ドイツカンマーゾリステン in Bissendorf | 音楽、経験、心情、出会い
4/1 からヴァイオリニストの笠井友紀さん、ヴィオリストの吉田馨さん、チェリストのDamien Ventulaさん、ピアニストのBoris Kusnezovさんという、素晴らしい先生方の指導の中、ヴァイオリンの私と、ピアノの碇くん、チェロの坪井くんが三人の生徒として、ワークショップがありました。4/5のコンサートにむけて集中したレッスン。私はベートーヴェンのトリオを、ダミアン先生と碇くんと演奏することになっていました。素敵なシュピールホフご夫妻の御宅でのこの一週間は人生でかけがえのない経験となりました。

その時の毎晩寝る前に書いた日記。



3/31
明日から講習会。意気込んでハノーファーの中央駅についたら、そこからシュピールホフさんの御宅のビッセンドルフ駅まで電車が止まってしまっていた。今日はすごい風だったので線路に木が倒れてしまったらしい。結局バルさんが迎えにきて下さり、素敵な素敵なシュピールホフさん宅に到着。先に到着していた碇君と吉田先生にお会いし、その後陽気なダミアン先生が登場し、夜は吉田先生お手製のチキンの照り焼きと、お野菜、抹茶ティラミスをみんなで頂いた。とても美味しかった。先生のお料理はいつも本当に美味しい。その後電車が遅れて大変だった坪井くんも到着。明日からどんな講習になるんだろう。怖い。頑張ろう。

4/1
午前中ダミアン先生のレッスンを聴講。遠いポジションや、弦を変わりながらのポジション移動、左と右のコンビネーション、インテンシブなヴィブラートや緩めるヴィブラートの仕方、書ききれない程勉強になった。音楽的なことと技術の論理的なことが繋がる素晴らしいレッスンだった。
そうして、ボリス先生と、ゆき先生が、到着し、お昼はドライカレーをみんなで食べた。四人そろった先生方の会話は、終始冗談たっぷりで、ほんとに楽しい。笑 ブラームスのカルテットを聴講し、夕方からベートーヴェンのトリオのはじめてのレッスン。楽譜をしっかり弾く、ピアノとフォルテをはっきりする、音程よく。と思って準備していったら、感動や驚きや喜びなどのないただの音だと言われてしまった。そして自分が思っていたより強く音楽を表現しよう、もっともっとと思うと、体が動きすぎ、肝心の音にならず空回りしてしまう。音楽を感じてもっとキャラクターをはっきりして、音の間を歌い、頭は冷静に右手をコントロールして響きのあるいい音を出し、そして他の2人の音をちゃんと聞きながら、リードしたり寄り添ったりしなければ。
夜は先生方、生徒の皆でユッタさんとバルさんのお手製のドイツ料理を頂いた。前菜からメインのお肉までどれもとても美味しかった。

4/2
今日は午前中ゆきさんにソロのレッスンをして頂いた。自分の甘さが露呈してしまった。アバウト、だいたい、ウンゲフェア、は練習にはない。もっと練習の仕方や課題を正しく見つけて、厳しく練習していかなければ。たくさんの練習方法や、コツや、考え方を学べた。その中には知っていたこともあり、やってこなかった自分に反省。昨日のベートーヴェンのレッスンを復習したかったので、今日はブラームスは聴講できなかった。お茶タイムの後はベートーヴェン。今日は2.3楽章。座る姿勢と開放弦で右手だけの練習を集中してやったからか、昨日よりは音がでて、変化させることができた。だけど油断は禁物。調子に乗っているとすぐに悪くなるってことは二年前にここで学んだ。もっと音の幅と弓の扱いのバリエーションを増やして、外へ向けて楽器から引き出すように弾けるようになりたい。ダミアン先生は、どう音楽を一緒に楽しみながら弾くかを、演奏はもちろん、いつも目で、顔で、表してくれる。その音楽をどう味わうか。(休符をただのリズムではなく、大事な間としてとらえると、どれだけのタイミングか味わえる。弾いている自分が感じるより聴いている人のほうが、もっと時間がほしい) 
夜はパプリカの肉詰めなど今日も本当に美味しく頂いた。食いしん坊キャラの坪井くんにどんどん進める先生方とバルさん。ニヤッとしてdarf ich…?と答える坪井くん。食べる量に圧巻。笑 その後バルさんとダミアン先生と坪井くんと少し散歩した。ビッセンドルフには何回もお世話になっているけど、歩いたことがなかった場所で、1615年の建物や教会がみれて夜のお散歩楽しかった。

4/3
本当にここでの一日はあっっっという間に終わってしまう。今日はボリス先生と碇くんのレッスンの通訳をした。初通訳……!ちょっとどきどきしたのでちゃんと辞書を用意した。実際いらなかったけど、versteckenとの単語をこのレッスンで知った。ボリス先生のレッスンもとても勉強になった。たとえ32分音符とかでも、ゆっくりレガートに音の幅を感じてひとつひとつの音の方向性を考えて丁寧に練習する、この小さな変化が仕上がりの曲に大きな変化をもたらす。音楽が緊張感をもっていても、体はいつもラクにして、体がラクだと音は自由で、緊張することももちろんできる。緊張した和音だからといって体が硬くなってしまわないように常に心がけていなきゃいけない。いつもいつも、どこへ向かうのか、終わり方はどうするのか、どう場面を変えるのか、はっきりと大げさに表現する。など、など、など、一緒にレッスンに参加できて勉強になった。碇君にも満足してもらえたみたいでよかった。吉田先生のラザニアを頂き、練習したあと、ベートーヴェン四楽章。メロディの行き着く先の考え方が、先生方三人みんな違った。私は何も考えずに弾いていた。1番最悪だ。そういところが四楽章は特に多すぎる。ひどい。自分ひどい。今夜はもう一度しっかりスコアをよんで、全ての音楽を曇りなく考えてはっきりさせてからでないと寝てはいけない。この3日で沢山もらったヒントや答えを、全ての場所にいかそう。
夜ご飯を食べて、今日は碇くん、ダミアン先生、ゆき先生、坪井くんと夜のお散歩へ。月と星がほんとに綺麗で、歩きながらだと話もたくさんできて楽しかった。帰ってダミアン先生が部屋に訪ねてきて、ベートーヴェンのスコアで和声の動きから、メロディの方向性がこうなる、と教えてくれた。そしてなぜかビー玉を持っていて、そこからゲームをして盛り上がった。その後楽譜を読んだり、録音を聞いたり、イメージして、今日記をかいている。今日はあまり寝れない。

4/4
今日はご飯を食べて、午前中にベートーヴェン。先生方の曲の捉え方、感じ方、考え方、練習の仕方、聞き方、いつもいつも自分が考えていたより10倍も深くて、多くて、昨日考えたくせに、浅はかな自分にいつも落ち込んだ。あと、やらなきゃ!こうしよう!もっともっと!と、どんどん肩に力が入って前の癖がでてきいるのを感じて、午後の練習で肩当てを外してやってみた。力まかせにできないし、左肩が自由だと右もフリーで、音はよくなった。夕方は笠井先生にソロでレッスンして頂き、またまた色々なテクニックや、自分の問題点、色や場面をイメージして音楽をする大切さを学んだ。その後ビッセンドルフのイースターのイベントへ行った。笠井先生、ダミアン先生、バルさん、坪井くん、碇くんと、ソーセージとステーキを食べ、ビールを飲みながら、おおーきい焚き火を囲んで楽しんだ。帰ってからまた吉田先生手作りのうどんを食べて、みんなでワインを飲んでお話した。"いつか来る。いつか花が咲く。まだ…?"と、この数年言われ続けている。こんなこと言われるのは今回で終わりにしたい。まずは明日の本番。六年間ドイツカンマーゾリステンに参加して、ドイツで勉強して、今ここで集中レッスンを受けた、それ全て出したい。明日で先生方やみんなとお別れだと思うと、、、さみしい。

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4/5 今日はドイツの大切な行事、イースター休暇ということで、朝ごはんをバルさんの御宅で頂いた。コーヒー紅茶パンケーキ、茹たまご、そしてチーズやソーセージ沢山あり、本当に特別な素敵な朝食だった。その後練習してゲネプロ。言われたことをきちんとしようと思い弾き、思い通りにいかないと落ち込み、その場その場で一杯一杯になってしまい、全く上手くいかなかった。全部ふつう。本当お腹から感じて音楽をしなければいけないと言われた。間違えなんてどうでもいい、合わなくてもいい、何かをお客さんに持って帰ってもらえる演奏をしなきゃ。音程気にして小さくなったら、音程気にして小さい演奏だったね、という感想をお客さんは持って帰ってしまう。と、笠井先生に言われ、ハッとした。そして、その後のブラームスのリハで、先生方の音を聴き、姿を見て、これが本気の音楽…と思わされた。この4日間のレッスンで、テクニックや音楽や考え方など色々なことを教わったけれど、全てこのような音楽ができるようになるためのすべだ。笠井先生がよくおっしゃる、お腹の底から音楽を感じて弾くとはこれだ、と先生方の姿をみて思った。お昼ご飯で美味しい美味しいパスタを頂き、その後は先生方にお渡しするカードをかいた。沢山書きたいことがあるし、なかなかドイツ語もまとまらず、気付いたら本番15分前で慌てた。本番は、これが最後…今回だけでなく、これまでやってきたことの総復習だと思って、言われたことをやるのではなく、自分の思う音楽を考えた上で、ちゃんと表現しようと思い、楽譜の先を先を思って弾いた。ダミアン先生をみると、いつも音楽に合った呼吸と準備で、前もって音楽を感じている。一緒に弾けて本当によかった。本番前は、ダミアン先生に、君はもう全部をできている!何が起こっても大丈夫!僕がいる!と、めちゃくちゃかっこいい心強い言葉をもらった。上手くいかなかったところ、上手くいったところ、色々あったけど、音楽を感じて弾けた。これからはこの演奏を、はじめのレッスンでするようにしなければ。ブラームスのピアノカルテットは本当によかった。素晴らしい先生方の弦楽器アンサンブルに碇君も着いていき、心動かされるいかれる音楽だった。その反動でいろんなことを思い出し、うるうるした。
その後のパーティでは、みんなでご馳走と、美味しいワインを頂いた。この数日でだいぶドイツ語に反応できるようになった気がする。ダミアン先生とボリス先生のコンビが本当にいつも面白くて終始みんなで笑っていた。ボリス先生からはご本人のCD、吉田先生からはイースターのうさぎさんのチョコを頂いた。その後先生方と、シュピールホフさん達に生徒三人のメッセージをかいたカードを渡し、パーティが終了。その後散歩に行き、帰ってお茶を頂き、先生方と今日の講習会、演奏会で各自の感想や音楽や対する姿勢など話した。

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4/6 今日はお掃除!吸引力ありすぎの掃除機で腰と肩にきた。お風呂を磨いて、窓など拭きながら、昨日のイースターで隠した卵のチョコを見つけたりした。お昼ご飯を頂き、碇君と坪井君とハノーファーに行き、帰って夕ご飯を頂き、練習して、ビールを飲んで、いろんなお話をした。今回、リハから本番でグッとよくなり、本番が一番いい演奏だったと言われた。リハから本番前までは、お昼ご飯を食べて、先生方へのカードを書くのに必死で、練習はできていない。いつもと何がちがったか。今回本番前は緊張ではなく、なぜか気持ちがグッときて涙がでそうになる程、これが最後の演奏、これが最後のチャンス、と思って、気持ちを高めて落ち着いて、集中することに集中した。後から、吉田先生に言われた事は、私はいつも本番直前や、なにかドーンと刺激があったときに、本気で集中し、ベストな演奏に繋がる。それを毎日して、毎日自分の限界を超えていくのが練習だ、と。今回身をもって感じた事は、ひとつのフレーズから多くの事を考え、全部を混ぜて繋げて、全部を同時に実行して、それをよく聴いて、また考えて、直す。今までの考え方やテクニックや自分のしてきた全てをそのフレーズ、曲に持ち込む。ひとつのことができたら満足という甘さと、昨日できたから今日もできてるはずという適当さと、これだけやれば大丈夫みたいな自分の線引きを無くさなきゃ、進まない。今まで散々言われてきたことだけど、ドイツで練習の仕方や奏法も1人で考えなければいけない環境で、上手くいかない本番や試演会を何度も経験して、いろんな人の奏法と自分の癖を知り、半年過ごした今、これらの言われてきた本当の意味が今度こそ分かったと思う。今度こそわかって変わらなきゃいけないと思う。同世代の坪井くんや碇君の練習や話を聞けたこともよかった。全員で写真を撮れなかったのも一生の後悔だけど、ほんとに素晴らしい素敵な四人の先生方、同世代の楽器の違う三人の仲間、暖かいシュピールホフさんのもとで過ごせた経験は一生の宝物。あと一年で10人分軽くお料理できる腕前になって、お料理係としてでもいいので、来年もぜひ潜り込めるように今から密かに狙っている。