『溶解人間』 | 三つ子の魂百まで…トラウマニア

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『溶解人間』 The Incredible Melting Man【1977年/アメリカ/35mm/モノラル/1時間25分】

 

 ■スタッフ■

◆監督・脚本:ウィリアム・サッチス

◆製作:サミュエル・W・ゲルフマン
◆製作総指揮:マックス・J・ローゼンバーグ
◆撮影:ウィリー・カーティス
◆音楽:アーロン・オバー
◆特殊メイク:リック・ベイカー

◇★キャスト★◇

★アレックス・リバー★
【スティーブ・ウエスト/溶解人間】

広瀬正志

 

★バー・デベニング★ 

【テッド・ネルソン医師】堀 勝之祐


※『エルム街の悪夢5』で見掛けた時は嬉しかったものです。
 

★マイロン・ヒーリー★

【マイケル・ペリー将軍】加藤正之


 

 ★マイケル・オールドリッジ★

【ニール・ブレイク保安官】岸野和彦


 

 ★アン・スウィニー★

【ジュディ・ネルソン】宗形智子


 

★ライル・ウィルソン★

【ローリング医師】戸谷公次

 

 ★ボニー・インチ★

【看護婦】峰あつ子


 

 ★エドウィン・マックス★

【ハロルド】伊井篤史

 

 ★ドロシー・ラブ★

【ヘレン】峰あつ子


 

★ジャナス・ブライス★
【ネル・ウィンタース】色川京子


※70年代ホラーではお馴染みのスクリームクイーン!『悪魔の沼』ではロバート・イングランドの彼女を演じ、『サランドラ』でミュータント家族のルビーに扮している。


★ジョナサン・デミ★
【マット・ウィンタース】西村知道


※『羊たちの沈黙』の監督、あのジョナサン・デミ本人!溶解人間に脇役として出演しているのはファンの間ではわりと有名。

 

★サミュエル・W・ガルフマン★

【釣り人】伊井篤史


※製作を務めるゲルフマンはカメオ出演ながら強烈なインパクトを残す生首ドンブラコ役に(笑)

 

★ドン・ウォータース★

【カメラマン】小滝 進 


※彼も製作スタッフの一人らしい
 

★シェリル・スミス★

【モデル】色川京子


 

 ※ネタバレを含みます。未見の方は鑑賞後にご覧ください。


土星探査に向かった3人の宇宙飛行士。突如眩い光に包まれスティーブ以外の仲間は死んでしまう。地球に帰還した彼は全身を包帯で巻かれベッドの上に。医師によると彼の体は放射能で汚染されているという。目覚めたスティーブはその変わり果てた姿に絶望し、衝動的に看護婦を襲い彼女の顔半分を食べてしまった。ペリー将軍指揮の下、主治医のネルソン医師とローリング医師以外は秘密裏に"溶解人間"として彷徨うスティーブの行方を探し続けるのだが…。

スティングレイから念願のリリースとなった今作はHDマスターが存在していたことでBD発売となった。とても70年代中期のB級ホラーとは思えない超絶鮮明なHD画質でBlu-ray化された事が嬉しくて仕方ないのです。慣れ親しんだビデオやTV放送版も捨て難いけど、今日に至るまでDVD未発売だったものが「昨日撮ったの?」と感じるクリアーな映像で甦るとは夢にも思わず。


このジャケ以外ありえない素晴らしいイラストを堂々と中央に配したスティングレイ、さすが分かってらっしゃる!海外ポスターで使われたデザインですが、ベースとなったのはリック・ベイカーが弟子、ロブ・ボッティンに施したテストメイク写真。写真原版は右を向いており、見栄えを考慮してか反転状態で描かれたグロテスクな溶解人間は有名すぎるキーアートですね。

 

『溶解人間』との出会いは11歳の頃、1987年10月16日にTBSの深夜枠"金曜ロードショー"の放送を観賞。当時ホラー雑誌で見て存在は気になっていたが、レンタルビデオは親戚の家に遊びに行った時に借りる程度で鑑賞するチャンスがなかった。我が家に初めてVHSデッキが届き1か月も経たない頃、新聞の番組欄に『溶解人間』のタイトルを見つけ狂喜乱舞した。しかし就寝時間が21時と厳しかったので父に録画を頼むことに。(タイマーの付いていないデッキ)翌朝、父に感想を聞くと「襲われた女の子の恐怖に怯える演技が素晴らしい!」との大絶賛。胸の高鳴りを抑え、土曜の4時限目を終えた自分は帰宅後、真っ先に録画テープをデッキに放り込んだ。

 

スターウォーズを想起させるOPクレジット。管制官からの通信「スコーピオン5、こちらヒューストン。スティーブ聞こえるか?すべて順調か?」は良くマネした。皮膚が溶け落ち放射能による細胞死滅を抑えるため人間を襲うスティーブ、私事になるが重いアトピー性皮膚炎を患っていたので感情移入してしまったほど。行く当てもなく人気のない田舎町を彷徨い続けるスティーブの悲しみ、彼の奇病を治療しようと血眼になって探す親友のネルソン医師の優しさ。ゴア描写以外にもユーモア溢れるシークエンスが点在するのもホッコリさせられる。子供が森を駆け回ったり秘密基地を壊され悔しがる様子は小学生の自分と被りどんどん映像の中へ引き込まれていった。

 

この時に録画した吹替テープが今回のBlu-ray製作にお役立て出来る日が来るとは思いもしなかった。メーカーさん曰く声優クレジットが録画されていたのが非常に助かったとの事。標準モードで録っておいて良かった。吹替を収録する際、配役と吹替製作会社の詳細を組合に伝え転用許可を貰わなくてはならない。声優名が分からない場合は協会側の聴き取り確認の上、お墨付きをもらいギャラを支払うシステムとの事。台本が存在しなかったり、製作会社が潰れてしまった場合は困難を極めるそうで、素材があっても詳細が分からないがために許可が下りず使えないケースもあるのでしょうか。

 

最初の犠牲者となるデブ看護婦。病院内とは思えない工場のようなゴツゴツした廊下をスローモーションで逃げ惑うシュールでしつこい映像を30秒ものロングショットで捉えたカットは何コレ珍百景に認定w



溶解人間に首をもぎ取られた釣り人。小川に流され、ネルソン夫妻の会話を挟んだ後に再び彼の旅が続く執拗な演出には誰もが抱腹絶倒になる事間違いなし!ミニチュアのような小滝から生首が落下するとスイカのようにぐしゃり!と頭蓋骨が潰れて脳みそがハミ出す。BGMにはエリック・クラプトンのような泣きのギターが被る…。リック・ベイカーによると困難を極めたエフェクトだったそうな。



老夫婦がレモンを盗もうとするコミカルなやりとりが和みます。音楽が「ピンクパンサー」のテーマ曲みたいだし(笑)



私の父が絶賛していたネル・ウィンタースの絶叫!

 

溶ける皮膚はスライム的な物を使っているのかと思ったら数種類のコーンシロップをドバッ!と塗りたくっているとか。ベイカー渾身の細かい造形が潰れてしまいますが、悲哀を感じさせるスティーブの姿を上手く表現していますね。


映像特典に関してはアメリカのシャウト・ファクトリー製作素材を借用する予定だったそうですが、なかなか快い返事が貰えず、痺れを切らしたスティングレイ社自らリック・ベイカーの独占インタビューを撮影すると言った快挙に出たのがコダワリ派でありマニアの期待に応えてくれるマニアなメーカーの底力を見せてくれて非常に満足度の高い仕上がりとなっています。________________________________________

●リック・ベイカー スペシャルインタビュー(40分) ※唯一現存しているプロップの手を使いながら切断された腕のギミックを丁寧に説明するベイカー。撮影用の頭部はフォレスト・J・アッカーマンに寄贈されたと雑誌『宇宙船』で読んだことがあるのですが、もう残っていないのでしょうか?

●オリジナル劇場予告編A(1分)

●オリジナル劇場予告編B(43秒)

※これが凄い!リック・ベイカーが溶解人間マスクを彫刻、エアブラシで塗装している映像が使われている。

●ドイツ版劇場予告編(1分) 

※ドイツ語ナレーションでタイトルも異なる。

●ビデオ版予告(1分05秒)※日本版ビデオを発売したRCAコロムビアが製作したもの。

●ギャラリーアーカイブ(9分)
※世界各国の宣材をサントラに合わせスライド紹介。
★失われた音源 ※隠しコマンド(1分)

●MEトラック

※アーロン・オバー作曲のサントラは商品化されていないので台詞抜きのMEトラック(音楽と効果音)は涙モノ!

●16ページに渡って作品の隅々まで掘り下げたブックレット封入。日本公開時、パンフレットは製作されなかったので大変な資料価値があります。


手持ちの『溶解人間』コレクションをご紹介します。

【日本版チラシ】

スパイダーマンとの二本立て。上映館は浅草ロキシー、横浜西口シネマ等

 

【チラシ裏面】

スパイダーマンより写真が多く使われているのが嬉しい。

 

【日本版プレスシート】
ポスターと同じデザイン。
試写会や関係者に配布されるもの。

 

【プレスシート裏面】

パンフ未発行なので最も作品の内容について詳細が記載されているアイテム

 

一番下のロゴは雑誌関係の記事に切り張り印刷するもの

 

【日本版モノクロスチル】
大判サイズ。

 

【日本版・試写状】葉書サイズ

 

【試写状・裏面】コロムビア映画宣伝部のスタンプあり

 

【日本版VHSソフト】1985年当時で19,500円と、それこそ目玉が飛び出しそうな価格


【VHSジャケ】初版と再販(こちらはHi-Fi仕様)があり、これは初版。裏面のレイアウトが異なるなどの違いあり

 

【アメリカ版ロビーカード】全8枚コンプリートセット

 

【本国版スターログ】

リック・ベイカー特集号

 溶解人間の変化の過程がカラースチルで紹介されている

 

【アメリカ製の溶解人間マスク】80年代中期にトップストーンと言うメーカーから販売されたものの、市場に出回った物はゴムの質が悪く、塗装もいい加減な代物だった。これは未塗装かつ良質なラバーで抜かれた物を入手し自分で彩色を施したもの。

 

塗装にはエアブラシを使用。タミヤのアクリル塗料を水で希釈し薄く吹きつけているが、透明感を出すためクリアー系塗料を多用しています。筋肉のスジは面相筆でベタ塗り。

 

Blu-rayで見ると皮膚の赤味が強いですが、雑誌やビデオだとオレンジっぽい感じだったので自己流でこんなテイストにしてみました。

 

本来被って遊べるフルフェイスマスクなので裏面にスリットを入れ被れるようにしました。が、今思えば安定感が悪くなるので切らない方が良かったと後悔しています…。

 

右耳は物語の前半で溶け落ち、茂みに引っ掛かっているのをネルソン医師が発見します。艶出しには東急ハンズで購入した特殊メイク系の液体を使用。

 

段階的には2段階目、森で遊ぶ女の子と遭遇するときのイメージ。目玉にはエポキシボンドを塗布し光沢感を。毛細血管を再現するため赤い毛糸をほぐしたものを混ぜています。瞳はマスキングテープを丸く切り抜きエアブラシと面相筆で描き、目の周りのドロドロはアクリル塗料でドライブラシをかけました。


歯間にスミ入れをしたんですが、ディフォルメちっくになるかと思ったら案外見栄え良く仕上がってくれました。1998年に塗装。何度か被って写真撮影したので塗膜がヒビ割れている箇所があります。



反転させるとポスターイラストと同じ雰囲気になります(笑)


 

夕焼けをバックに絶望の逃避行を続けるスティーブのシルエットが切ない…。

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