Twitterでフォローしている、あるアマチュア無線クラブのアカウント。
「アマチュア無線を知らないと言われショック!」
みたいな。
You Tubeでも嘆いておられました。
アマチュア無線局数の推移。
ケータイ電話が登場したあたりがピークで、ケータイ電話普及と反比例するように、減少の一途。
言われてみれば、私自身がどういう経緯で、アマチュア無線を始めたのか、ちょっと忘れていました。
40年も前にさかのぼるので、話の前後関係があべこべかも知れないけれど。
小学生の頃の勉強で、夢中になったのは、学校じゃなくて、
「学研の『科学』と『学習』」
という、家に届けてくれる定期購読雑誌だった。
これは、奇跡的な、子供にとって、これ以上ない楽しいお勉強だった。
今、もう無いの?
とにかく、ふろく。
雑誌本体で、毎回違ったテーマで、小学生にすげ〜わかりやすく、お勉強。
そのお勉強したことを「さぁやってみよう!」というのが、ふろく、だった。
ふろくは、子供が自力で作れるように、とても、工夫されている。
この学研、そのものについては、語り尽くせないので、掘り下げたい気持ちを抑えて、やがて、無線技術と無線交信に興味を持つきっかけになった回のふろくがある。
ラジオキット。
ニクロム線を巻いたコイルで電磁石の原理で、電波をキャッチする。
しかも、周波数を変えられるようになっている。
もちろん、音声が聞こえる。
これが、空中に存在する電波。
海にさざなみや、海流があるようなカンジ。
中学生になった時、今に続く「オールナイトニッポン」をはじめとする、大人の世界なエッチな深夜放送を親に内緒でラジオで聞いていた。
当時のアイドルは、中森明菜さんも小泉今日子さんも、自分のラジオ番組を持っていて、それは、内容は品行方正なので、ゴールデンタイム。
テレビでは歌うだけの彼女たちが、本来の自分の口調でしゃべる。
それも、ラジオで聞いていた。
今は、インターネットを介して、Radikoでインターネットで聞けるけど、当時、ラジオもテレビも、空中を飛ぶ電波しか無かった。
私は、剣道部だったけど、技術部にも頻繁に出入りしていた。
技術の先生が、顧問で、いろんな工具がある技術室で部活動。
無線はもちろん、バイクやクルマのことも詳しい先生だった。
先生が近所の農家から、耕運機の壊れたエンジンをもらいうけてきて、みんなで、ひとつひとつ分解しながら、技術の教科書を見ながら内燃機関ってゆうものの構造を学んだのは楽しかった、ということは無線に関係ないから置いといて。
ある日、ごくごく単純で簡単で、部品数が少ないシンプルなラジオを作ってみようというテーマの時があった。
先生の私物の「ラジオの製作」みたいなカンジの専門雑誌ので、ラジオの設計図があって、その読み方から教わった。たとえば、こんなカンジのやつ。
必要な部品と、手作業で作る部分とを、先生の指導受けながら、みんなでひとつひとつ洗い出して整理した。
そんな先生の引率で、みんなで秋葉原に出かけて、華やかで賑やかな表通りから外れて、ガード下みたいな薄暗い狭い通路みたいなところに並ぶ、ホントに怪しい店ばかりのところに初めて入った。
部品屋とか、違法な無線傍受機とか。
テロリストによると、爆弾の部品なんぞ当たり前のように揃えることができる街らしい。秋葉原は。
今は、若者の世界最先端のカルチャーの発信地なイメージある秋葉原は、そんな技術分野の聖地でもある。
部品と、その部品を配置する基盤と。
それらを買う軍資金は、みんなで、百円とかそんな程度の小遣い出し合った僅かなお金。
怪しい風体の無愛想でちょっと怖い店主に、予算内で収まるように、先生は、値切りに値切ってくれた。こうやって買うのね。
ハンダゴテや、ドライバーとかの工具は、技術室に揃ってたから。
そんなことで、みんなで、手のひらに乗るサイズの、ごくカンタンなラジオを作った。
こんなカンジのやつ。
親から買ってもらったラジオで、アイドルの番組や、性教育にもなるエッチな深夜放送を聞いてないと、学校での話題についていけないほど、ラジオは必須だった。
そして、技術部で、ラジオの製作体験。
それらは、電波の「受信」。
技術の先生は、さらに教えてくれる。
ラジオ局から送信され、ラジオで受信する。
ラジオは一方通行だけれど、相手と私の双方が、送信と受信をできれば、それが無線交信。
有線の固定電話に対して、無線による電話。
タクシーや、公共機関や、警察や消防、救急、自衛隊も無線を使っていて、それぞれに専用の周波数が、割り当てられている。
警察官が、左肩に、無線機のマイクを付けて、無線機をズボンのベルトにつけてるね。
それら、どの無線交信であろうが、個人的興味で聴くことは、違法ではない。合法。
あくまで個人的興味での受信であって、受信した内容を口外したり、それで知り得たことで何かをすることは、違法になる。
技術の先生は、秋葉原の怪しい店から手に入れた、いろんな周波数を自在に聞ける受信機を持っていた。
周波数が何に割り当てられているのかが書かれている電話帳のような本は、平気で売ってたし、今は、ネットで検索できるみたいだけど。
それら、どの周波数が何に割り当てられているのかが書かれている電話帳のような本は、平気で売ってた。
先生の受信機と、この周波数帳があれば、いろんな無線交信を聞くことが出来た。
その頃は、受信さえできれば、何でも聞けたけど、今は、警察無線とかは、デジタル処理で変調されていて暗号化されていて、音声に復調することはできないけど、それは警察とかそんなごく一部の交信。
空港の周辺で旅客機を撮影することが趣味の人達は、管制塔と航空機の機長さんとの間の無線交信を受信して、離陸や着陸のタイミングを把握して、シャッターチャンスを決めてるみたい。
技術の先生の受信機で、そういう、いろんな無線交信を聞かせてくれた。
やがて、石原裕次郎さん率いる石原プロモーションによる刑事ドラマが大ブレークすることになる。
ドラマの中で、警察無線を使って、パトカーと刑事部屋との間で、無線交信するシーンが、どんどん登場する。
(瞬間に「殿下!」と浮かぶ人は、きっと私と同世代です。)
カッコいい。
受信するだけじゃなくて、こんなカンジで無線交信してみたい。どうしたらできるの?
技術の先生は、さらに教えてくれる。
試験受けるか、講習会受けて、アマチュア無線資格を取れば、趣味として無線交信することができるよ。
そして、私は、国家試験によって電話級(今で言う第4級)アマチュア無線従事者免許を取得。
全ての問題が、四者択一で、しかも、過去問が、そのまんま出題されるから、丸暗記すればいい。
今は、カンタンに丸暗記しやすいように、とても良く工夫された本が売られています。
手のひらサイズでありながら、過去問と、参考書が1冊になっている。理解して覚えられるようになっています。
「アマチュア無線資格なんか、勉強しないでも合格できる」って言う人いますが、ガセです。
試験は午前中で、長い休憩を経て、午後に合格発表。
試験前、合格発表までの時間での会話で、「こいつは落ちる」ってわかる。
やっておけば間違いなく合格できる。
やってなければ間違いなく落ちる。
合格発表を見たら、そのまま、無線従事者免許の発行を申請して、後日、郵送されてきました。
その申請さえ、初めてそんな手続きをするわけで、ドキドキしました。印紙買って。
電話級(今で言う第4級)アマチュア無線従事者免許の試験勉強を始めたのと同時に、もう無線機を買ってしまった。
その秋葉原の、怪しい店で売ってた中古で、小さい出力(送信の強さ)しか出ないやつ。
送受信機能があるから無線交信できるできるのだけれども、交信を聞いているラジオみたいに使うのは合法。
なので、どうやって交信してるのかを覚えるために。
電話級(今で言う第4級)アマチュア無線従事者免許を取れたら、この無線機を使って無線交信することを認めてもらうための、無線局の開局申請。
この申請書類の入手とか、手続き全て、何をどうやればいいんだか。
1980年代初期。
インターネットなんかないから。
技術の先生に入手方法とか、記入内容を教わったり、手続き全て教わりながら。
無線従事者免許という人に対する免許が、クルマの運転免許証に該当して、無線局に対する免許が、クルマの車検証に該当する。
これで無線局免許が与えられ、念願のコールサインを得ることができた。
合法である証明であり、無線における私自身の名前(当然、世界に一つ)。
クルマで言うナンバープレート。
インターネットがあっても、何を揃えて、何をどういう順番でやっていけばいいのか、どこで何をすればいいのか、知るすべがありませんものね。
私には、よろず聞ける先生がいたけど。
アマチュア無線の定義は、金銭上の利益のためではなく、無線技術に対する個人的な興味により行う、自己訓練や技術的研究のための無線通信。
ということなので、楽しみ方は人それぞれ。
私は最も初級の免許ですし、自宅からでは全く受信も送信も届かないような、非力な無線機だったので、近所の河原とか、デパートの屋上とか、遠足とか、家族旅行で行った先とか。
屋外で無線交信を楽しみました。
私の「個人的な興味」は、こんな非力な無線機で、どこまで遠くと交信できるのか、という1点。
交信すると相手の無線家と、お互いに届いてる電波の強さとか音声のクリア度合いを伝え合い、どこで運用しているのかとか、アンテナとか、無線機、送信する電波の強度である出力電力(ワット数)について教え合います。
それによって、私は、相手が今運用してる市町村に興味があるし、相手の方は、私の無線機とかアンテナに興味があったり、それぞれの「研究」に活かすとか、「自己訓練」として無線かと交信の方法とか、設備とか、運用場所に工夫をこらすなり、真似してみたりと。
中学生でそんな中古の非力な無線機で始めた、
「小電力で、いろいろ場所を変えて運用してみて、どこまで遠くと交信できるか」
という「個人的な興味」は、今でも変わることがなく、当時と同じ、手のひらサイズのハンディ機と呼ばれるタイプの無線機で、当時と同じく、買った時のアンテナのまんまで、中学生の時の非力な無線機の出力とあえて同じ出力で、50歳を越えた今でも、同じ運用をしている。
今は、バイクでツーリング行く時に、必ず、無線機を持参して、気に入った場所で交信してみるカンジ。
でも、もう1年で、交信してみるのは、多くて4〜5回。
40年くらいやってきて、せっかくの免許なんで、これからも、これ以下はない設備で、細々と続けるんですけれども、毎回、いろんな発見があります。
私は、そんな、無線交信だけで続いてるんですが、無線交信だけで飽きちゃって廃局してしまう人も少なくないと聞いています。
アンテナや無線機を自作したり、私のようなハンディ機ではなく、上級の免許を取得してもっと本格的な設備で楽しんでおられる方もいるし、音声じゃなくて、モールス信号で楽しんでおられる方もいる。
「インターネットとスマホがあるから、無線通信は不要だ」
というのは、Noです。
「無線通信は、無くならない。半永久的に必要」
インターネットは、回線なり機器なり設備がダウンすることが起こりますね。
回線という意味で、固定電話も、それと同じリスクが消えない。
スマホ・ケータイ電話は、基地局が故障すれば、使えなくなります。
端末同士でダイレクトに繋がる機能は無い。
それどころか、広範囲で使えなくなっちゃったいう事故が時々起こります。
無線は、送信機能と受信機能を備えた無線機と無線機の間でのダイレクトなつながり。
電波は天然資源なので、電波が断線するとかはありません。天候で電波が乱れることはありますが。
その天候によって電波が乱れる時が、また醍醐味があるんですが、電波が飛ぶ障害になることもあれば、思ってもみない遠くの無線局とつながる奇跡的な交信ができたりと。
ケータイは圏外、という場所でも、無線機があれば、誰かに連絡できる可能性がある。
会社でも、アマチュア無線クラブみたいなのがあって、昼休みに時間の取れる人達で、本社ビルや支社ビルとかの屋上から、メンバー間で交信する、なんてやってましたけれど、たしかに、今53歳で当時20代だった私に近い世代が最年少だったかも知れない。
乗馬とか、茶道とか、英会話の会とか、いくつか、有志のクラブ活動みたいなグループがあって、社内のイントラネットの隅っこに、直近の活動予定の告知があって、よろしければどうぞ。というカンジで、その中の一つが、アマチュア無線だった。
お互いの部署とか役職は知らないと言うか、興味がなく、お互いのコールサインは知ってるみたいな。
でも、今思えば、すごいグループだった。
休憩時間のビルの守衛さんが制服のまま参加してたり、この交信実験のためだけに、運転手付きの黒塗りの社用車で乗り付けてくる経済同友会メンバーだった会社の顧問が割と頻繁に顔出してたり。
こんなカンジで振り返ってみると、たしかに、受信して楽しんだ、交信してみたくなった、という、電波の存在を実感する、体験する機会があったから、アマチュア無線を始めて今日に至ってもこれからも続けるわけですが、昨今の日常生活で身の回りの電波といえば、4G、5G、Wi-Fi。趣味に展開しそうにないですね。
無線交信に「個人的興味」をもってアマチュア無線、、とはならないし、通信講座でアマチュア無線講座なんてゆう広告も見かけない。
本屋さんの技術分野の雑誌コーナーでラジオ製作やアマチュア無線の専門誌を見かける機会も、本はAmazonで買うよ、とかだと、「アマチュア無線」などと検索しませんものね。
知らないのですから。
無線交信は、無くなることはないけれども、アマチュア無線を趣味に選ぶ子は殆どいないでしょうね。
タモリ倶楽部で、タモリさんは鉄道オタクぶりを見せてくれたりしますが、タモリさんもアマチュア無線家です。
でも、仕事に使うのはアマチュア無線の「金銭上の利益のためではなく、無線技術に対する個人的な興味により行う」という運用目的に合致しないので、タモリさんの仕事であるタモリ倶楽部でアマチュア無線を取り上げることはできない。。
ブラタモリで秋葉原の回で、タモリさんは、番組の中で、部品を買い集めて、ごくカンタンなラジオを自作して、みごと、かすかにではあるものの何らかラジオ番組を受信してみせていました。
やっぱりきっかけがないとね。きっかけがないんでしょうね。
ゴミ捨て場に捨てられてるテレビの裏ぶたを外して、中の真空管とか、ブラウン管を覗いたり。そんな経験もないし、部品がチップのように、見た目がワクワクしない感じになっちゃってるのもあるんでしょうね。
こうして綴ってみると、この全てが、この何もかもが、今は無い。
そりゃあ、アマチュア無線が知られてない、免許取得して開局する人がいない、飽きちゃって廃局しちゃう、わけです。