【第3回】悲しき誇張-デフォルメされた現実-
人に何かを伝えようとする際に、やたらと誇張してしまう癖を持つ人は少なくない。ちょっとした雪を豪雪であるかのように語り、街角でヨネスケを見ただけな のに、「中嶋悟を見た!」と騒ぐ人もいるだろう。とかく、世の中は、なんとも言えぬ悲しさを伴った誇張で満ち溢れている。
上掲のポスターは、ある駅の構内に貼られていたマナー広告であるが、写真の下部に注目してご覧頂きたい。このポスターの中に描かれている人々は、いずれも、現実ではかなり珍しいタイプの人々である。
「かけ上がる人」の目線は天を仰ぎ、
「かけ下りる人」のステップは、ここが例えエスカレーターでなかったとしても、極めて危険なシルエットだ。
そして、他の乗客を蹴落としていく人物は、もはや人気漫画『北斗の拳』のザコキャラをも凌ぐ鬼畜ぶりである。
それが誰かのフィルターを通して語られる以上、世の中に存在する事象の多くは、何らかの誇張や演出を伴うであろうことは想像に難くない。情報化社会に生きる我々は、その情報の真贋を見極める目を、有無を言わさず必要とされているのかもしれない。