タイはコメの世界的な生産国。
黄金色に輝く稲穂、刈り入れ前。
なら、美味しいコメの酒があってしかるべきだが、蒸留酒である「メコン」、俗称タイウィスキーしかないと思っていた。とは言いながら、メコンの原料95%はサトウキビ。
我々が知るタイ米の酒といえば沖縄の蒸留酒、「泡盛」。
では、タイ米から作るタイの酒とは、を知ったのが今回の南タイの旅でした。
日本酒のことを海外では「サケ」というが、英語で米から作る醸造酒(非蒸留酒)をライスワインと呼び、日本酒もライスワインの一種。
そしてタイのライスワインをスリンで発見です。
ラベルにAucentic Traditional Thai Rice Wineとある。
サトム有機農場 (Satom Organic Farm)はスリン市内から北へ35㎞ほど、ブリラムとの県境に近い場所にある。
サトム(Satom)とは元は先住民族クアイ族の言葉で、現在のこの地では「小川の傍にある畑」を意味することば。
サト(Sato)とはイサーン地方を起源とするライスワインのこと。
小生勝手に、サトムとはサトから派生させ農場の名称にでもしたのかと思っていたらそうではないらしい。
かつては、どの農家もこのサトを造っていて、各家でそれを飲んでいた。
これは、日本でも各農家がそれぞれ濁酒(どぶろく・にごり酒)を造り飲んでいたのと同じ。
そして、お上が人々から税を巻き上げるために酒税なるものを発明し、人々から酒を自由に飲む権利を奪ったわけだ。以来、タイ東北地方でもサト生産が衰退する。
ならば、タイのアルコール企業がサトを造れば良いものを、メコンで満足していた。
と聞くと、アルコール企業が美味しいサトを造れなかったから、の答えた帰ってきた。
この農場とライスワイン、タイの日本人世界では既に有名になっているのか、小生がこの農場を訪れたとき、ここの農場主ステーンさんが出迎えてくれたのだが、毎日のように日本人が来てくれていると言われたのには驚いた。
サトム有機農場では2014年からかつて行われていた有機農業(化学肥料、除草剤、農薬を使わない)を復活させてきた。
そして、現在10品種近いコメ、数種のジャスミン・ライスやもち米、ブラウンライス、などを生産。
コメは真空パックしタイ全土の消費者に通信販売を行っている。
真空パックすることで2年は新米の状態で保存できるそうだ。
それを聞いて、日本ではそれをしない理由が何かあるのだろうか、と疑問に思った。
ここでサトの醸造を始めたのは7年前。
それぞれのコメを原料にそれぞれの個性ある味と香りのライスワインを造りだしている。
造り方は日本酒の醸造とほぼ同じなのだが、出来上がった酒は実にお洒落な味と香り。
ステーンさん自らが造ったライスワインをテイスティングしてくれた。
全くサケぽくないうえ、まして日本酒とほぼ同じ工程で造りながら、日本酒のあの癖ある味と香りがしない。
アルコール度数は4度から9度なので日本酒やブドウ酒と比べるとかなり軽く、あるサトは甘みのあるハーブティーを飲んでいる感覚。
あるサトは、下手な白ワインよりレベルが高いといった感じ。
さらに、度数が低いので酒に弱い人でもすごく楽しめてしまう。
日本酒でも吟醸酒の中にはサケ臭くない白ワインレベルのがありますよね。
この美味しさの秘密は何なんだろう・・・?。
この農場、アグリツーリズムも実践していて、世界から農業に興味のあるツーリストを受け入れている。
その場所を見せてもらうために田んぼの中を移動し、ツーリストのための研修所とドミトリーの建物を見せてもらった。
そこで、最初見せてもらったのが多種のハーブを植えているハーブ園。
色々なハーブを研究し、コメ毎と相性の良いハーブを使ってライスワインを醸造する。
これが恐らくあのお洒落なライスワインの秘訣か!
そういえばサトの中にはマンゴとブレンドしたものまであった!!!。
因みに、Satomのアグリツーリズムのプログラムは自然と米文化を体験ができる。
オーガニックファームならではの安全な食事とドミトリーが用意され、以下のようなアクティビティが用意されている。
1.農業、有機農業の方法を学ぶ
2.多様な米の品種を知る
3.キッチンガーデンでの野菜作り
4.イサーン料理教室
5.サイクリングと周辺環境でのスポーツアクティビティー
6.農場周辺のホタルの夜景
7.朝夕の水牛キャラバン
8.スリン民族音楽
9.地元産の米を使ったワイン作り、麹作りからの説明
10.エレファントキングダム等とのコミュニティ・ツーリズム
等など・・・。
聞くと、近々日本の学生グループも来るらしい。
意外や意外、日本でも海外のアグリツーリズムに参加する若者たちがいるんだ!
現在、コメもワインも販売が順調で現状消費者からの注文に応えられないほどだという。
そこで現在ライスワイン5千リットルの生産を、2024年には3万リットルまで増やすように準備中なのだとか。コメの方は契約農家を増やして有機農法を教え込めば可能。
しかし、このサトが更に広く知れ渡ったら3万リットルなんて直ぐに足りなくなるでしょうね。
そして、タイから帰ってきて2か月ほどしてバンコクの知り合いが、あるバンコクのイベントで撮った写真、として送ってくれたのがSatom Organic Farmのワイン紹介。
そのうち、日本に輸出となればだれが輸入業者としてアプライしますかね?