ゴブリン1stアルバム~『サスペリアPART2』の日本初盤~幻の『赤い深淵』レコード | 三つ子の魂百まで…トラウマニア

三つ子の魂百まで…トラウマニア

映画レビュー、コレクション紹介、映画や趣味全般について書いています。

70年代を代表するイタリアン・プログレッシヴ・ロック・グループのゴブリン。ホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントに見初められ、サントラを手掛ける事になったのが"Profondo Rosso"こと『サスペリアPART2』。本国イタリアではサスペリアよりもジャッロの2作目が支持されているけど、謎解きのスリルや伏線の張り巡らせ方、歴史あるローマの街並みを余す事なくフィルムに焼き付け映像に重厚感が出ており、個人的にはサスペリアよりストーリーに深みのあるサスペリアPART2派です。

 

今回紹介するレコードは1977年に日本で『サスペリア』が記録的大ヒットを飛ばした後、翌年1978年にアルジェント監督作というだけで、都合よく続編扱いされた『サスペリアPART2』封切り前にプログレファン向けに、このサス2がいち早く日本上陸していたのです。しかも原題を直訳した『赤い深淵』のタイトルで…。

ジャケットはイタリアCINEVOX原盤と同一デザイン。

血溜まりの赤…。イタリア盤は見開きジャケなのですが、さすがにそこまで再現されていません。オリジナルのように表面艶ありコーティングも施されていませんが、日本の印刷技術は世界的にもお墨付きですね。

サスペリアで一躍人気者となったゴブリン。プログレファンの間でも一目置かれていたバンドだったようです。ここに目を付けた東芝EMIは先見の明があります。

元々、ジョルジオ・ガスリーニに作曲を依頼していたため、ガスリーニの曲をゴブリンが演奏したナンバーもあります。

帯がスイカのような配色で昭和テイスト。1877年のレコード発明から100周年を迎えた1977年発売のアルバムに印刷されていた記念マークが印象的です。ジャンルはサントラではなく「ロック」と記載されていますね。

ソールバス風な文字デザインと監督名。

東芝オデオンレーベル【品番:EOS-80951】映画公開時にサントラとして再販された『サスペリアPART2』のアルバム品番は【EOS-81107】

ステレオ表記になっていますが、一部の曲はモノラル録音。

謎の裂け目…何をモチーフにしているのかサッパリ分からず。この中にカルロの母が浮かんでいるデザインもあります。

洒落こけたタイトルデザイン。これだけでも十分インパクトがあるのだから凄いです。シンプル・イズ・ベスト!

Goblinのロゴもこれでなくちゃシックリ来ない秀逸なフォント。もう「G」のデカさに惚れ惚れします。

結成時のオリジナルメンバーが集う赤の部屋。右からクラウディオ・シモネッティ(キーボード)、ウォルター・マルティーノ(ドラムス)、マッシモ・モランテ(ギター)、ファビオ・ピニャテッリ(ベース)、トニー・タルタリーニ(本作には参加していないチェリーファイヴ時代のヴォーカリスト※遊びに来た際になんとなく写っただけ)

ジャズミュージシャンで映画音楽を多く手掛けていたジョルジオ・ガスリーニもクレジットされています。アルジェント監督はジャズテイストより、もっとパンチの効いた破壊的ロックを望んでいたらしく、ガスリー二と喧嘩別れしたあと、ゴブリンの前身チェリーファイヴをチネヴォックスレコード社から紹介され、彼らの1stアルバム"白鳥の殺意"を気に入り(サス2の図書館で流れる風のようなSEがそれ)ガスリーニとは別に3曲書き下ろすよう依頼。

A面がゴブリン作曲のオリジナル。メインテーマはキーボードのクラウディオ・シモネッティが自宅ワイナリーで作曲したのだとか。B面の1と2がガスリーニ作曲、ゴブリン演奏。シモネッティがムーグシンセを多用している所を見ると、恐らくだいぶ自由にアレンジを加えていたのだと思われます。

 

3と4はガスリーニ作曲&指揮。"スクール・アット・ナイト"は子供の歌声入りの方が馴染み深いですし、ゴブリンのメンバーもあの薄気味悪い旋律には太刀打ち出来ていない気がします。そう言った意味ではガスリーニの功績は大きい。

ライナーノーツ。やはりメンバーの写真はこれ一枚しか使われていないんですよね。

曲目ですが、B面の"ギアナ"表記が笑えます。ダリア・ニコロディ演じるジャンナのテーマですが、昔は読み方が統一されておらずスタンリー・カブリック、タブ・フーパー、マーチン・スコルセーセ等、色々ありましたね(笑)性質が悪いのはサス2名義のアルバムでもギアナを修正しなかったところ…。Death Diesを"死の滅亡"と訳した東芝の製作者センスに脱帽!

リイシューのライナーとは異なる初版。

盤面は東芝の黒ラベル。ヂリパチ音が少ないEXクラスのコンディション。

ツヤ消しラベルはセンターホール付近にスピンドルでヒゲが入りやすくターンテーブルに置く儀式も慎重にやらなければならないデリケートな材質。

マトリックスナンバーは【MDG-85-A 1S】再販分は【MDG-85-A 1S2】1S2の「2」がリイシューという意味になります。

初盤だけあってサントラとしてリリースされたサス2アルバムと比較すると音質がまるで違います。鼓膜を大きく震わせるチャーチオルガン。ムーグシンセの狂乱。とにかく高音域のノビが非常に素晴らしく、この音色は勿論デジタルでは絶対に再現できない高い周波数が記録されています。

『赤い深淵』製作時に版元から届いたテープの状態が良かったのか?はたまた78年公開時のリイシューは曾孫テープを使用したのか?再販分は音が篭っており、完璧な商品づくりを心がける日本人らしい整ったアイテムではありますが、音質は初盤より遥かに劣っているのが残念。

中古レコード店のサウンドトラック・コーナーを探してもまず見つからないであろうプログレッシャー向けのシンプルなタイトル。

 

サントラの「赤い深淵」は高画質DVDが発売された際に、副題として付けられるようになりました。"プロフォンド・ロッソ"(伊)、"ディープ・レッド"(米)、"赤い深淵"(日)、どれも題名を聞いただけで観たくなるドラマチックな響き。