Life in the Lone Star State -110ページ目

シンジケートローン契約(Vol.5)

第5回はMulticurrency Facilitiesについてです。

シンジケートローン契約で資金を融資する場合、融資する通貨は通常1種類でアメリカならUSドル建て、日本なら円建てということになります。ただ、借入人によっては複数の通貨での融資を受けたいという場合があり、その場合は、例えば、USドル、ユーロ、円など複数の通貨での融資を可能にする建付けにすることがあります。これがMulticurrency Facilitiesと呼ばれるものです。複数の通貨での融資を受けることを希望する借入人というのは、海外子会社を持っている会社など、複数の国で事業展開している企業が主ですが、その場合、海外子会社の信用力では現地での調達が困難(または調達コストが高い)ため、親会社の信用に依拠して資金を調達するというケースで利用されることが多いスキームだと思います。この場合、その海外子会社も契約上の借入人になることもあり、そうすると、金融機関は当該海外子会社に直接貸し付けることになるので、その代わりに親会社の保証を取るという形になります。つまり、親会社の信用枠を親子会社でシェアして使うというイメージです。

LSTAのサンプル条項では、Eligible Foreign Currencyの定義として、次のように規定されています。

“Eligible Foreign Currency” means Sterling, Euros, Canadian Dollars, and Japanese Yen and any other currency other than U.S. Dollars (a) that is readily available, freely transferable, and convertible into U.S. Dollars in the international interbank market and in which dealings in deposits are carried on in the London interbank market and (b) that has been approved by [the Administrative Agent].

この定義は、借入人が選択できる通貨は、例示列挙されているもの(ポンド、ユーロ、カナダドル、日本円)に加え、(a)と(b)の2つの要件を満たす通貨であればなんでもよいという内容になっています。

(a)の要件について、それぞれLSTAでは大要次のように解説しています。

まず"Readily available"というのは、Lenderにとって迅速に調達できる通貨かどうかということです。その通貨の発行国に支店があればそこで調達可能ですが、そうでない場合には、ロンドンのインターバンク市場で調達することになりますので、そこで取り扱いのある通貨でないと調達がReadilyにはできないということでしょう。次に、"Freely transferable"というのは、その通貨建ての支払いに関して、その国がExchange Control(為替管理)で制限しているかという話です。ポンドやユーロは制限がないが、中国元はFreely transferableではないとされています。"Convertible into U.S Dollars"というのは、Multicurrencyの場合でも融資枠総額についてはドル建てで一元的に管理するケースが多いため、ドルに換算できることが条件だということです。

次にMulticurrency Facilitiesの契約上の建付け方ですが、大きく分けて2つあります。1つは、全参加金融機関が全ての通貨について参加割合に応じて融資するという形態。もう1つは、各通貨ごとに別Trancheを設けて参加金融機関をTranche毎に決めるという形態。よっぽどマイナーな通貨でもない限り、調達できる金融機関が限られるというケースは少ないでしょうから、エージェントとしては、前者のほうが管理が楽でしょうから、実務的にはこの形式のほうが好まれるのではないかという気がします。