Googleのストックオプション
今日は、WSJからこのニュースを取り上げてみたいと思います。
Google's Optional Windfall
Googleが従業員に対して発行しているストックオプションは未行使のものだけで760万個あるそうですが、昨年の金融危機で株価が下がったため、Googleは今年の3月6日に、このストックオプションの行使価額を当時の株価である308.57ドルにRepriceしたそうです。すると、その後、株価が500ドルまで持ち直してきた結果、今ストックオプションを行使すれば1株当たり200ドル(全部行使すると15億ドル超)近くも従業員は得をすることになるということで、これに対して、株主の利益を蔑ろにしているという批判があがっているようです。ちなみにReprice前の行使価格の平均額は522ドルだそうで、Reprice前だと未だにストックオプションを行使しても利益はでないという状況です。
アメリカでは、ストックオプションの発行段階でこのRepricing条項について株主総会での承認を得ておき、経済状況の悪化など不可抗力的な事由に基づいて株価が下がってしまった場合には、ストックオプションの行使価格を修正できるように設計しているケースが結構あるようです。Google側の主張によれば、優秀な従業員の流出を防ぐために必要な措置であるということのようですが、株主としては金額が大きいだけに不満もあることでしょう。
では日本の場合には、このようなストックオプションは認められるのでしょうか。
会社法上は、新株予約権(ストックオプション)を発行する場合には、「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」を定めなければならないと規定されています(326条第1項第2号)。「価額」というのは具体的な金額ですが、「算定方法」でもよいとされているので、一義的に価額が客観的に定まるような決め方ならOKということです。修正条項付の転換社債型新株予約権付社債(いわゆるMSCB)などは、株価の上下に変動して行使価額も上下しますが(したがって、転換権の行使時点で株価が低ければそれだけ多くの株式を取得できる。)、これは行使時点の株価を行使価額の算定の根拠にしているので一義的に価額が決まるのでOKということです。
したがって、日本で従業員や会社役員に対して発行される新株予約権についても、行使価額の計算方法が一義的に明確ならRepricing条項を入れることも可能なのでしょう。ただ実際の事例で導入しているのを見たことはありませんし、以下の理由から実際に導入するのも難しいのではないかと思います。
会社法上、ストックオプションの制度趣旨と齟齬しないようなRepricing条項を設計するのは結構難しい気がします。ストックオプション制度の趣旨は、株価が上昇すればストックオプションを行使することにより利益を受けることができるということをインセンティブとして、企業価値を高める経営努力を従業員や役員に対して促すというものです。そうすると、株価に連動させるような形(例えば行使時点の株価の9割の金額など)で行使価額を決めるというのでは、株価を高めるインセンティブがほとんどありませんし、金融恐慌など外的な事由で株価が下がった場合にRepricingができると規定するのは、算定方法が一義的でない(本当に外的な要因かという点が一義的に決まらない)からダメでしょう。
加えて、会社法上、新株予約権の発行が有利発行にあたる場合には株主総会の決議が必要になる(非公開会社は有利発行でないの新株予約権の発行の場合も株主総会の決議が必要)ので、あまり変な設計の新株予約権を従業員や役員に発行するのは株主の了解が得られないでしょう。
ちなみに、GoogleのRepricing条項は、Googleが株式公開する前の時点で株主からの承認を取っていたようです。こんな条項付のストックオプションを持ったまま上場できてしまうところもすごいと思います。日本だと、審査段階で引っかかりそうなものですが。
Google's Optional Windfall
Googleが従業員に対して発行しているストックオプションは未行使のものだけで760万個あるそうですが、昨年の金融危機で株価が下がったため、Googleは今年の3月6日に、このストックオプションの行使価額を当時の株価である308.57ドルにRepriceしたそうです。すると、その後、株価が500ドルまで持ち直してきた結果、今ストックオプションを行使すれば1株当たり200ドル(全部行使すると15億ドル超)近くも従業員は得をすることになるということで、これに対して、株主の利益を蔑ろにしているという批判があがっているようです。ちなみにReprice前の行使価格の平均額は522ドルだそうで、Reprice前だと未だにストックオプションを行使しても利益はでないという状況です。
アメリカでは、ストックオプションの発行段階でこのRepricing条項について株主総会での承認を得ておき、経済状況の悪化など不可抗力的な事由に基づいて株価が下がってしまった場合には、ストックオプションの行使価格を修正できるように設計しているケースが結構あるようです。Google側の主張によれば、優秀な従業員の流出を防ぐために必要な措置であるということのようですが、株主としては金額が大きいだけに不満もあることでしょう。
では日本の場合には、このようなストックオプションは認められるのでしょうか。
会社法上は、新株予約権(ストックオプション)を発行する場合には、「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」を定めなければならないと規定されています(326条第1項第2号)。「価額」というのは具体的な金額ですが、「算定方法」でもよいとされているので、一義的に価額が客観的に定まるような決め方ならOKということです。修正条項付の転換社債型新株予約権付社債(いわゆるMSCB)などは、株価の上下に変動して行使価額も上下しますが(したがって、転換権の行使時点で株価が低ければそれだけ多くの株式を取得できる。)、これは行使時点の株価を行使価額の算定の根拠にしているので一義的に価額が決まるのでOKということです。
したがって、日本で従業員や会社役員に対して発行される新株予約権についても、行使価額の計算方法が一義的に明確ならRepricing条項を入れることも可能なのでしょう。ただ実際の事例で導入しているのを見たことはありませんし、以下の理由から実際に導入するのも難しいのではないかと思います。
会社法上、ストックオプションの制度趣旨と齟齬しないようなRepricing条項を設計するのは結構難しい気がします。ストックオプション制度の趣旨は、株価が上昇すればストックオプションを行使することにより利益を受けることができるということをインセンティブとして、企業価値を高める経営努力を従業員や役員に対して促すというものです。そうすると、株価に連動させるような形(例えば行使時点の株価の9割の金額など)で行使価額を決めるというのでは、株価を高めるインセンティブがほとんどありませんし、金融恐慌など外的な事由で株価が下がった場合にRepricingができると規定するのは、算定方法が一義的でない(本当に外的な要因かという点が一義的に決まらない)からダメでしょう。
加えて、会社法上、新株予約権の発行が有利発行にあたる場合には株主総会の決議が必要になる(非公開会社は有利発行でないの新株予約権の発行の場合も株主総会の決議が必要)ので、あまり変な設計の新株予約権を従業員や役員に発行するのは株主の了解が得られないでしょう。
ちなみに、GoogleのRepricing条項は、Googleが株式公開する前の時点で株主からの承認を取っていたようです。こんな条項付のストックオプションを持ったまま上場できてしまうところもすごいと思います。日本だと、審査段階で引っかかりそうなものですが。