、
形あるものはすべて滅びるんだし…」とつい言ってしまったとします。
(実際は言いませんけどね、どうも私は顔に出ているようです)。
すると同僚からは、
「養ってる家族がいないからそんなこと言えるんだ」
「住宅ローンがないから言えるんだ」
「やる気ががないから言えるんだ」と反発必至です。
そういうときは開き直って、
「はい、ローンがないから言えるんです」などと
全部オウム返しすればいいんだな、と勝手に得心しました。
ちなみに、このお経では、
貧乏バラモンはお釈迦さまの言葉に感動して出家、
「ひとり静かに隠れ住んで」しまいます。
借金は踏み倒したんでしょうかね。
さて、これでいちおう
『阿含経典』増谷訳4巻を、読了しました。面白かった。
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<宇宙・生命・人の起源と仏教>の講演が10月30日に!
キターーー!と死語を使いたくなる待望のシンポジウム、
「科学と仏教の接点」第5弾が、
10月30日・東大駒場キャンパスで行われます。
私が第1弾から聞きにいっている、
初期仏教学者・佐々木閑先生と科学者との対談シリーズです。
今回のテーマは
「宇宙の起源、生命の起源、そしてヒトの起源」。
これに仏教がどう絡むのか、興味深々です。
理屈っぽい仏教ファンには絶対オススメですよ。
今回の科学者は、生物学の斎藤教授と理論物理学の湯川教授。
うち、斎藤教授との過去の対論は、本にもなっています。
『生物学者と仏教学者 7つの対論』
http://ameblo.jp/nibbaana/entry-10577309957.html
以下、東京禅センターからのメールをコピペしてしまおう。
でも、こんな面白い講演が無料って、
先生たちのギャラはどうなっているのだろう。
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平成22年10月30日(土) 開催
~科学と仏教の接点5~
テーマ:「宇宙の起源、生命の起源、そしてヒトの起源 パート1」
主催 東京禅センター
第五回「科学と仏教の接点」の講演会開催日程が決定いたしました。佐々木閑先生の
紹介により今回は生物学と物理学の分野から先生をお招きいたしまして科学の最新の
情報をお話しいただきます。
【講師】
湯川哲之(ゆかわ てつゆき)総研大名誉教授
1944年、和歌山県生まれ。1967年、京都大学理学部物理学科卒 1972
年、Rutgers大学大学院終了 Ph.D.米国M.I.T.理論物理学 センター ,フランス
Sacley原子核研究所を経て,昭和50年、デンマークNiels Bohr研究所助手。1976
年、高エネルギー物理学研究所 助教授。1995年,総研大葉山高等研究センター
教授
研究テーマ:宇宙や生命などの「存在の起源の研究」
斎藤成也(さいとう なるや)国立遺伝学研究所教授(総研大,東京大学大学院教授
を兼任)
1957年,福井県生まれ。1979年,東京大学理学部生物学科卒。1986年,
米国テキサス大学大学院修了 Ph. D.。東京大学理学部助手を経て現職。
研究テーマ:ゲノム進化,人類進化
著書:『DNAから見た日本人』『自然淘汰論から中立進化論へ』など多数。
佐々木閑(ささき しずか)花園大学国際禅学科教授
1956年福井県生まれ。京都大学工学部卒業。京都大学文学部卒業。京都大学大学
院文学研究科博士課程満期退学。米国カリフォルニア大学バークレー校仏教学科に留
学。1990年花園大学専任講師。2002年花園大学教授。 文学博士
主な著書「日々是修行
<http://www.myoshin-zen-c.jp/books_intro/books_intro.htm
> 」 (ちくま新書)
『犀の角たち <http://www.myoshin-zen-c.jp/books_intro/books_intro.htm
> 』
(大蔵出版)『出家とはなにか』(大蔵出版)『インド仏教変移論 なぜ仏教は多様
化したのか』(大蔵出版)
翻訳『鈴木大拙『大乗仏教概論』(岩波書店)
日時:平成22年10月30日(土) 午後1時30分~午後5時
会場:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科等
会費:無料
※申し込み方法:下記でFAX・Eメール・ハガキにて受
け付け中(※電話での受付はしておりません)。
折り返し受講証をお送りいたしますので、住所・
お名前を明記ください。
東京禅センター 〒154-0003
東京都世田谷区野沢3-37-2 龍雲寺会館
FAX 03-5779-3801
MAIL zen@myoshin-zen-c.jp
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