Life in the Lone Star State -116ページ目

シンジケートローン契約(Vol.4)

第4回はCommitments額の増減についてです。

Revolving Credit Facilityは、融資枠(コミットメント額)の上限を定め、融資期間中はその上限を超えない範囲で借入ができ、既存の借入を返済した場合には再度融資枠が増加し、借入可能金額が増えるという構造を有しています。したがって、例えば2009年10月1日から1年間の借入可能期間で100億円の融資枠を設定した場合に、10月15日に30億円を3ヶ月のタームで借りたとします。そうすると、その30億円を弁済するまでの間は残り70億円までしか追加で借りることはできませんが、3ヵ月後に30億円を弁済すると、また枠が戻るので100億円借りられるようになるという仕組みです。

この融資枠の金額をコミットメント額などと言いますが、この金額は融資可能期間を通じて原則一律です。ただし、借入人のオプションとして、このコミットメント額を増減することが契約上認められている場合があります。

コミットメント額の減少というのは日本のシンジケートローン契約にも比較的スタンダードな規定として入っています。例えば契約当初は先行きが不安で100億円の枠を確保しておきたいと思っていても、半年経過後、資金繰りが安定してきてローンで100億円も調達する必要はないと判断した場合には、借入人の申し出によりコミットメント額を減額することができるというオプションです。コミットメント額を減額するメリットというのは、貸付人である金融機関に支払う手数料を減らすことにあります。貸付人は、借入人が例えば5日後に100億円借りたいと言った場合にはいつでも貸せるように、迅速に資金を調達できる状態にしておかなければなりません。そのためには貸付人サイドにも一定の調達コストがかかることになりますので、それに見合うだけの手数料を借入人は貸付人に対して支払う義務を負います。この手数料は、大きく分けて2つの算定方法があり、一般的にはコミットメントフィーとかファシリティフィーと呼ばれています。いずれの場合も未使用のコミットメント額がある場合には、コミットメント額が小さいほうがフィーが安くなりますので、借入人としてはこのオプションを行使するメリットがあるというわけです。ただし、いったん減らしたコミットメント額は再度増加するオプションは通常認められていません。

次に、コミットメント額の増額についてです。契約締結後に、例えば会社の規模拡大に伴い必要となる運転資金の額が増えることが予想される場合、契約期間中にコミットメント額を増額できるというオプションを付けることができれば、別途資金調達に走らなくて済むので借入人としては便利です。ただ、減額オプションと違うところは、増額により与信枠が拡大することになるので、各金融機関の与信審査が新たに必要となるであろうという点です。例外的に、再度の与信審査が不要な場合、例えば、本来与信上は100億融資できるんだが、最初の半年は50億あれば十分なので、契約当初は50億円という枠を設定しておき、借入人のオプションにより契約期間の途中で100億円まで枠を増加させることができるというケースです。こうしておけば、借入人としても資金需要ができたときに枠を拡大できるので手数料の支払いを抑えることができるし、枠を増やす時期を状況に応じて選べるので便利です。(ただ、この場合も半年後ということになると与信審査はその時点でやり直しということになるのかもしれません。)

こういった与信審査の問題から、アメリカのシンジケートローン契約でもコミットメント額の増額を借入人のオプションとして規定することはあまりないようです。増額の方法として、LSTAは、"Accordion Features"と"Incremental Facilities"の2つの方式を紹介しています。前者は、既存の融資枠に上乗せするタイプの増額で、まさにアコーディオンを広げるイメージです。後者は、既存の枠とは別に新たなTrancheを設定して増額するというタイプです。貸付人の構成が同じで、融資条件も同じならAccordion Featuresが簡便だと思いますが、新しい貸付人が入ってくる場合や、融資条件が異なるなら別Trancheを作るということになるんでしょう。いずれも貸付人が応じた場合にはという条件付にするケースがほとんどで、やはり無条件に増額するオプションを契約締結段階で借入人に付与するというのは実務的には難しいようです。