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債権法の改正(Vol.2)

債権法の改正(Vol.2)

第2回は、債権総論の前半部分です。

1. 「経済事業」

「経済事業」を「反復継続的事業であって、収支が相償うことを目的として行われるもの」と定義し、「収支が相償う」とは、「営業」の概念である「営利を目的として」よりもやや広い。積極的に利益を出すことは目的としないが、少なくとも損失を出さないことを目的として事業を行う場合(協同組合、士業、公益法人など)も含まれる。この概念で「事業者」に適用される規定にさらに一定の絞りをかけることを想定している。

2. 原始的不能の契約

現行法では、原始的に不能の契約は原則無効と考えられているが、改正案ではそのような契約についても、「反対の合意が存在しない限り」有効とする。契約当事者間のリスク分配を尊重する趣旨。今まで当然無効だったものが、そう書かないと無効にならないということなので、実務上要注意。

3. 契約締結上の誠実義務、情報提供義務、説明義務

判例法理の明文化。

4. 申込みと承諾

・対話者間の申込み・承諾の効力について新設。対話中に申込みを受けた者が対話の終了までに承諾しなかった場合は、その申込みは効力を失う。これまでの判例及び多数説の見解に従うとのコメントだが、こんな判例があるとは知らなかった。。
・承諾についてもこれまでの発信主義を変更して到達主義とし、到達主義の原則で全て統一する。

5. 約款による契約

「約款」を「多数の契約に用いるためにあらかじめ定式化された契約条項の総体」と定義し、約款による契約を締結する場合には、相手方への事前の開示、又は開示が困難である場合には、契約締結時において約款を用いる旨の表示と約款を相手方が知りうる状態におくことを条件に約款の拘束力を認める。例えば、運送契約の場合、約款を駅の切符売り場等に掲示しておけばOK。タクシーの場合は車のなかに掲示することで足りるのか?

6. 契約の有効性、解釈

契約の有効性が否定される不当条項を明文化。また、契約の解釈準則についても明文化。

7. 法定利息

固定金利から市場連動型の変動金利に変更する。

8. 不安の抗弁権

新設。ただし、同時履行の抗弁権がある場合にも認めるか、先履行義務がある場合にのみ認めるかについては要検討。

9. 不完全履行の場合の追完

債権者側からの追完請求権と、債務者側からの追完権の双方について規定。

10. 損害賠償

・履行に代わる損害賠償を請求できる場合を明示。
・損害賠償の範囲については、予見可能性に基づき判断。①契約締結時に両当事者が予見し、又は予見すべきであった損害に加え、②契約締結後、債務者が予見し、又は予見すべきであった損害が含まれる。
・金銭債務の特則があったとしても、それを超える損害額を請求することも許容される。
・債権者の損害軽減義務を明文化。
・損益相殺を明文化。
・「過大」な損害賠償額の予定は無効である(裁判所により減額される)ことを明文化。

11. 解除

・「契約の重大な不履行」がある場合には無催告で、それ以外の不履行がある場合には催告した上で解除可能という現行の制度を踏襲。
・ただし、不履行者の故意過失を要件としない点に注意。
・複数の契約が密接に関連している場合に、1つの契約に解除事由が発生した場合、全てについて解除可。

12. 危険負担

廃止。解除の要件から故意過失を排除したことにより、解除規定を適用することでカバーする。

13. 受領強制

債権者に履行の受領義務があるかどうかという点については学説上争いがありますが、この提案では、契約上、「履行を受領することを債権者が合意していた場合に限り」、受領を強制することができるとしている。ちなみに現行法上は、受領義務はないというのが判例・通説の立場。契約上、「債務者は債権者に●●を引渡す。」とだけ書いた場合には、債権者の受領義務はなし、「債務者は債権者に●●を引渡し、債権者はこれを受領する。」とまで書けば受領義務ありということでしょうか。

14. 事情変更の原則

判例法理を明文化。原則不適用、例外的に、①変更の重大性、②後発性、③予見不可能性を満たす場合に契約内容の再交渉を経た上で契約解除が可能。

15. 債権者代位権

従来の一般責任財産保全型(本来型)と個別権利実現準備型(転用型)の2類型については維持し、債権者が代位権の行使により直接財産を受領した場合には、債務者への引渡し義務を負わせる(相殺も禁止)ことで事実上の優先弁済を否定する。本来型については、無資力要件を明文化。

16. 詐害行為取消権

・現行法上の責任財産保全の制度という位置づけを維持しつつ、破産法の改正による否認権の制度との平仄を合わせる方向での改正。
・取消債権者に交付された財産のうち金銭については、一定期間内は取消債権者、他の債権者、受益者による強制執行を認め、一定期間後は、取消債権者による相殺を許容する。
・受益者に対しする詐害行為取消と転得者に対する詐害行為取消を別個に規定。いずれの場合も主観的要件として悪意を要求する。(転得者に対する場合は、受益者及び転得者双方の悪意が必要。)

(続く)