気候変動訴訟
今日はWSJからこのオピニオン記事。
Hurricane Katrina Victims Have Standing To Sue Over Global Warming
メキシコ湾岸の複数の不動産所有者が、ハリケーンカトリーナにより損害を被ったのは温室効果ガスの排出により大気及び海水の温度が上昇し、それが海面の上昇及びハリケーンの “ferocity”(凶暴性、獰猛性)を増大させたせいだとして、損害賠償及び懲罰的賠償を求めてエネルギー会社、燃料会社及び化学薬品会社等を訴えたところ、 “public nuisance”, “private nuisance”, “trespass”, “negligence”の訴えに関して当事者適格が認められたという記事です。
こちらはスキャデンの弁護士のブログですがより詳細な分析があり参考になります。
こんな訴えを起こそうと考えること自体、日本人には思いもつかないことですが、今回Circuit Courtレベルで当事者適格が認められたことにより、クラスアクションを専門に扱う弁護士が大挙してこの気候変動訴訟を起こす可能性があるとこのブログでは言及されています。
ただし、あくまで当事者適格が認められたというだけで、この訴訟で勝利するための最大の難関は、causation(因果関係)が認められるかという点です。一企業が温室効果ガスを排出したことと、温暖化さらにはハリケーンの威力が増大し原告が損害を受けたことの因果関係を立証しなければならないわけです。
NY Barを勉強した際に学んだ(浅い)知識によれば、過失に基づく不法行為(Tort)が認められるためには、行為と結果の間に因果関係が必要であり、その因果関係はfactual causation(事実的因果関係)とproximate causation(法的因果関係)の2つから成ります。法的因果関係というのは日本の相当因果関係に似通った概念と考えていいと思いますが、ざっくり言うと、当該結果に対する責任をその過失行為を犯した人に負わせることが妥当(fair)かという観点からの価値判断です。事実的因果関係のみで因果関係を肯定してしまうと因果関係が肯定される場合が広くなりすぎるので、それを合理的な範囲に絞り込むのがこのproximate causationの役割です。
今回の場合は、そもそも事実的因果関係があるかどうかさえ、立証が困難ではないかという気がします。事実的因果関係の立証には、いわゆる "but for test"(あれなければこれなし)が原則適用されますが、複数の行為に結果が起因するような場合には、どの行為が重要な役割を果たしたかという観点から事実的因果関係の有無を判断します。そうすると、今回の場合、温暖化に影響を与えている行為というのは数限りなくあるわけで、一企業の行為が特に重要な役割を果たしたという立証は非常に難しいだろうと思います。仮に、それが肯定されたとしても、さらに法的因果関係まで必要なわけですし。
あまり勝ち筋の事件だとは思えませんが、弁護士からすれば、クラスアクションという多額の賠償金を勝ち取れる可能性のある訴訟ですので、多少の無理筋でもやってみようということになるのかもしれません。上記のブログの論調を見ても、社会正義の実現を目指すというよりは、この判決を一種のビジネスチャンスと捉えて注目しているような印象を受けます。
Hurricane Katrina Victims Have Standing To Sue Over Global Warming
メキシコ湾岸の複数の不動産所有者が、ハリケーンカトリーナにより損害を被ったのは温室効果ガスの排出により大気及び海水の温度が上昇し、それが海面の上昇及びハリケーンの “ferocity”(凶暴性、獰猛性)を増大させたせいだとして、損害賠償及び懲罰的賠償を求めてエネルギー会社、燃料会社及び化学薬品会社等を訴えたところ、 “public nuisance”, “private nuisance”, “trespass”, “negligence”の訴えに関して当事者適格が認められたという記事です。
こちらはスキャデンの弁護士のブログですがより詳細な分析があり参考になります。
こんな訴えを起こそうと考えること自体、日本人には思いもつかないことですが、今回Circuit Courtレベルで当事者適格が認められたことにより、クラスアクションを専門に扱う弁護士が大挙してこの気候変動訴訟を起こす可能性があるとこのブログでは言及されています。
ただし、あくまで当事者適格が認められたというだけで、この訴訟で勝利するための最大の難関は、causation(因果関係)が認められるかという点です。一企業が温室効果ガスを排出したことと、温暖化さらにはハリケーンの威力が増大し原告が損害を受けたことの因果関係を立証しなければならないわけです。
NY Barを勉強した際に学んだ(浅い)知識によれば、過失に基づく不法行為(Tort)が認められるためには、行為と結果の間に因果関係が必要であり、その因果関係はfactual causation(事実的因果関係)とproximate causation(法的因果関係)の2つから成ります。法的因果関係というのは日本の相当因果関係に似通った概念と考えていいと思いますが、ざっくり言うと、当該結果に対する責任をその過失行為を犯した人に負わせることが妥当(fair)かという観点からの価値判断です。事実的因果関係のみで因果関係を肯定してしまうと因果関係が肯定される場合が広くなりすぎるので、それを合理的な範囲に絞り込むのがこのproximate causationの役割です。
今回の場合は、そもそも事実的因果関係があるかどうかさえ、立証が困難ではないかという気がします。事実的因果関係の立証には、いわゆる "but for test"(あれなければこれなし)が原則適用されますが、複数の行為に結果が起因するような場合には、どの行為が重要な役割を果たしたかという観点から事実的因果関係の有無を判断します。そうすると、今回の場合、温暖化に影響を与えている行為というのは数限りなくあるわけで、一企業の行為が特に重要な役割を果たしたという立証は非常に難しいだろうと思います。仮に、それが肯定されたとしても、さらに法的因果関係まで必要なわけですし。
あまり勝ち筋の事件だとは思えませんが、弁護士からすれば、クラスアクションという多額の賠償金を勝ち取れる可能性のある訴訟ですので、多少の無理筋でもやってみようということになるのかもしれません。上記のブログの論調を見ても、社会正義の実現を目指すというよりは、この判決を一種のビジネスチャンスと捉えて注目しているような印象を受けます。